近年、IoT(さまざまなものにインターネットがつながること)が急速に普及しています。
インフラ環境やネットワーク、電化製品に至るまで、私たちは家庭や職場でさまざまな電気に囲まれて生活しています。
その電気はAC(交流)とDC(直流)に分類されるのを、ご存知の方でしょうか。
耳にしたことはあるけれど詳細な違いはあまり気にしたことがない、という方も多いかもしれません。
今回は、そんなAC(交流)とDC(直流)についてご説明します。
ACとDCっていったい何?
AC(交流)とは、Alternate Current、つまり「交流電力、交流電源」のことです。
一方、DC(直流)とは、Direct Current、「直流電力、直流電源」を指します。
電気の流れには、交流と直流のふたつの方式があります。
AC(交流)とDC(直流)の違いを簡単に説明すると、交流は電流の流れる方向が変化するのに対し、直流は一方向にしか流れません。
では、AC(交流)とDC(直流)とはどんな電機の流れ方で、家庭で使われるものだと、どのようなものが該当するのでしょうか。
AC(交流)
AC(交流)は、電流(電気の流れる向き)、電圧が周期的に変化していく電気の流れ方です。
同じリズムで向きを交互に変えながら電気が流れるAC(交流)。
その周期は非常に細かく、1秒間に50回から60回方向が変わります。
家庭で利用するコンセントや照明器具などの電灯は、単相交流が使われており、常に行ったり来たりをくり返しているのです。
コンセントにさして使う電化製品は、プラグをどちらの方向にさしても使えます。
これは、交流用の電気を使う製品だからなのです。
電化製品の一部では交流では使うことができず、製品のなかで直流に変換し駆動するものもあります。
パソコンに付属されているACアダプタは、コンセントの交流の電気を直流に変換し、利用できるようにしているのです。
DC(直流)
DC(直流)は、電気が流れる際に、その方向や大きさ(=電流)、勢い(=電圧)が常に変化しない電気の流れ方。
わかりやすい例を挙げると、電池に豆電球を接続して光らせたときに流れている電気は、直流です。
電気は常に一方通行で変化しません。
懐中電灯など電池を使う電気製品は、 「+」と「-」があり、決まった方向にのみ流れます。
これは直流用の電気を使う製品だからです。
ACアダプタとは逆に、DCアダプタやDCコンバータなどのDC変換機器もあります。
太陽光発電におけるACとDCとは
太陽光発電システムは、電気はAC(交流)とDC(直流)のどちらなのでしょうか。
答えは両方です。太陽光発電システムは、DC(直流)の電気をAC(交流)に変換しています。
また、送電網もAC(交流)とDC(直流)が混在しており、それぞれ変換して電気を送電し、利用しているのです。
太陽電池パネル
太陽光発電システムで使われる太陽光パネルは、DC(直流)で設計されています。
太陽電池パネルに太陽光が照射された際に、パネルのシリコンセルのなかで電子が移動し、エネルギーを放出します。
この電気が直流送電されるのです。
また、太陽光電池パネル同士も直流で接続していき、電気は一定方向にのみ流れるしくみになっています。
パワーコンディショナ
太陽光電池パネルで作られたDC電圧(直流電圧)の電気は、接続箱、集電箱へ送電された後、パワーコンディショナでAC電圧(交流電圧)に変換されます。
これにより、家庭やビジネス用途に幅広く使用可能な電気になるのです。
また、使いきれなかった電気は電力送電網を通じて電力会社に売電することができます。
その際には変圧器を介して低圧から高圧に昇圧することもあります。
電力ロスを減らす「直流給電」
太陽光発電で作られる電気がDC(直流)であれば、DC(直流)で駆動する電化製品や直流電源(DC電源)で蓄電する蓄電池は、パワーコンディショナでAC(交流)に変換してAC送電(交流送電)する必要がないように考えられます。
DC(直流)からAC(交流)に、あるいはAC(交流)からDCに変換する際には損失(熱)が発生するため、変換しないで使う方がロスが少なくなり効率的なのです。
そこで、「直流給電システム」の製品化に向けた動きが活発化しています。
太陽光の発電電力を売電せず、蓄電池に貯めて自家消費するようになると、直流で動作する電気機器は、現在のようにAC(交流)に変換せずに直流(DC(直流)のまま利用することが可能です。
そうなると、「直交変換」に伴う電力損失を減らすことができます。
DC(直流)で稼働する電気製品も開発が進められています。
たとえば、電気消費量の大きいエアコンは、外に置いた家庭用蓄電池から直接、室外機に直流電流を供給する仕組みが開発。
パワーコンディショナを介してAC(交流)に変換しないことで、約5%の電力ロスを削減することが可能です。
このような電力変換ロスを減らして効率的に電気を使う「直流給電システム」の普及が進んでいます。
自分で発電効率をあげるには
現在、普及している太陽光発電システムは、DC(直流)からAC(交流)に変換する形が主流です。
太陽光発電において、少しでも発電効率があがる方法をご紹介しましょう。
太陽光発電システムでもっとも大切といわれるのが、太陽光パネルの発電効率です。
そもそも発電効率がよくないと、発電量があがりません。
太陽光パネルには、パネルが受けた光の何%を電力に変換できるかを示す「変換効率」と呼ばれる指数があります。
太陽光パネルにはセルの素材によって種類があり、シリコン結晶系では単結晶、多結晶などに分類。
単結晶の方がより変換効率が高いとされていますが、価格が高いというデメリットもあります。
また、シリコン結晶系全体として、高温に弱いという特徴もあるのです。
化合物でできたCIS(CIGS)系はシリコン系と比較すると変換効率は劣るものの、影に強く、高温時も出力低下が少ないというメリットがあります。
設置する場所の気温や面積、予算にあわせて適切な太陽光パネルを選定しましょう。
設置した後のメンテナンスも重要です。
樹木や雑草、新しく設置した看板などで影ができるのはよくありません。
太陽光パネルは直列に接続するため、一部のパネルでも影になると広い範囲の発電効率に影響がおよびます。
影響が及ぶのは、それだけではありません。
鳥のフンや泥汚れでパネルが著しく汚損すると、発電効率が低下することがあります。
雨で流れる程度の汚れや埃なら大丈夫ですが、広く厚い汚れがある場合は清掃が必要となります。
こまめなメンテナンスで発電効率をキープするようにしましょう。
扇風機にもACとDCがある
電化製品は、AC(交流)で動くものとDC(直流)で動くものがあるとご説明しましたが、近年普及が進んでいるのがDC扇風機です。
DC扇風機とAC扇風機の違いについて、見てみましょう。
AC扇風機
もともと、扇風機はAC(交流)の製品が主流です。
AC扇風機は価格が安いという最大のメリットから、依然として主流であるといえます。
しかし近年、電気使用量の少ないDC扇風機が普及してきています。
AC扇風機価格の安さに加えて従来の円形の扇風機から、タワー型扇風機や羽なし扇風機などもあり、大きさや風量調節タイプのバリエーションが豊富にあることも特徴のひとつです。
DC扇風機
近年、テレビやインターネットで紹介され、普及が進んでいるのがDC扇風機です。
ACモーター扇風機が交流モーター(ACモーター)を使用しているのに対し、DCモーター扇風機は直流モーター(DCモーター)を使っていますので、消費電力が少なく、駆動音が静かであるというメリットがあります。
ただ、価格はAC扇風機のように安くはありません。
価格帯は1万円以上のものが多く、4000円程度から購入可能なAC扇風機と比較すると高価であることがデメリットといえます。
ただ長く使用することを考えると電気代が安いDC扇風機は大きなメリットです。
就寝時など、扇風機の音が気になる場合はDC扇風機よいでしょう。
直流・交流を深く理解して、太陽光発電をはじめよう
固定価格買取制度(FIT)の価格低下を受け、太陽光発電事業はかつての急速普及の足を止めたように思われるはずです。
しかし、買取価格が低下し、商用電力の単価を下回れば、自家消費の必要性が高まってきます。
実際、FIT先進国のドイツでは、買取価格の低下に伴い太陽光の電気を蓄電池に貯めて活用する家庭や事業者が増え、日本にもその潮流がきているといわれているのです。
自家消費や蓄電池は直流送電という活路を見出し、市場を拡大しようとしています。
まだまだ、太陽光発電から目が離せない状況が続いているのです。
- 電気にはDC(直流)とAC(交流)の2種類がある
- 太陽光発電システムでは、生産したDC(直流)の電気をとAC(交流)に変換している
- 近年では、AC(交流)に変換しない「直流給電」も普及してきた
- 太陽光発電の発電効率のためには、パネル選定とメンテナンスが重要
- 扇風機にもDC(直流)とAC(交流)の2種類がある