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産業用の発電量を解析!シミュレーションでわかる太陽光発電の電気代

太陽光発電

近年、再生可能エネルギーが注目されている中、太陽光発電の導入を検討されている方が増えてきています。

独立行政法人産業技術総合研究所では、太陽光エネルギーの拡大と効率化を視野に入れたエネルギー管理が進められていますし、2014年には産業技術総合開発機構も、太陽光エネルギー普及後の社会を見据えて「太陽光発電開発戦略(NEDO PV Challenges)」を策定しました。

社会全体で再生可能エネルギーを推進している中、実際にどれほど太陽光発電によって売電収入を得られるのか電気代が安くなるのか、よくわからないという方も多いことでしょう。

そこで今回は、住宅用太陽光発電との違いなどを比較しながら、産業用太陽光発電の特徴をご紹介します。

住宅用太陽光発電と産業用太陽光発電の違い

産業用太陽光発電とは、主に一般住宅以外に取り付けられた太陽光発電を指しますが、条件としては「10kW以上の設備を導入する」という非常にシンプルな定義です。
メガソーラーと呼ばれる大規模な地上装置も産業用太陽光発電に分類されます。

住宅用と産業用は、同じ太陽電池が使われていて仕組みもほとんど一緒のように感じますが、実際には違いも見られます。
では、どのような違いが見られるのでしょう。

■ 太陽電池モジュールの違い

住宅用は、主に自宅の屋根に取り付けられることが多いですが、産業用は、ビルの屋上で風が強い環境や、沿岸地域の塩害が発生しやすい環境など、条件がそれぞれ違ってきます。
そのため、地域に合わせた太陽モジュールを注文しようとすると、住宅用で使用されている太陽電池モジュールではなく特注する必要が出てくるのです。

■ 太陽光発電を設置する際の架台の違い

住宅用の架台は、屋根の形や素材に合わせて、すでにいくつかタイプが分かれており、大量生産が可能なため、比較的安いコストで取り入れることが可能です。
産業用になると、ビルの屋上のような陸屋根や、トタンのような波状に作られた折板屋根が一般的な設置場所となるため、架台も各設置場所に合わせたものを作らなくてはいけません。
そのため、設置架台のコストがかなり割高になることも考えられます。

■ パワーコンディショナーの違い

パワーコンディショナーとは、直流の電気を交流に切り替えて、家電などにも使えるように変えることができる機器を指します。
住宅用の場合、パワーコンディショナーは2~5kWが主流であり、太陽光発電で7kWを載せる場合には、パワーコンディショナーを2台用意しなくてはなりません。

一方、産業用は規模も住宅用より大きくなるため、10kWのパワーコンディショナーが多く使用されています。
もし30kWの発電システムを利用しているのであれば、3台のパワーコンディショナーを連結させて使う必要があります。

産業用太陽光発電『全量買取制度』

住宅用と産業用の違いについてご紹介しましたが、実は電力の買取制度も大きく異なります。

住宅用では、「余剰電力買取制度」が適用され、基本的には、太陽光発電から得た電力を自宅で消費します。
電力が余ったら、電力会社へ1kWhあたり28~30円(税抜)で売ることが可能です。

産業用の場合は、「全量買取制度」が平成24年7月より適用されました。
これは余った電力ではなく、すべての電力を売ることができるというもので、収益につながる事業として注目されています。
買取価格は、1kWhあたり21円(税抜)ですが、20年間という長期的な収益が見込めます。

住宅用・産業用で、どちらにもメリットがあるのです。

それでは、最大出力量(太陽電池容量)によってどのような違いがあるのか、見てみましょう。

 10kW未満の場合

10kW未満では、全量買取制度は適用されず、住宅用の余剰電力買取制度が適用されます。
期間も10年間と10kW以上の場合に比べて半分の期間になってしまいます。

 10kW以上の場合

10kW以上では、産業用の扱いとなり、余剰電力買取制度と全量買取制度のどちらも選択することができます
ただし、買取期間や買取価格に違いはありません。
価格は住宅用に比べて若干低いですが、その代わり買取は20年間と長期間にわたり行うことが可能です。

 2000kW以上の場合

2000kWと非常に大きい電力を売却する場合も、産業用の全量買取制度が適用されます。
期間も20年間と10kW以上と変わらないのですが、売却価格は入札制となっており、落札された価格で取引されるため、その時々で価格が変化します。

電気代をシミュレーションで確認

産業用太陽光発電の場合、それぞれの条件の変化によって、電気代はどれくらい異なってくるのか確認していきましょう。
詳しくは、産業技術総合開発機構の『年間月別日射量データベース』でも確認できます。
参考にしてしてみてください。

 地域について

まずは、都道府県地域による違いを見てみましょう。

都道府県別の年間日照時間を見てみると、1位は埼玉県2位は群馬県3位は山梨県というように、関東から中部地方を中心に年間日照時間は多くなっています。
一方、年間日照時間が少ないのは、秋田県や鳥取県、島根県、青森県、山形県など、日本海側の地域となっています。

一見南の地域、特に沖縄県などは日照時間が長いように感じますが、台風が接近している時期は、天候も安定しません。
南の地域だからといって、決して日照時間が長いわけではないのです。

それでは、実際に産業用太陽光発電のシミュレーションをしてみましょう。

まずは、年間日照量1位の埼玉県のケースです。

仮にこちらのような条件で設置したとします。

 

場所 埼玉県秩父
モジュール枚数 172枚
太陽電池容量 43.0kW
方位角 南345度
傾斜角 緩やか(20度)
設置場所 地面
導入金額 13,932,000円(税込)

この場合、年間予想発電量は50,940kWhで、一般家庭のおよそ9.5軒分の発電量です。
月々の売電金額は96,277円(税込)で、年間売電金額は1,155,319円(税込)となります。

想定利回りは、「年間売電金額 1,155,319円÷導入金額 13,932,000円×100」で計算することができ、約8.3%の高い数値であることがわかります。

20年間の総売電金額は23,106,380円(税込)ですから、かなり効率的な売電だといえますが、経年劣化による発電量低下や太陽電池損失などのトラブルも考慮する必要があります。

ソーラーローンを利用する場合は、利率分が導入費用に上乗せされますから、例えば実質年率が2.2%で15年払いにした場合、20年間の総利益額は6,736,920円です。
可能であれば、ローンを組まずに導入することをおすすめします。

※ 産業用ニコそら診断から算出
http://www.smart-house.bz/shindan/industry/ecosystem/index.php

また、自宅で利用する電力量料金単価は、時間帯や時期によっても変化します。
過去の電気料金換算額をしっかり調べて節電対策をしてみてください。

 設置場所について

地域だけでなく、設置場所によっても太陽光の当たり方が変化するため、電気代にも差がみられます。
例えば、屋根の上に設置するとしても、その屋根が平らな陸屋根なのか、それとも傾斜のある屋根なのか、傾斜がある屋根でも傾きによって異なるのです。
屋根設置型と同じタイプに当てはまりますが、屋根にパネルを設置する場合と、すでにパネル化されている屋根材を取り付ける方法に分類することが可能です。

また、屋根以外にも、地上設置という形があり、屋根ではなく、土地に太陽光パネルを設置する場合もあります。

いずれも、メリット・デメリットがあり、好みの問題になってくるでしょう。

電気代節約や売電収入が比較的高いのは、傾斜が強い屋根の方です。
ただし、これはあくまでも一つの目安ですし、平らな屋根でも太陽光の入りやすい角度へ設置することが出来る場合もあります。

自宅に設置する場合の判断材料として、参考にしてみてください。

 設置面積について

産業用太陽光発電の条件は、10kW以上となっています。
10kWに相当するパネルの設置面積はおよそ15坪です。

つまり、15坪のパネルを置く面積がなければ、産業用太陽光発電の導入は難しいことになります。
加えて、これは、10kW相当のパネルを置ける最低面積ですから、実際には、もう少し広い面積が必要です。

30坪以上の規模であれば、産業用として利用しやすくなるでしょう。
200坪になると、容量を50kW以上に設定した場合、高圧になってしまうため、メンテナンスキュービクル設置義務などが生じます。
コストをかけないためにも、できるだけ50kW未満で運用できる太陽光発電パネルの設置をおすすめします。

発電量や売電価格は、設置面積が広ければ広いほど増えていきます。
しかし、同じ太陽電池モジュール出力や、同じ設置面積であっても、角度が変わると発電量や売電収入も変化します。

もしも狭い範囲でしか太陽電池モジュールを設置できないのなら、角度を工夫したり、設置場所の日射量データを把握してから設置するように心掛けてください。

太陽光発電は電気代や売電収入のメリットだけでなく環境にも優しい

産業用太陽光発電によって、自社の電気量を節約することができるだけではなく、余剰分を売ることで利益にすることが可能です。
また、利益を出すためには、設置にさまざまな工夫も必要ですが、電気料金の節約だけでも十分コスト削減につながると考えらえます。
より多くの発電量を得るためにも、太陽光発電の導入前にシュミレーションが大切なのです。

また、太陽光発電には、地球環境にも優しいという大きなメリットがあります。
例えば、石油熱量換算の計算式から、発電量1kWhあたり石油0.227リットルとした場合、太陽光発電の年間発電量を3000kWhと仮定して、年間で使用されるはずだった石油のおよそ681リットル分を太陽光発電でまかなったことになります。
有限である石油を利用せずに済んだと考えれば、社会貢献も同時に果たしているという意識が生まれるかもしれません。

これから太陽光発電を導入した場合のランニングコストと、電気料金節約が見合うか気になる方は、実際の条件で是非シミュレーションをしてみてください。
わからないことがあれば、販売店や施工業者に相談してみるのもおすすめです。

これを機会に、太陽光発電の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

まとめ
  • 住宅用と産業用の太陽光発電の違いは、10kW以上の設備かどうかのみである。
  • 住宅用に比べて産業用太陽光発電は、厳しい環境に設置されることが多く、機器は高額で特注になることもある。
  • 各地域の年間日照時間を確認し、設置場所や面積、角度などを考えて太陽光発電のシミュレーションをする必要がある。
  • 太陽光発電の導入は、電気代や売電収入のメリットだけでなく、自然環境にも優しく、社会貢献ができる。

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