現在、日本で行われている発電方法の代表格は火力発電や原子力発電です。
そして、昨今では、再生可能エネルギーとして太陽光発電が注目を集めています。
しかし、それぞれの方法の仕組みや問題点などは意外と知られていません。
中には、環境に甚大な影響を与えてしまうという問題を抱えたものもあるのです。
火力、原子力、太陽光発電の仕組みや特徴、問題点などを比較してご紹介します。
それぞれの発電のしくみ
では、火力、原子力、太陽光発電にはそれぞれどのような特徴があるのでしょうか。
各々が発電を行っているメカニズムを見ていきます。
火力発電の仕組みと特徴
火力発電は、熱エネルギーを利用した発電方法です。
現在、日本で使用されている電気のうち約7割は火力発電が補っています。
その発電原理は、蒸気機関車が走るのと同様で
- 石油や石炭を燃やしてお湯を沸かし水蒸気を発生させる
- その蒸気でタービンを回し発電を行う
- タービンを回した水蒸気は復水器で冷やされて水に戻る
というものです。
このサイクルを繰り返すことによって、電力の供給を可能にしています。
火力発電は、燃料の量を変えることにより、発電する電気の量をコントロールできるので、時間帯や電力を多く消費する季節などに柔軟に対応することができるのです。
火力発電の中で主流になっているのは、蒸気によって発電する「気力発電」ですが、他にもディーゼルエンジンを使用して発電する「内燃発電」や高温のガスを発生させて発電を行う「ガスタービン発電」などの方法があります。
原子力発電の仕組みと特徴
原子力発電は約50年前から行われるようになった発電方法で、日本で初めて原子力による発電が行われたのは1963年になります。
原子力発電の基本原理は火力発電と同じです。
しかし、火力発電が火を起こして、熱エネルギーを発生させるのに対し、原子力発電ではウランの核分裂から熱エネルギーを得て発電を行います。
核分裂によって得られた熱エネルギーで水を気化させ、タービンを回すというわけです。
燃料となる濃縮ウランは3年ほど核分裂を続けるため、資源を大量に消費することがありません。
しかも、火力発電と異なり発電過程でCo2が発生しないのが原子力発電の特徴です。
そのため、原子力発電はクリーンなエネルギーとして導入が開始されました。
また、発電の性質上、大量の水を使用するため火力発電同様、海のそばに発電所が多く設けられています。
太陽光発電の仕組みと特徴
太陽光発電は、P型半導体、N型半導体という2種類の半導体を使用して電気を起こす発電方法です。
太陽電池に光が当たると、負の電気と正の電気が生まれます。
そして、負の電気はN型へ、正の電気はP型へそれぞれ移動するのですが、太陽光発電はこの動きを利用して電気を起こしているのです。
以前は発電効率が悪いとされていた太陽光発電ですが、近年では結晶パネルの研究も進み住宅用ソーラーパネルの市場も大きくなりつつあります。太陽光発電は、太陽光をエネルギー源としているため、火力発電や原子力発電のように資源を多く使うことがありません。
そのため、「環境への負荷がほとんどない」というのが太陽光発電の特徴です。
研究次第では、日本のエネルギー自給率を引き上げ、発電による環境負荷をゼロにしてくれる可能性もあります。
太陽光発電は、次世代のクリーンエネルギーとして最も期待されているといっていいでしょう。
エネルギーごとの問題点
火力、原子力、太陽光発電ともにそれぞれのメリットがあります。
しかし、それと同時に環境問題などのデメリットがあるのも事実です。
続いては、それぞれの発電方法のデメリットを見ていきます。
火力発電の問題点
火力発電の問題点としてまず挙げられるのがCo2による環境汚染です。
火力発電は火を起こし、その熱エネルギーによって電力を生み出します。
火を利用するという性質上、発電過程でどうしても二酸化炭素が発生してしまいます。
二酸化炭素は「温室効果ガス」とも呼ばれ、それが大量に放出されると、本来宇宙に逃げるはずの熱が地上に閉じ込められてしまいます。
そうなると、地球温暖化に拍車をかけることになり、わたしたちが地球に住めなくなる日が来てしまうかもしれません。
また、石炭や石油など有限な資源を大量に消費するのも火力発電の問題点です。
石炭、石油は化石燃料なのでいつかは枯渇する日が来ますから、今まで通り火力発電に頼っていたのでは電力不足が深刻になってしまいます。
原子力発電の問題点
原子力発電の問題点は、燃料にウランを使用している点です。
原子力発電に使用される濃縮ウランは放射能を多量に含んでおり、もし漏れ出せば土壌や大気、私たちの人体に多大な影響を及ぼします。
ドイツのチェルノブイリ、2011年の東日本大震災の惨状を思い出せば、原子力発電の抱えるリスクの大きさが理解していただけるでしょう。
また、ウランを使用した後の廃棄物、「プルトニウム」の安全な処理方法がないのも問題です。
プルトニウムはウラン同様、高い放射性物質を含んでいます。
そんな有害物質にも関わらず、現時点で存在するその処理方法は「地中に埋める」というものだけです。
このように、クリーンなエネルギーとして導入された原子力発電も、安全面で大きな問題があります。
火力発電はこのように環境への影響、資源の問題を抱えています。
太陽光発電の問題点
太陽光発電は資源を枯渇させない、環境にも配慮した次世代のクリーンエネルギーです。
しかし、問題がないわけではありません。
太陽光発電の問題点としてまずあげられるのが、「設置コストが高いこと」です。
太陽光パネルに使用されている半導体は高価なものが多く、導入に莫大なコストがかかってしまいます。
そのため、大量に設備を作ることが難しいのです。
また、太陽光エネルギーを使用するという性質上、天候に発電量を左右されてしまうのも問題です。
晴れている時はいいですが、曇りや雨の日は通常量の発電を行うことができません。
火力や原子力発電のように、安定供給ができない可能性があります。
次世代のエネルギーとして期待される太陽光発電ですが、コストや安定供給など発電所の建設に向けて改善点は多いようです。
火力・原子力・太陽光発電の発電効率
火力・原子力・太陽光発電ともに様々な問題を抱えていることはわかりました。
では、この3つの発電方法を、今度は発電効率の観点から比較していきます。
それぞれの発電効率は
発電方法 | 発電効率 |
火力(石炭) | 40~43% |
原子力 | 33% |
太陽光 | 5~40%(市販のものは12~21%) |
となっています。
最も発電効率がいいのは火力発電、続いて原子力発電です。
太陽光発電の発電効率にムラがあるのは、やはり発電する場所の季節や気候に大きく影響を受けてしまうためです。
また、一般に家庭用として市販されているものの発電効率は12~21%となっており、火力・原子力にはだいぶ劣っています。
しかし、2011年の原発事故を境に再生可能エネルギーが注目されるようになってから、研究が急速に進んでいることは事実です。
発電効率も、2011年を境に上昇してきています。
今後も、太陽電池のさらなる性能の向上が期待できるでしょう。
なぜ太陽光発電は必要とされるか
今はまだ発電効率が低く、発電所建設までには至っていない太陽光発電ですが、将来的には必ず必要なる発電方法です。
その理由として「枯渇する資源を使用していないこと」があげられます。
現在、日本のエネルギーの大半を作り出している火力発電は、石油や石炭などいずれ枯渇してしまう化石燃料を使用して電気エネルギーを作っています。
しかも、その燃料の多くを海外からの輸入に頼っているのです。
このままでは、ただでさえ低い日本のエネルギー自給率がさらに下がり続け、石油や石炭が枯渇した時には、もはや自国でエネルギーを作ることができないという事態にも陥りかねません。
しかし、太陽光発電の研究が進み、安定した電力の供給が行えるようになれば、この資源の問題は解決します。
もちろん同時にエネルギー自給率も上昇するでしょう。
また、「環境への影響がない」ことも太陽光発電が必要とされるべき理由です。
火力発電では温室効果ガスのCo2、そして原子力発電ではウラン、プルトニウムにより放射性物質が発生します。
どちらも、地球環境に悪影響をもたらすものです。
このまま火力・原子力発電を使い続ければ、地球はどうなってしまうかわかりません。
しかし、太陽エネルギーを有効に活用できるようになればこの問題は解決できます。
太陽光発電では、有害物質の発生がないため環境に配慮したエネルギー供給を行うことが可能です。
このように資源・環境問題などの観点からも太陽光発電は実用化されるべきなのです。
発電の利点と欠点を知っておこう
火力・原子力・太陽光発電は私たちの暮らしを支えるライフラインでありながら、その裏に抱える問題点は案外知られていないものです。
生活を便利にする一方で、環境に悪い影響を与えてしまっているのではいつか釣り合いがとれなくなるかもしれません。
資源の枯渇に苦しまないためにも、今後太陽光発電は大きな注目を浴びていくでしょう。
ソーラーフロンティアをはじめ、国内外のメーカーも日々研究に取り組んでおり、導入コストも下がってきています。
興味がある方は、ガスを使って電気とお湯をつくる「エネファーム」との組み合わせを含めて、是非この機会に太陽光発電の導入を検討してみてください。
- 火力・原子力・太陽光発電それぞれにはメリットと同時に問題点も多くある
- 現在の日本の電力は火力発電に大きく頼っているが地球環境には悪影響である
- 資源を枯渇させず環境にも優しい太陽光発電の有効活用が望まれている