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太陽電池の原理に革新?話題の色素増感とペロブスカイトについて解説

太陽光発電

太陽光発電の技術革新は、太陽電池―ソーラーパネルの光から電気エネルギーへの発電効率をアップさせることにあります。
多くのメーカーが鎬を削っているのは、まさにその部分ということが出来ます。

太陽電池の原理は判り切っているので、そこに使う素材の性能が影響します。
したがって、素材の開発次第で太陽電池も大きく変化を遂げることになります。

それでは、太陽電池を概観しつつ、今話題になっている色素増感太陽電池を紹介します。

太陽電池とは?

化石燃料の火力発電、核燃料の原子力発電とは違って太陽光発電システムは自然エネルギー、それも太陽光を基にして電気エネルギーを取り出します。
その中核にあるのがソーラーパネル、つまり太陽電池です。

太陽電池は、太陽光の持つエネルギーを吸収し物理的作用で直接電気に変換する素子のことです。
実際にはシリコンのような半導体で出来ており、光電効果の原理で光エネルギーを電気エネルギーに変換し、電力を生みだします。

電池と呼ばれていますが、私たちは、通常電池に対して電気を貯める機能があると思っていますが、太陽電池には、そのような機能はありません

太陽電池の構成単位:セル、モジュール、アレイについて

このような太陽電池を繋ぎ合わせたものがソーラーパネルと呼ばれるのですが、太陽電池の構成単位として、セル、モジュール、アレイの3種類があります。

■セル

太陽電池の機能を持つ基本最小単位で、いわゆる、太陽電池素子を示します。

■モジュール

セルを複数枚数繋ぎ合わせ、屋外での使用が可能になるように樹脂、硝子で保護した上でパッケージ化したもので、太陽電池パネルと言われるものにあたります。

■アレイ

モジュールを複数枚接続し、並べたもの。

太陽電池は目的の電力量を得るのに、必要な枚数を直列に接続するわけですが、電流はセルの面積に比例し、電圧はセルを直接つないだ数に比例します。
したがって、最終的な出力数に見合ったアレイを用意することが基本になります。

太陽電池の種類

シリコン系で始まった太陽電池も、その後は多くのメーカーが参入し、発電効率の向上、低コスト、長寿命を追い求めて製品開発が繰り広げられています。
実際に、シリコンが半導体として使われてから50年以上を経過しており、酸素に次いで二番目に多く、また近くにあることから、言ってみれば無尽蔵にある素材ということが出来ます。

このように、シリコン系の素材が太陽電池の世界を牽引してきましたが、太陽電池はそこで用いられている素材で分類されています。

主として分類は、3つです。

【1】シリコン系
【2】化合物系
【3】有機系

シリコン系は広範囲で使われています。
化合物系は最近になって脚光を浴び、量産化される段階に来ています。

そして、開発が進み将来的に希望が持てるのが有機系と見られています。

それでは、それぞれの種類を見ていくことにいきましょう。

●結晶シリコン系太陽電池

結晶シリコンはシリコン原子が規則正しく整列していることから、シリコンの能力を活かすことが出来ます。素子全体が整列している状態が単結晶で、直径数ミリ状態の結晶の場合を多結晶、粒子がもっと細かい状態の場合を微結晶と呼んでいます。

●単結晶シリコン太陽電池

高性能、高価格の古い経歴の太陽電池で、変換効率は20%を超えています。多くの発電をする場合に用いられることが多いです。

●多結晶シリコン太陽電池

現在、最も多く使用されているのが多結晶シリコンなのですが、変換効率は15~18%程度で、単結晶型よりは使用するシリコンが少ないため価格は安くできます。また、加工がし易く大量生産に向いています。

●薄膜シリコン太陽電池

厚みが1μm、あるいは、それ以下の極薄のシリコン膜の太陽電池で、シリコンの使用量は結晶型に比較して1/100程度ということで、コストが安くできますが、発電効率が7~10%ということで結晶シリコン型に比べて約50%となっています。

どちらかというと、軽い一方でモジュールの作り方も臨機応変に出来ることから、応用範囲が広い使い方が可能になります。

薄膜シリコン太陽電池には3種類あり、アモルファスシリコン太陽電池と微結晶シリコン太陽電池、多接合型太陽電池が挙げられます。

●アモルファスシリコン太陽電池

シリコン原子の並び方が結晶構造ではなく、ランダムに並ぶ非結晶構造で、その特徴には薄い膜での光の吸収が可能なことと、青、緑のような波長の短い光を可視域の光を利用します。つまり、赤い光や赤外線の利用はできないことになっています。

光が弱い環境下でも利用できますので、室内での利用には向いています。それから、高温環境下でも出力が落ちにくい特徴があることから、温暖なエリアでのメガソーラー用の用途に適しているとされています。

●微結晶シリコン太陽電池

結晶シリコン型とアモルファスシリコン型の間を行く太陽電池で、結晶粒は50~100nmぐらいにしたもので、結晶の大きさが小さくなればなるほど、アモルファスシリコンに近づきます。微結晶のシリコンのメリットは薄型に出来ることです。

このような薄型の太陽光パネルは軽量化できることと、応用範囲が広いので太陽光発電の普及スピードがもっと速くなることが可能になります。従来のように屋根だけでなく、他の部分に取り付けることで発電ができるようになります。

ただし、微結晶の場合ですと、どうしても発電効率が悪くなるという欠点がありますが、アモルファス型と微結晶型をドッキングさせることで、両者の良い点を活かした多接合型太陽電池が作られています。

●化合物系太陽電池

半導体の素材ではシリコンが主流ですが、シリコンの代わりにいくつかの化合物を素材にした太陽電池が作られています。それが化合物系太陽電池です。ガラス、金属薄膜をベースに真空蒸着による薄膜プロセスで作られます。

材料としては、いくつかの材料を使うことで、理論的にはかなりハイレベルの発電量を得られるとされ、用途に合わせて材料を組み合わせることが出来るので、低コストでの製造が可能になっています。

CIS太陽電池は銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)を原料としています。また、それにガリウム(Ga)を加えた場合はCIGS太陽電池が、テルル化カドミウム(CdTe)を用いたCaTe(カドミウムテルル)太陽電池、さらに、Ⅲ族のガリウム(Ga)、Ⅴ族のヒ素(As)を用いたGaAs(ヒ化ガリウム)太陽電池などが
あります。

これらの化合物系太陽電池は、海外で使われている例が多いようです。

●有機系太陽電池

シリコン系の太陽電池はどうしても製造過程で、高温度化、新区装置を用いることで製造コストが上がってしまいますが、有機系太陽電池では、常温、常圧で有機半導体材料を塗布することが可能なため、コストセービングできます。

それに、プラスチック、金属のような薄い基盤を用いることで、軽量、柔軟性に秀でたものが出来ます。したがって、多くの商品への波及効果が大きく、応用範囲も広がることが期待されています。有機系太陽電池には次のようなものが挙げられています。

●色素増感太陽電池

光が当てられると、それを吸収することで電子を放出する色素を用いた太陽電池を色素増感太陽電池と呼んでいます。デザイン性が高いことと、太陽光の入射角、光量にも影響を打あけない特徴があるので、建物壁面でも、曇りの日でも太陽電池としての性能を発揮できます。

色ではシアン、マゼンタ、イエローの3原色を使えば、多くの色を生みだすことが出来ますし、形も好き勝手に利用が可能です。プラスチック基板の場合ですと形状を曲げることが出来ます。

使い勝手がよい上に用途も広く、例えば、集約型農業用、植物の育成などでは透光性と発電の両方から使えますし、平面型では設置が困難とされている場合への応用が考えられています。

●有機薄膜太陽電池(有機半導体太陽電池)

有機半導体(導電性ポリマー、フラーレン)を使った太陽電池で、耐久性、変換効率に問題点がありますが、研究段階では10%を超える変換効率を実現しています。各企業の参加も活発で、例えば、東レではポリマー有機薄膜太陽電池の単層素子で、変換効率が10%をオーバーする実績を発表しています。

三菱化学では塗布型有機薄膜太陽電池で、11.7%をセルベースで成功しています。

●革新型太陽電池

これまでの太陽電池の域を飛び出た革新型太陽電池というジャンルの技術が開発されています。例えば、量子ドット太陽電池では10nm(10億分の1メートル)ほどの微小粒子を半導体の発電層に使うことを、球状シリコン太陽電池では、直径1mmの球形の結晶系のシリコンを使い、カーボン太陽電池では、カーボンを素材として使います。

太陽電池と電池の違いについて

これまで見てきた中で、太陽電池は太陽光を半導体にあてることで電子、正孔の移動が電流を作り出すとことと、電池と言っていますが電気を貯めることはできないことを知ることが出来ました。
このような太陽電池は、光や熱を利用する物理エネルギーです。

それに対して、私たちが普段使っている電池は、金属化合物の化学反応から作り出す、言ってみれば、「化学電池」ということになります。
つまり、+極、-極の物質、それに電解液の化学反応で電気が発生します。

そして、一度使うと電気エネルギーがなくなってしまう電池を一次電池、充電できる電池を二次電池と呼んでいます。

以上のことから判る通り、電気を発生させる原理は、太陽光電池の場合は物理エネルギーの利用からの物理電池で、普通の電池は化学反応を利用した化学電池ということが出来ます。

太陽電池の原理

太陽電池で最も多く使われているのがシリコンを素材にした半導体で、電気的に性質が違っている2種類の半導体(p型、n型)を接続したものです。

太陽光が太陽電池にあたると、電子(-)、正孔(+)が内部に発生しますが、電子はn型半導体(シリコンに不純物としてリン原子をいれた)へ、正孔はn型半導体(不純物としてボロン原子をいれた)の方に引き寄せられます。

このような状態になった時に、電位差が生じますので、負荷(電球など)を両電極の間に接続すると電流が流れます。

太陽電池の価格

太陽光発電システムの導入に際しては、どう判断したらいいのか迷う人もいることでしょう。太陽光発電システムは、オーダーメイドで購入するもので、設置場所の屋根の向き、面積、設置容量などを元にしてシステム設計を行います。

設置費用については、2017年度では、35万円/kw前後が標準でその内訳は次の通りになっています。

仮に、住宅用の4.8kwの容量の発電システムの場合ですと、35万円/kw×4.8=168万円となります。

システム価格の内訳は、

ソーラーパネル      50%― 84万円
パワーコンディショナー  15%― 25.2万円
接続関連          5%―  8.4万円
架台           10%― 16.8万円
工事           20%― 33.6万円

ソーラーパネルが全体の50%を占めるとなると、ソーラーパネルの選び方次第でコストに大きく影響をもたらします。したがって、システムの設計段階で、ソーラーパネルの選択をどうするのかを決めることが大切になります。

実際のところ、メーカーサイドのkw価格もピンキリで、安いものは30万円/kwを割るものもありますし、40万円/kwを超えるものもあります。

国の補助金制度は既に廃止になっていますし、自治体の補助金制度も廃止、もしくは補助金額の減少が普通になっていることから、当てにすることはできませんので、導入に際しては、シビアなチェックがポイントになります。

話題の色素増感太陽電池とは?

有機系太陽電池の中に色素増感太陽電池について簡単に触れましたが、ここではもう少し詳細な説明をします。

色素には光を吸収する作用があることから、その性質を使って発電する太陽電池のことを色素増感太陽電池と呼んでいますが、酸化チタンに色素を塗布すると光に対して反応をします。このような反応のことを色素増感といいます。

酸化チタンに塗布している色素に、光が当たることでエネルギーが発生します。
そして、電子を放出して元の状態に戻ろうとするのですが、その時に電子は-の電極に移ることで電流を作り出し、+の電極の方に移っていきます。

その後、ヨウ素が電子を受け取ると太陽電池に中に電子を戻すことで、電気が再度作られることになります。このようなことを繰り返すことで電気は継続的に作られていきます。

このような色素増感太陽電池のメリットは、比較的簡単な材料で製造できることが挙げられ、その他にも色素の選び方もフレシキブルで、発電の際には薄く塗布するだけで発電できますし、デザインにも工夫を凝らした太陽電池モジュールの製造が可能になります。

一方のデメリットとしては、発電に関して変換効率が悪いことが挙げられます。
歴史的に最も普及している多結晶シリコン型と比較すると、数%低くなっています。
しかしながら、技術開発も進み実験段階では、15%を超える変換効率を達成していて、今後の製品開発に期待が寄せられています。

電池の最上級!?ペロブスカイト太陽電池とは?

技術革新の波は太陽電池に世界にも及んでおり、その進歩のスピードには目を瞠るものがあります。実際に、これまでのシリコン系太陽電池、化合物系太陽電池が量産化され、市場に導入されてきました。

壊れにくく、変換効率も高いものが開発されている一方で、材料、製造コストがかかりすぎる他に、シリコン系の太陽電池はシリコン層が厚いことから曲げることが出来ないために、設置場所にフレシキビリティがありませんでした。

そのような背景に中に登場したのがペロブスカイト太陽電池で、ペロブスカイトと言われる結晶構造を持った材料を使った、これまでにない太陽電池ということが出来ます。
変換効率も先のシリコン系や化合物系太陽電池に比べても遜色ない変換効率をもたらしています。

ペロブスカイト膜は塗布技術で簡単にできることから、シリコン系をはじめとするこれまでの太陽電池に比べて、ローコストで製造ができます。これまでにないような使い勝手の良い太陽電池ということで、多くの分野での可能性が出てきました。

ということで、今、最も注目されている太陽電池で、こと太陽電池に関する論文が世界で発表されていますが、半分はペロブスカイト太陽電池に関係するものになっているそうです。

この太陽電池を最初に打ち出したのは日本人で、宮坂力教授(桐蔭横浜大学 大学院工学研究科)で、その技術を活かしてNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)では、エネルギー変換効率を上げることで発電コスト7円/kwhの実現を目指して、プロジェクトを進めています。

因みに、発電コスト7円/kwhというと、火力発電のコストと同じになります。

上を出る技術が革新を生み出す

半導体からトランジスタ、その上を出てIC、さらにその上を出てLSI、また上を出てVLSI、またまた上を出てULSIと集積度を上げて、集積回路は進化をしてきました。それと同じように、太陽電池もシリコン半導体からスタートして、シリコン系、化合物系、有機系と材料革命を幾重も経験しながら、変換効率と、製造コストにメスをいれつつ、従来の技術の上を出る発想力で発電方法を進化させ、新たな太陽電池を世に送り出そうとしています。

ペロブスカイト太陽電池が火力発電と同じくらいの発電コストを実現するようになったら、電源リソース全体に一大革命が起こることになりそうです。

まとめ
  • 太陽電池は化学エネルギーではなく物理エネルギー
  • 太陽電池の材料は、シリコン系、化合物系、有機系の3種類
  • 太陽電池の80%はシリコン系
  • 太陽電池の原理は光エネルギーを電気エネルギーへの変換
  • 太陽電池の価格は年々安くなって行きますが、半分はソーラーパネルの費用
  • 色素増感太陽電池の課題は変換効率
  • ペロブスカイト太陽電池が実用化されれば革命!

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