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太陽光発電の交換効率の推移|計算式から効率アップはもはや限界か

太陽光発電

太陽光発電の交換効率アップを目指して各メーカーでは様々な工夫が施されたソーラーパネルが登場しています。

主流であるシリコン系パネルの交換効率は15~20%が一般的ですが、計算式での理論上は29%が限界だと言われています。

 

では、今後の交換効率の推移はどのようになっているのか、これ以上の効率アップは本当に限界なのでしょうか。

 

太陽光発電の交換効率とは?

太陽光発電の交換効率とは、ソーラーパネル(太陽電池モジュール)へ取り込まれた太陽光エネルギーを電気エネルギーに換える割合を示す数値です。

 

太陽光エネルギー交換効率にはパネル1枚の効率を示すモジュール交換効率と、太陽電池セル1個あたりの効率を示すセル交換効率があります。数値が大きいほど発電量が多いとされており、設置するソーラーパネルによっても大きく変動しますが平均は15~20%となります。

交換効率が50%程の火力発電などと比べて劣りますが、クリーンなエネルギーとしては一番効率の良い発電方法でしょう。

 

なぜ太陽光発電では100%の効率にならないかというと、太陽光が太陽電池セルの表面で反射することで取り込める量が減り、さらに太陽光の全波長を取り込むことは不可能なことが要因です。

 

さらに、太陽電池の内部でも電気抵抗が発生するので、それにより発電した電気が消失してしまいます。これらを軽減することにより交換効率はもっと向上することでしょう。交換効率は太陽光発電の性能を大きく左右する部分とも言えます。

 

交換効率の推移

太陽光発電の開発に取り組む各メーカーでは、効率アップを目指して開発が続けられています。

 

2017年現在のモジュール交換効率は15~20%程となっていますが、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2025年までにモジュール交換効率25%、2050年まで40%の推移を目標にしているのです。

 

しかし、その実現はなかなか難しいとされています。国内でも主流のシリコン系太陽電池は2010年の時点でセル交換効率が25%、2017年現在のセル交換率は最大26.33%です。

 

NEDOは2025年までのセル交換効率30%を目標に掲げ、各メーカーもセル表面に反射膜を設置するなど工夫して太陽光の吸収率を向上させていますが、その工夫にも限界があるとされています。しかし、2016年5月にはモジュール交換効率31.17%に達成した結果もあり、今後も高効率の結晶シリコンパネルに期待できるでしょう。

 

薄膜シリコン太陽電池(アモルファスシリコン太陽電池・薄膜太陽電池)の普及も増えていますが、こちらは交換効率よりも製造コストの低減開発が重視されています。2010年の時点でモジュール交換効率は最大で11%、2017年現在でも10%前後が平均です。

 

しかし、銅、インジウム、ガリウム、セレンの元素から生成されている化合物系、いわゆる化合物太陽電池のCIS太陽電池は2010年にドイツのメーカーが20.3%の効率に達成しました。国内でも2017年2月にCIGS系薄膜パネルで19.2%の交換効率に達成したので、NEDOが掲げる目標に少しずつですが近付いてきているようです。

それでも2040年のセル交換率40%、モジュール交換率25%までの道のりは長いでしょう。

 

各社で競い合う交換効率

各社メーカーではより交換効率に優れたソーラーパネルを展開しており、競争率も激しさを増してします。高交換率を叩きだしているシャープ、東芝、ソーラーフロンティアの3社ではどのような交換効率のソーラーパネルが展開されているのでしょうか。

 

シャープ

シャープの主力となるソーラーパネルはブラックソーラーになります。

ブラックソーラーは太陽光の受光量を上昇させるために表面の電力を省き、低反射パネルを使用しています。

 

さらに送電・発電ロスを低減させた工夫により交換効率アップしたのです。2017年現在で最もモジュール交換効率に優れている「NQ-256AF」の最大出力は256W、交換効率19.5%です。

 

そして、NEDOとのプロジェクトにより試作されたパネルは「31.17%」を達成しました。このパネルはインジウム、ガリウム、ヒ素で光吸収層を積み上げる独自の構造により交換効率アップを図りました。

 

実用サイズである27.86㎠の太陽電池セルでパネルを作ったところ、世界最高交換効率の結果が出ました。今後はより効率アップと低コスト化などの研究開発が進められる予定です。

 

東芝

東芝ではアメリカのソーラーパネルメーカー、サンパワー社のOEM製品であるSシリーズなどを主力として展開しています。

 

住宅用ソーラーパネルのモジュール交換効率は20%とトップです。20%の交換効率はパネル表面の電極を省いて裏面に設計し、さらにP型電極とN型電極を交互に配置したことで電極の面積を広げて送電・発電ロスの低下を防ぎました。

 

太陽光の反射を防ぐためにセル表面に反射防止膜だけではなく、反射低減コートも加えています。裏面には反射膜を採用したことでミラー効果でより多く太陽光を吸収されるように工夫されています。

 

太陽光発電は気温が上昇すると発電効率が悪くなる特徴があり、それを防ぐためにパネルは高温でも発電性能を低下させない工夫も高効率を維持できている理由の1つです。

 

東芝では今後もグローバルな技術開発が展開されるでしょう。

 

ソーラーフロンティア

ソーラーフロンティアは従来の結晶シリコン型太陽電池モジュールではなく銅、インジウム、セレンの3元素で構成されたCISパネルを展開しています。

 

晴天時のソーラーパネル温度は約60~80度まで上昇し、それによって発電出力のロスが起きてしまいますが、CISパネルでは結晶シリコンパネルよりも5%程出力低下のカットが可能です。

 

また、結晶シリコンパネルでは一部に影ができるだけでパネル全体の出力が低下してしまいますが、CISパネルは部分的な影響しかないので、交換効率の維持が可能なメリットもあります。

 

ただ、交換効率は住宅用で15%前後と結晶シリコンパネルよりも低かったのですが、NEDOとの共同研究によって2015年8月に変換効率22.3%、さらに2017年2月にはサブパネルで19.2%を達成し、効率アップの実現も近いと考えられます。

 

ソーラーフロンティアはこの成果から、大面積での再現化や実現化を目指す予定です。

 

神戸大で交換効率50%を超える新技術

現状は交換効率30%が限界と言われていますが、2017年4月に神戸大学で交換効率50%を超える技術が発表されました。

 

新技術では損失してしまう波長の長い太陽光の周波数を吸収することで、交換効率50%以上に効率アップさせる仕組みとなっています。従来の技術では太陽光の周波数を完全に吸収することができず、大半が太陽電池セルを透過するか余剰エネルギーが熱に変わるなどしていました。

 

その損失を抑制させることで効率アップが実現できます。神戸大学の研究グループは2つのバンドギャップ半導体から構成されるヘテロ界面により太陽光の周波数の透過を抑制して、吸収率を増加する構造を開発したのです。

 

この構造により最大で64%は交換効率アップすると予測されており、4接合太陽電池の4割以上は交換効率50%以上を達成するとも言われています。

今後は最適な材料を使った太陽電池セルの構造設計と交換効率の性能評価を進めて、さらなる応用の展開を進めていくようなので、今後の展開にも期待を持てます。

 

太陽光発電の未来

太陽光発電の交換効率アップの課題はまだまだ大きいと言えます。しかし、日本はエネルギー資源が特に貧しい国であり、石油や石炭などの化石燃料は海外からの輸入に頼りきりです。

 

その現状を突破するために原子力発電の開発や運用が行われましたが、2011年の東日本大震災による影響で原子力発電は見直しが求められています。そこで、エネルギーの自給率アップとして再生可能エネルギーを使用した太陽光発電が注目されているのです。

 

再生可能エネルギーは自然エネルギーを使用したクリーンエネルギーとも呼ばれており、化石燃料とは異なりCO2など環境に有害な物質を出さない環境に配慮された安全なエネルギーとしても評判です。

 

近年は地球温暖化や有害物質による空気汚染なども問題になっており、さらにエネルギーや物価の高騰のより経済も圧迫しています。

 

環境問題への配慮や電力を必要とする家庭や企業、工場でも自給自足で電力を取り入れる心掛けも必要となるでしょう。交換効率の課題は残っているものの、各社メーカーは開発を進めているので太陽光発電の普及は高まっていくことが期待されます。

 

太陽光発電はこれからの日本に必要不可欠

太陽光発電の交換効率は発電性能で重要な数値であり、各社メーカーの努力や新技術開発により、従来の限界も突破口が見え始めている現状です。

 

構造や仕様する素材などの開発が進めば交換効率30%以上の数値にも期待できます。さらに、神戸大学の構造が実用できるほどに普及すれば将来的に交換効率50%以上の数値も実現できると言われています。

 

交換効率が従来よりもアップして家庭や企業、工場でも導入が普及すれば、いざ電力不足に陥った場合も安心ですし、自給自足により電気料の削減にも繋がります。今後も太陽光発電の進歩に注目です。

まとめ
・太陽光発電の変換効率とは、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換したとこの割合のこと
・太陽光発電の結晶シリコンパネルは30%未満が限界とされている
・各メーカーの開発により交換効率20%以上のパネルも登場している
・神戸大学で交換効率50%以上の太陽電池セル構造が開発された

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