太陽光発電は一時期さまざまな企業が参入し、一種のバブル状態になっていましたが、今はそのバブルも終わり落ち着きを見せています。
その落ち着きとともに注目されるようになったのが、「セカンダリーマーケット」です。
「セカンダリーマーケット」とは?
「セカンダリーマーケット」という用語は、一般的には証券市場でいう「流通市場」のことで、発行済の株式や債券(有価証券)を所有する投資家と取引を行うマーケットを指します。
対して、発行元である企業から直接有価証券を購入する「発行市場」を「プライマリー・マーケット」と呼びます。
セカンダリーマーケットは、金融業界以外でも使用されることがあります。
例えば、ソーシャルゲームでいうと、すでに完成もしくは製作途中のゲームを他企業が引き継いで運営するビジネスを指します。
太陽光における「セカンダリーマーケット」
太陽光発電施設における「セカンダリーマーケット」は、中古の太陽光発電施設を売買する市場を指すのが一般的です。
この市場は、何らかの事情で手放したい太陽光発電施設の【所有者】、新築ではなく中古で発電施設を手に入れたいという【購入者】、そして、その間を取り持つ【仲介業者】で成り立っています。
太陽光発電施設の新築がひと段落ついたため、次のビジネスとして注目されるようになったのがセカンダリーマーケットです。
セカンダリーマーケットが増加した背景
セカンダリーマーケットが増加した背景は一概にはいえませんが、新規開発が行われるほど、同時に処分や売却を行う市場が増えるのは当然のことです。
太陽光発電の場合、
「当初の想定よりも維持・管理の手間がかかった」
「引っ越しなどで維持できなくなった」
「想定していた利益を得ることができた」
「他の投資に資金が必要になった」
など、さまざまな理由で処分をしたいという方がいます。
一方で、
「多少設備が古くても初期投資を抑えたい」
「すでに運営実績がはっきりしているものが欲しい」
という理由で中古施設を希望する方もいます。
さらに、太陽光発電で利益を得ようと考えても、近隣に新規で太陽光発電施設を設置できる土地がなく、建設以前にすでに難航しているなど、太陽光発電施設が増えてきたことにより新規での実現が難しくなったという事情もあります。
このように太陽光発電が広まるにつれ、中古の太陽光発電に対するニーズが高まり、セカンダリーマケットが生まれました。
また太陽光発電ならではの次のような事情も、セカンダリーマーケットに注目が集まる理由です。
固定買取制度の利潤配慮期間、終了
セカンダリーマーケットが増加した理由のひとつに、固定買取制度の利潤配慮期間が終了したことがあります。
そもそも固定買取制度は、「あまり広まっていない太陽光発電をもっと広める」ことを目的としています。
そのため「一定期間に利益を上げやすいようにする」という利潤配慮期間が設けられました。
簡単にいえば、買取価格を一定期間上乗せする制度です。
利益配慮期間が終了したことにより、投資額に対しての利回りが減ったので、安価な中古物件であるセカンダリーマーケットに注目が集まるようになりました。
グリーン投資減税の一括償却制度、終了
税制の優遇措置として施行されたグリーン投資減税の一括償却制度も、平成27年3月31日終了しました。
優遇がなくなるにつれ、新規での開発・施工のリスクは高まります。
そのため新規開発をするよりも、既存の施設を購入することでリスクを避けようという考える人が増えるのです。
セカンダリーマーケットのメリット・デメリット
セカンダリーマーケットでの購入には、次のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
- 売電実績が判明している
すでに運営実績があるわけですから、1年でどの程度の売電が可能で収益はどの程度なのかといったことを事前に確認することができます。
新規開発でもある程度は予想できますがあくまでも予想でしかなく、実際の実績がわかっているのは大きなメリットです。
- 施工期間なし、すぐに収益があがる
すでに運営されているものですから、施工期間はありません。
名義変更の手続きを行えばすぐに運営できるので収益を早々にあげられます。
- 売電価格が高い
固定価格買取制度(FIT)における買取価格は年々下がっていますが、買取価格は申し込み当時の基準が適用されます。
価格の改定が行われても期間中は変化しないので、昔の設備を購入することで売電価格が高くなるというわけです。
デメリット
- 固定価格での買取期間が短い
固定買取価格は確かに高いですが、所有者が変わると期間が延長されるというわけではないので、新規に運転するのとくらべて固定買取期間は短くなります。
買取期間終了後は現在の買取価格に更新されます。
- 補助金などの対象にならないことが多い
太陽光発電への補助が行われる場合、新規での運営を対象とすることが多いので中古での購入は対象にならないことが多いです。
- 設備自体が古い
設備が中古なので、今の太陽パネルと比べて発電効率は落ちますし、メンテンナンスの手間もかかります。
セカンダリーマーケットにおいて必要な手続きについて解説します。
事業計画認定の変更
最初に行うのは事業計画認定の変更です。
発電施設の所有者の名義を変更する手続きを行います。
中古の発電所を購入する場合の名義変更には、変更認定申請という手続きが必要です。
電力会社の支払い先の変更
これは管轄する電力会社によって違うので確認しておきましょう。
引継ぎや保証の変更・受け継ぎなどを行う
他にも、遠隔監視システムやメンテナンスサービスなどの引継ぎや保証の変更・受け継ぎなどを行う必要があります。
これも会社や利用するサービスによって異なるので売却側の方と話し合いしっかりと確認しましょう。
場合によっては契約を維持するのではなく、新規契約となることもあります。
あとは土地の賃貸借関連の契約を変更したら、手続きまわりは終了となります。
セカンダリーマーケットの注意点
セカンダリーマーケットで売買されるのはよくも悪くも中古の商品です。
ですから、商品の状態についてよく確認しましょう。
- 基礎の深さや使われている備品の状況について証明する書類があるか
- 初期不良や問題点がないか
- 売買の相場として適切な価格かどうか
など、現在の状況を細かく確認しておくことが大切です。
また、太陽光発電のセカンダリーマーケットはまだ新しい市場なので、問題がある業者も中には存在します。
業者が信頼できるかどうかも確認しておきましょう。
セカンダリーマーケットを使って低コストに
さまざまなリスクがあるとはいえ、運営実績のある太陽光発電施設を購入できるセカンダリーマーケットを利用するのは、初期投資を抑えつつ安定した収益を得るひとつの方法であることは間違いありません。
現在も太陽光発電施設は増えており、それにあわせてセカンダリーマーケットの利用も広がっていくことでしょう。
新たに作ることにこだわだず、セカンダリーマーケットでの売買も選択肢のひとつに入れてみてはいかがでしょうか。
- セカンダリーマーケットとは証券市場でいう流通市場のこと
- 太陽光発電の場合、中古の発電施設の売買のこと
- 太陽光発電のセカンダリーマーケットに注目が集まっている
- 初期費用が安いなどのメリットはあるがデメリットも多い
- 中古での売買となるので購入する前に細かい部分までしっかりと確認しておくこと