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電力のベストミックス|経済産業省が示した日本の長期エネルギー需給

太陽光発電

日本は世界各国の中でも第5位となるエネルギー消費国であり、多くのエネルギー資源を使用しています。
それにも関わらず、日本国内でのエネルギー自給率は低いというのが現状です。

経済産業省では、この問題点を打開するため、長期的にエネルギーミックスを図り、受給構造改善に取り組んでいます。

今回は、そんな経済産業省の指針によって、日本の長期エネルギー受給はどのようになっているのか、これからの日本のエネルギーはどのように変わっていくのかをご紹介していきます。

 

日本のエネルギー自給率と海外エネルギーの依存度

日本の生活の中で、電力は欠かせないものです。
日本はエネルギー消費量も高く、世界5位という高い位置にいます。
同じ先進国のアメリカやイギリスでは、消費量は高いもののアメリカでは76%イギリスでも52%という自給率を持っていますが、対する日本は5%と僅かな状況です。

現代の日本では、自国で作り出すエネルギーで消費電力を賄えないため、海外からエネルギー資源を輸入せざるを得ません。

しかし、昔はそのようなこともありませんでした。
昔と今では、日本の消費電力に何か違いがあるのでしょうか。

日本のエネルギー構成の歴史を見ていきましょう。

 

日本のエネルギー構成の歴史

日本は、戦後から復興、そして経済成長を遂げてきました。
その歴史が進むごとに電気も進化を遂げ、今や日本人の生活には必要不可欠なものとなっています。

1965年(昭和40年)と2013年の電力量を比べてみると、およそ10倍もの差があり、使用する電力量が明らかに増えていることが分かります。

経済成長とともに国内電力の消費量も増え続けてきたわけですが、電源構成は変わってきているのでしょうか。

 第一次石油ショック時(1973年)

1973年の第一次石油ショック時は、当時の主要エネルギーであった石油が、第四次中東戦争をきっかけに原油価格を大幅に引き上げられてしまいました。
これが、中東の石油に依存していた各先進国にダメージを追わせることになります。

石油に関する商品の便乗値上げが始まり、みるみるインフレを巻き起こしていきました。
第一次石油ショックが起こった翌年の1974年には、消費者物価指数が23%も上昇してしまったのです。

この影響により、それまで石油に依存してきた国々は、中東以外の地点で油田調査及び開発を進めるようになり、石油に頼らないエネルギー活用の開発に取り組みました。

日本でも、石油ショックをきっかけとして、新たな電源構成が行われるようになっていきます。

 震災直前(2010年)

東日本大震災が起こる前年の2010年、国内の販売電力量はピークを迎えます。
海外からの化石燃料の依存度は、第一次石油ショック時の7.5割から約6割にまで減少し、徐々に小さくなっていきました。

その大きな要因は、原子力発電です。

2010年の段階では、まだ原子力発電所が起動しているため、日本のエネルギー自給率も高かったのです。

 震災後(2014年)

震災後、日本では脱原発の取り組みが進められてきました。
安全性が完全に確保できない状態だということで、今は多くの原子力発電所が稼働していません。

2014年からはこういった背景もあり、省エネ対策が家庭だけではなく、オフィスや店舗などでも取り組まれるようになっていったのです。

また、原子力発電が使えない代わりに石油石炭天然ガスによるエネルギー供給が増えていきました。

 

2030年の長期エネルギー需給の基本方針

震災以降、国民のエネルギー問題への関心は、以前に比べてとても高くなってきています。
そこで、経済産業省は2030年までの長期間にわたり、エネルギー受給を見ることで構造の改善を図っていこうと基本方針を固めました。

 安全性

エネルギー政策において、安全性は非常に重要なものであり、第一に優先すべき事項となります。
特に原子力に対しての信頼性が失われてしまった今、安全性の高いエネルギー受給であることが重要です。

世界でもトップクラスの規制基準に、作業員や技術者など働く人々の安全性を向上、さらに安全性を確保するために必要な技術を新しい人材に発展していくことができることなどが問題点となります。

 安定供給

いかなる時でもエネルギーが安定して供給できる」ということも、重要な基本方針に含まれます。
輸入に頼ってしまうと、第一次石油ショックの際と同様に、日本景気に直撃してしまう可能性も少なくありません。
エネルギー輸出国からだけではなく、さまざまな国と連携を取ることで、エネルギーの安定供給につながります。

また、国産資源開発にも力を入れており、エネルギー自給率は25%程度までの改善を目標としています。

 経済効率性

震災以降、原子力発電の供給がストップした結果、電気料金も上昇し、特に中小企業などの産業が大きなダメージを受けることになりました。
そのため、電気料金を抑え、経済を潤滑に動かしていくことも重要です。
電力にかかるコストの引き下げを行い、経済効率を向上させることを目指しています。

 環境適合

原子力発電所が停止したことで、日本では構成比率の見直しを行い、火力発電を普段よりも多く焚き増しすることで、不足する電力を補っていきました。
しかし、その結果、温室効果ガスの排出量が増えてしまっています

エネルギー需給の問題はもちろんですが、温室効果ガス削減目標も設定し、環境改善にも努めなくてはいけません。

 その他のメリット

上記の他にも、基本方針を取り入れるメリットとして、震災前のような原発依存度を低減させると注目される、再生可能エネルギーの導入・普及も目指しています。

再生可能エネルギーがより普及されていけば、日本のエネルギー自給率もアップし、基本方針にあるような安全性や安定供給、経済効率性、環境適合などの目標達成に大きく関わっていくことができるでしょう。

 

2030年のエネルギー供給構造と電源構成

基本方針に基づいた「エネルギー供給構造」の見通しについてご紹介しましょう。

 エネルギー供給構造

日本は、経済成長等による影響から、2030年までエネルギー需要も増加していくことが見込まれるため、発電電力量だけでなく、省エネルギーへの推進活動をより進めていくことが大切です。

エネルギー効率改善につなげられるよう、産業・業務・家庭・運輸の4部門における省エネ対策を実施することを目指しています。

現在5,030万klの省エネルギーを目標としており、2030年の需要を326万klまで落とす見込みです。この想定が順調にいけば、2030年度までに35%ものエネルギー効率の改善ができるという計算になります。

エネルギー供給構造を長期的に改善させるようにするためには、一次エネルギーの供給構造も変えていく必要があります。
一次エネルギーの変遷の鍵を握っているのが、上記にもあるように再生可能エネルギーです。

再生可能エネルギーを増やすことで、エネルギー自給率が約24%まで上昇すると期待されています。

 電源構成

2030年に向けての電源構成は、エネルギー自給率の向上と基本方針に基づく政策目標の達成を目指しています。
これを実現させるには、火力発電の効率化や、上記にもあるように再生可能エネルギーの増加、さらに各企業・各家庭における省エネルギー対策などが必要です。

ただ、電源構成は、バランスも非常に重要であり、基本方針に基づく政策目標を達成するためには各エネルギーを調整していかなくてはなりません。

例えば、電力コスト低下だけを見ると、石炭火力が最もコストがかからないため、石炭を中心に拡大し、コストのかかる再生可能エネルギーを減らす必要があります。
逆に二酸化炭素排出を抑制させるなら、再生可能エネルギーを推進し、石炭火力を減らさなくてはいけません。

電源構成比率のバランスをとることは、とても難しい課題なのです。

 

2030年への主な取り組み

日本国内はもちろん、海外のエネルギー環境も大きく変化しています。
その環境変化をしっかりと捉えつつ、2030年に向けてエネルギー基本計画に取り組む必要があります。

ところで、エネルギー基本計画とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

 省エネルギー

産業や業務、家庭、運輸の4部門において、より効率化の図れる環境づくりの推進省エネルギー対策エネルギー消費を「見える」ようにすることも重要な取り組みの一つです。

例えば、企業における省エネ促進のための支援や、次世代自動車の普及、燃料電池にも使用されている水素の活用などが進められています。

 再生可能エネルギー

水力バイオマス地熱などの再生可能エネルギーをはじめ、風力発電や太陽光発電なども電力会社の電力系統へと接続して拡大していき、原発依存度を下げるようにしていくことが、取り組みの方針となっています。

特に風力発電太陽光発電は、その代表的な電力として期待されています。
現状では、発電コストが若干高いという欠点があるものの、近い将来には、コスト低減を図り、さらなる拡大が進むことも十分考えられるでしょう。

 化石エネルギー

石炭火力や天然ガス発電は、環境負荷が大きいため、長期的な目で効率化を図る必要があります。
具体的には、2030年までに火力発電全体の発電効率が、44.3%以上を達成しなければならないという目標が設けられています。

 原子力

原子力に関しては、まずは安全性を考え、厳しい水準をクリアした上で再稼働を進めていく方針です。
しかし、原発の依存度を低減させる取り組みも同時に行うことで、いずれ原子力発電に頼らないような環境整備を行うとしています。

 その他のエネルギー源と供給体制の確保

今やエネルギー源も非常に多様化されていますが、特に身近になってきたものといえば太陽光発電ではないでしょうか。
自宅の自給電力はもちろん、太陽光発電から生み出された電力を売って収入を得ることもできるようになっています。

また、エネファームと呼ばれる分散型エネルギーシステムの導入促進によって、ガスから水素を取り出し、その水素で燃料電池が発電を行い、同時に排熱を利用して給湯も行うといった、エネルギーを繋げる供給体制の確保も今後進められていくことでしょう。

 

再生可能エネルギーの拡大が今後の可能性を広げる

日本のエネルギー資源による「エネルギーミックス」は、再生可能エネルギーの拡大・推進を中心に、原発依存を低減させることや、火力発電の効率化も重要視して進められています。
電力のベストミックスを図るためには、確かに長期的な取り組みが必要です。

ただし、再生可能エネルギーの拡大は、さまざまな影響を考えても優先されるべき取り組みだといえます。
電気自動車が一般化され、火力発電所が少なくなれば二酸化炭素排出量が減少し、地球温暖化を最小限に食い止めることが可能です。

また、エネファームの普及によって、各家庭で供給体制の確保が可能になれば、無駄な電力を起こす必要がありません。

今後のエネルギー資源のバランスは、安全性と効率化に向かって、より早い進展が期待されているのです。

 

まとめ
  • 日本は、世界第5位のエネルギー消費国でありながら、自給率が5%と非常に低い数値である。
  • 1973年の第一次石油ショック時にインフレが起き、日本でも新たな電源構成が行われることに なった。
  • 震災以降、原子力発電に頼らないエネルギー受給の基本方針を決定することになった。
  • 経済産業省が示した2030年に向けた長期エネルギー需給の基本方針は、安全性・安定供給・経 済効率性・環境適合の4つが主軸である。
  • 2030年に向けて、火力発電の効率化や再生可能エネルギーの増加、さらに各企業・各家庭にお ける省エネルギー対策などが必要。

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