太陽光パネルを選ぶ際、パネルの耐用年数は欠かせない要素になります。
20年、30年という長いスパンで使用することを考えれば収益性に大きな影響を与えるからです。
太陽光発電設備を導入する前には、太陽光電池の種類やそれぞれの耐用年数などを把握しておくのが賢明といえます。
そこで今回は、ソーラーパネルの種類とそれぞれの特徴・寿命などをご紹介します。
太陽光電池の種類
現在、住宅用・産業用太陽光発電に使用されている太陽光電池は、その材料の種類から大別することができます。
ケイ素を使用している「シリコン系」と、シリコンを使用していない「化合物系」の2種類です。
市場の大半を占めているシリコン系のパネルには、「多結晶パネル」と「単結晶」パネルがあります。
日本でのシェアが大きいのは高効率な単結晶パネルの方です。
シリコン系の太陽電池の中でも原子の配列を不規則にしたアモルファスシリコン、そして化合物系のCIS太陽電池やCdTe太陽電池は、薄膜化が可能であるため「薄膜型太陽電池」と呼ばれています。
以上のものは、シリコン系・化合物系に関わらずすべて「単接合型」という種類のパネルです。
シリコン系パネルの中には、単接合型のパネルに加え「多接合型」という種類も存在します。
特徴の異なる材料を使用し、どちらの強みも利用することで効率よく電気を作れるようにしたものです。
その代表例として、単結晶型シリコンとアモルファスシリコンを組み合わせた「HIT太陽電池」があげられます。
単結晶と多結晶の違いは?
市場で最もシェアの高いシリコン系パネルの中には、単結晶パネルと多結晶パネルの2種類が存在します。
この二つを比較すると様々な違いがありますが、わかりやすく伝えるならば
- 単結晶パネル・・・シリコン結晶が規則正しく並んでいるため発電効率がいい
- 多結晶パネル・・・シリコン結晶が規則正しく並んでいないため発電効率が悪い
という特徴があります。
共通しているのは、単結晶・多結晶ともに材料にはケイ素を含んだ「ケイ石」を使用している点です。
2つの結晶パネルの違いは製造過程によって生まれます。
このケイ石を溶かし、インゴット(金属を加工しやすいように溶かして固めたもの)を切り出したものが「単結晶パネル」です。
ケイ石を直接切り出しているので、シリコン結晶の純度が高く発電効率がよくなります。
対して多結晶パネルは、単結晶パネルを作るために切り出したケイ石の削りかすを再利用して作られています。
単結晶パネルを作る際、ケイ石のインゴットを100パーセント使用できるわけではなく、どうしても細かなケイ石の破片ができてしまいます。
それらを捨てずに再利用・再加工したものが多結晶パネルになるのです。
また、この2つのパネルは見た目にも違いがあります。
単結晶パネルはケイ石をそのまま切り出しているため、パネルの色ムラがなく綺麗な見た目をしています。
多結晶パネルの方はケイ石の破片を再加工して作られているため、色にムラがありマーブル模様のように見えるのが特徴です。
それぞれの素材の特徴
見た目や製造工程以外にも、単結晶・多結晶パネルにはそれぞれ異なった特徴があります。
1つ目の違いは発電効率です。
単結晶パネルはシリコン結晶の純度が高いため、発電効率がとても高いのが特徴です。
その発電効率は20%前後のものがほとんどになります。
また、単結晶パネルはその変換効率の高さから面積が狭くてもある程度の発電量があるため、住宅用の太陽光発電設備に人気です。
一方、多結晶パネルは単結晶パネルほど発電効率が高くありません。
ケイ石の破片を使用しており、シリコンの密度が低いためです。
市場に導入されているもののほとんどが15%前後の発電効率となっています。
しかし、多結晶パネルは価格と性能のバランスが良いので産業用太陽光発電に人気です。
住宅用ではかつて京セラが多結晶パネルに強みを持っていましたが、日本における住宅用太陽光発電市場では断然単結晶パネルのシェアが大きいため、現在では京セラも単結晶パネルの取り扱いを強化しているようです。
2つ目の違いが価格です。
単結晶パネルはケイ石のインゴットを製造するコストが高くつくため多結晶パネルよりも値段が高くなります。
多結晶パネルは、単結晶パネルより安価です。
ただし、実際の運用には発電効率を考える必要があります。
単結晶パネルは市場での人気が非常に高く、購入段階での割引率が大きくなる傾向にありますから、実際の見積もりでコストパフォーマンスを考慮し、単結晶・多結晶を選択することが重要です。
ソーラーパネルの寿命
それでは次にパネルの寿命について見てみましょう。
太陽光発電と時計・電卓に違いはある?
住宅用に太陽光発電モジュールを設置していなくとも、普段私たちが身近に使用しているものに太陽電池は使われています。
例えば時計や電卓です。
太陽電池は太陽の光を受けて発電を行うものですが、電卓や時計は室内で使用した場合でも稼働します。
太陽ではなく蛍光灯の光でも電気を作り出すのです。
ところで、これらは太陽光発電モジュールに用いられている太陽電池とは異なるものなのでしょうか。
結論から申し上げると、これら2つは同じものです。
基本的には同じ原理でエネルギーを作り出しています。
原理は同じですが、使用する太陽電池は、通常のソーラーパネルとは少し異なります。
というのも、時計や電卓に使用されている太陽電池は、通常のソーラーパネルの100分の1の薄さの「アモルファスシリコン太陽電池」というものです。
このアモルファスシリコンは、蛍光灯などの弱い光でも吸収できる性質があり、古くから時計や電卓に使用されてきました。
その軽さと薄さを活かし、量産型パネルとして期待されています。
しかし、従来の単結晶・多結晶シリコンパネルよりも、発電効率が低いことがデメリットです。
また、その薄さと軽さゆえに劣化も早いのが難点です。
それぞれの耐用年数は?
国税庁によって定められている太陽光発電の法定耐用年数は17年です。
しかし、これは減価償却の期間を考慮したもので、実際の太陽光電池の寿命とはあまり関係がありません。
実際の太陽光電池の寿命は20~30年程度と言われていますが、パネルの種類によって稼働期間や劣化状況は変わってきます。
どのパネルを使ったとしても、年を追うごとに発電効率は下がるのが普通です。
産業技術総合研究所が行った、太陽光パネルの「出力劣化特性評価実験」による結果もそれを証明しています。
パネルの種類 | 劣化率 | ||
5年後 | 10年後 | 20年後 | |
単結晶パネル | 96.4% | 92.2% | 84.2% |
多結晶パネル | 97.4% | 94.3% | 88.4% |
アモルファスシリコン | 94.3% | 87.6% | 75.7% |
CIS/CIGS | 98.5% | 92.5% | 81.4% |
ヘテロ接合(HIT) | 98% | 95.6% | 90.8% |
数字を見てわかる通り、最も劣化が早いのはやはり薄膜型のアモルファスシリコンです。
しかし、劣化率が早くともアモルファスシリコンは導入コストが非常に安価であるため、産業用などによく利用されています。
また、単結晶パネルと多結晶パネルを比較してみると、20年後の時点では多結晶パネルの方が劣化率が少ないことがわかります。
導入時には単結晶パネルの方が発電効率が良く、コストパフォーマンスに優れているように思えますが、20年~30年と長期的に使用していくことで単結晶パネルと多結晶パネルの差は埋まっていくということです。
全国の太陽光発電所(メガソーラー)でも多結晶パネルをメインに採用しているケースが多くみられます。
これから太陽光発電事業を考えている方は参考にしてみてください。
また、初期費用が高くついてしまう多接合型のHIT太陽電池に関しては、劣化率が非常に少ないため、長期的に使用することを考えれば優れている太陽電池であるといえます。
耐用年数は太陽電池の種類によって異なるものです。
太陽光発電システムを導入する際には、価格・発電効率とともに劣化率も考慮に入れることが重要なのです。
用途に合わせたパネル選びを
ここまで太陽電池の種類について解説してきました。
太陽光パネルは一度設置したらそう頻繁に交換するものではありません。
長く利用するものだからこそ、購入前に知っておくべきポイントが多くあるのです。
興味のある方は、太陽光発電を推進している太陽光発電協会などのセミナーに参加してみるのも良いですし、インターネット上で太陽光発電システム見積比較サイトを利用してシミュレーションしてみてください。
発電効率や耐用年数・パワーコンディショナーの性能・設置予定の環境など、太陽光発電設置後に気付いて後悔することのないよう、できる限り確認しておくことをおすすめします。
- 単結晶パネルは発電効率は良いが劣化しやすく、多結晶パネルは発電効率は単結晶より低いが劣化しにくい特徴がある
- 太陽光発電は発電効率や設置する環境の特性など様々な点を考慮して決める必要がある
- 法定耐用年数は17年だが太陽光パネルの寿命は20~30年ほど
- 太陽光パネルの劣化率は長期的に見て非常に重要な要素
- 太陽光パネルごとの特徴を比較して用途に合ったものを選ぶことが大切