太陽光発電を運用するために農業委員会から許可を得て、農地転用したいと考えている方は会計上の処理方法が気になるのではないでしょうか。
農地転用費用はどこまで必要経費となるのか、譲渡所得の計算方法や所得税の減税がどのくらいになるのかわかりにくい部分もあるでしょう。
農業をやめて太陽光発電所の設置をしたい方や、農地を譲渡したいと考えている方必見の情報をご紹介します。
農地転用費用(決済金)とは
農地転用には費用がかかります。この際にかかる費用はふたつに分けられ、ひとつは自分で農地転用手続きを行う方法・もうひとつは行政書士事務所に手続きを依頼する場合です。
自分で農地転用手続きをする場合は、実費として1万円程度かかります。行政書士に依頼する場合は、第4条許可申請の基本料として5万円かかり、実質15万円必要です。
第5条許可申請の基本料として8万円、実質20万円程度の必要がかかります。行政書士に依頼する場合は、20万円程度をみておきましょう。
必要経費(譲渡費用)に含まれる条件
土地や建物を譲渡した場合、譲渡所得の計算は譲渡価格から取得費と譲渡費用を差し引きます。また、農地を農地以外に転用して譲渡する場合は、農地転用決算金や協力金の支払い義務が発生することがあります。
これらの費用は譲渡所得を計算するうえで、譲渡費用に当たらないものとされてきました。ところが最高裁判所および東京高等裁判所により、農地転用決算金等は譲渡費用に当たると判決を受けたことから、譲渡費用とすることが決まりました。
譲渡費用となる農地転用決算金の場合は、次の条件をすべて満たす必要があります。
・売買契約において、農地法の規定による農地転用の許可を得ている、または届け出が停止条件とされている場合で、土地改良区内の農地を転用する契約の場合
・土地改良法第42条第2項および、これを受けた土地改良区によって定められた、土地改良区に支払わなければならない償還金や事業費等である
・転用目的での譲渡で土地改良区に支払われたもの
・決算の時点ですでに支払い義務が生じていた決算年度以前の年度に係る賦課均等の未納入金ではない
農地転用で協力金等となる場合は、次の条件をすべて満たす必要があります。
・売買契約において、農地転用許可等が停止条件になっているケースなど、土地改良区内を農地転用したうえで結ばれる契約の場合
・土地改良区の規定により、土地改良区への支払いが義務付けられている協力金や負担金等である
・転用された土地のために土地改良施設を将来にわたって使用する目的の場合
・転用目的での譲渡で、土地改良区に支払われた場合
協力金等とは
協力金とは、農地を機構に貸し付けた場合に発生する金額のことです。
地域に対する協力金として地域集積協力金があり、個人に対する協力金として、経営転協力金と耕作者集積協力金があります。いずれも農地を貸し付けた地域や個人を対象としたものです。
また、農業をリタイアする方や経営転換する方が対象となる場合は、経営転換協力金となります。農地を機構に10年以上貸し付け、機構が受け手に貸し付けた場合に協力金が発生するものです。
農地転用で休耕地・放棄地を太陽光発電所にできる?
使っていない農地があるなら、その土地を利用し農地転用で太陽光発電所にすることができます。
太陽光発電に農地転用をするメリット
通常太陽光発電所の設置は、宅地や田、畑、原野、学校用地などの土地に限定されています。農地は設置することはできないため、農地転用を利用する必要があります。
日本において農業に従事する人の数は減少しており、全国には放置されている農地が40万haもあることから、農地を太陽光発電所に活用する方法が認められるようになってきました。
農地転用することで、利用されていない土地を有効活用することができます。農地は宅地よりも安く手に入りやすく、投資としてのメリットもあります。市街化調整区域に指定されていれば、建物は建築できないため、農業として活用している場合もあるでしょう。
農地はもともと日当たりの良い条件がそろっていることが多く、太陽光発電所にするのに適している土地です。広い土地を利用することで事業用として活用でき、買取価格を20年間固定で受け取ることができます。
農地転用の場合は様々な書類を準備し、行政書士に依頼しなければならないため、10~20万円の費用がかかります。あわせて農地転用後の地目変更登記申請手続きを依頼する場合の費用については、実際に相談した行政書士事務所に直接問い合わせてみてください。
尚、農地転用の目的が太陽光発電所の設置の場合は、地域によっては面倒な手間を省き、スムーズな転用の普及を図る地域も出てきているようです。
現在では太陽光発電の技術が進み、農作物への日当たりを妨げないシステムも開発されています。それにより、農業と太陽光発電所の2つの運営を行うことも可能です。
太陽光発電に農地転用をするデメリット
農地転用で太陽光発電所を設置する場合、一般的な架台や支柱は使用できないため、設置費用は高額となる場合があります。
また、陽光発電所と農業を兼用する場合、太陽光パネルにより地面への日射量が減るため、農作物の栽培量低下を招く恐れがあることも否定できません。兼用する場合は作物の種類を限定する必要もあります。
農地転用で太陽光発電所の設置では、周辺農地に与える影響を毎年報告しなければなりません。定期的な検査や調査も必要となるため、その手間を考慮しておいた方が良いでしょう。
土地境界トラブルが起こりそうな場合は土地家屋調査士にご相談することをおすすめします。
譲渡費用を計算する場合の注意点
農地を譲渡しようと考えているなら、譲渡費用の計算方法を覚えておく必要があります。
譲渡所得の基本的な計算式
譲渡所得の計算方法は、売却益から取得費と譲渡費用を差し引くことで割り出すことができます。
取得費とは購入代金のことで、譲渡費用には不動産業者への仲介手数料など様々な費用が含まれています。
そのため譲渡所得を割り出す際には、譲渡費用を詳しくみていく必要があるのです。
譲渡費用に含まれるもの
譲渡費用の範囲は、所得税法33条と所得税法基本通達33-7、33-8に記載されています。譲渡費用に含まれるものは次の通りです。
・不動産業者に支払う仲介手数料
・運搬費用
・売渡証書の作成に必要となる費用(現在はほとんどないようです)
・契約書に貼る収入印紙
・売買に直接関係する場合は測量費用
・立退料
・取壊し直後に売却する場合は取壊費用
・売主変更に伴う旧売主に支払う契約の違約金
通常不動産売買をする際には、不動産業者を仲介にします。仲介手数料は最終代金を受け取った直後に支払うものです。仲介手数料は宅建業法により上限が決まっており、売買金額×3%+6万円と消費税が必要になります。
運搬料は土地を売るために家を移動させる場合に含まれる金額であり、引越費用は含まれません。登記や登録に関する費用は売渡証書(うりわたししょうしょ)の費用のことで、抵当権抹消費用は含まれていません。相続登記した場合は、事業用なら必要経費になり自宅用なら取得費として取り扱います。
収入印紙は数千円から数万円程度がかかり、譲渡費用に含まれます。測量費用は測量直後に売却したのみ譲渡費用とすることが可能です。直接要した費用でなければならず、将来売るための測量は含まれません。譲渡費用に含まれないのは、修繕費・固定資産税・税理士費用です。
譲渡所得を再計算して所得税を減額したい場合は
確定申告の内容に間違いがあった場合は、譲渡所得を再計算して所得税を減額することができます。
税務署に更生の請求手続きが必要
収める税金が多すぎた場合は、税務署に対し更生の請求手続きが必要です。これにより税務署は、更生請求書の内容を検討し、納め過ぎた税金があると判断された場合は、減額更生にて税金の還付が受けられます。
農地を譲渡し譲渡所得の申告をした際に、農地転用決算金等を支払っている場合、譲渡所得の計算をやり直す更生請求の手続きをすれば所得税が減額されます。農業所得など譲渡所得以外の所得がある場合は、それもあわせて再計算されます。
更生請求時の注意点
更生請求することができるのは、「土地改良区内の農地の転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われた農地転用決済金等がある場合における譲渡費用の取扱い」が変更されたことを知った日の翌日から、2ヵ月以内です。
更生請求ができる期間は、法定申告期限から5年以内となります。
譲渡費用に含まれる条件を知っておくことが大切
農地転用により太陽光発電を設置する場合、手続きに関わる農地転用決算金や協力金が譲渡費用に認められる場合があります。チェックミスで損をしないように、しっかりと認識しておきましょう。
必要書類は市街化区域・市街化調整区域で異なりますが、共通しているのは、「農地転用申請書」「土地登記事項証明書」「位置図」「公図写し」「計画配置図」です。
また、整地(造成)は土地の区画形質の変更に該当し、開発許可申請を行う必要があり、他人の建設用地などに太陽光発電を設置する場合は「貸借権」が利用されることが多く、そのための登記申請書を提出しなければなりません。
土地の形態によっても内容に違いがあるため、申請時に焦ってしまうことのないようしっかりと確認しておきましょう。
その中でも農地は太陽光発電に適した土地であるため投資としてもおすすめです。
・農地転用することで太陽光発電所が設置しやすい
・農地を休ませるより太陽光発電所の設置がお得
・太陽光発電所のデメリットや譲渡費用の確認も大切