住宅の太陽光発電システムと併せて検討されるものに、蓄電池があります。
太陽光発電の固定買い取り価格は5年前の2012年と比較して10kw以上の産業用となりますと半額近くまで下落しました。
買い取り価格が下落するということは、従来売電価格>買電価格だったものが、契約や電気料金の上昇によっては、買電価格>売電価格になるという逆転現象が起きる可能性が高くなりました。
これから主流となるシステムは、昼間発電した電気を蓄電して夜に使用する電気の自給自足できるシステムです。
そして、2016年度より蓄電池における国からの補助金は、家庭の電気の自給自足を目標とするべく、大きく方針転換されました。
太陽光発電の蓄電池ってなに?
太陽光発電と蓄電池は相性の良い組み合わせということで、セットで売られる連携型蓄電池が現在の主流になっています。
ハイブリットパワーコンディショナーという製品を使用することで、これまで太陽光発電と蓄電池、それぞれにパワーコンディショナーが必要だったのが、1台で済むようになりました。
「電気を作って・使う・売る・貯める」を、より効率よく行うようになったばかりか、省スペース&初期費用を抑えることもできるようになったのです。
蓄電池の種類
太陽光発電に使用されている蓄電池はリチウムイオン電池といわれるものです。
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高いこと、大きなパワーが得られる、寿命が長い、動作温度範囲が広いなどの理由からスマートフォンやノートパソコンのバッテリーなどにも利用されています。
各メーカーから蓄電池が発売されていますので、各メーカーのHPを参考にしましょう。
販売価格や蓄電容量、保証期間、想定寿命、定格出力、発電モードなど比べる基準はいくつもありますので熟慮・相談の上決めるようにしてください。
蓄電池主要メーカー
■パナソニック
出典:http://sumai.panasonic.jp/chikuden/lithium/feature.html
パナソニックは、蓄電池の最大メーカー三洋電機を買収合併したことで、蓄電池市場においての知名度と確固たる地位を確立しました。
独自のスマートHEMS®という独自の連携システムで、常に蓄電池の状態を見える化します。
パナソニックの蓄電池は、リビングやダイニングキッチンなど、お部屋のコーナーや空きスペースに置いても邪魔にならない優れたデザイン性。
また、お部屋に空きスペースがない場合は、壁掛け用の蓄電池もあるので、用途や状況に合わせて、幅広く選択できるのも魅力のひとつです。
■シャープ
出典:http://www.sharp.co.jp/e_solution/battery/lineup/
蓄電池業界最小クラスの蓄電池を開発したシャープ。
場所を選ばず設置できることで注目を浴びています。
幅広く太陽光発電関連の事業を展開し、さまざまな製品を開発してきたノウハウは、小エネルギー製品に活かされ、「太陽光発電+蓄電池」を有効活用する3つのモードを選択できるのが魅力です。
- 経済性モード
- クリーンモード
- 充電モード
■京セラ
出典:http://www.kyocera.co.jp/lithium/storage12kwh/index.html
京セラの蓄電池の最大の特徴は、ハイスペック蓄電池モジュールを搭載している、ということ。
従来の蓄電池容量のなんと、1.67倍!
さらに、目的別に選べる2つの設定が可能なのも魅力的です。
・押し上げあり設定
→できるだけ売電に回したい人、日中に電気を使う人
・押し上げなし設定
→節電したい人、日中に電気を使わない人
■NEC
出典:http://jpn.nec.com/energy/aes.html
NECは世界の有力な電力事業者と一緒に、電力安定供給のための系統用蓄電システム事業を進めてきています。
長期に蓄積してきた製品開発の実績と信頼性、安全性も高くその技術を活かすことで、幅の広い需要に対応できる蓄電システムを構築できるのが魅力です。
その蓄電池の生産能力は世界最大級とも言われ、信頼性の高いメーカーとなっています。
■東芝
出典:http://feminity.toshiba.co.jp/feminity/service/enegoon.html
東芝では、フェミニティ対応蓄電システム エネグーンというシステムを展開しています。
その特徴は、スマートフォンからエネグーンの運転状態を常に見える化、運転状態の確認と運転モードの操作が可能です。
大手家電メーカーが培ってきた実績やノウハウを、蓄電システムに活かし、省エネルギーで環境に優しい経済的な生活の普及を促進しています。
蓄電池の仕組み
蓄電池は、太陽光発電で充電した電気や夜間の安い電気代を充電して、日中や夕方の電気代が高いときに放電することで、電気代の節約&ピークシフトを実現します。
蓄電池は通常時単相3線に接続して、AC200Vの出力、蓄電池に貯めた電気を一般負荷と選定負荷の両方の機器に供給します。
通常時は、100V/200V両方に使用できますのでエアコンなども利用可能です。
停電時は、選定負荷に限定して電力を供給することができます。
蓄電池の補助金とは
国からの補助金については、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SⅡ)というところから公募されていて、2015年度までは蓄電池そのものに補助金がでていました。
しかし、2016年度から状況は変わりZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業)というシステムに対して、補助金予算が組まれ支給されるようになりました。
ZEHとは
住まいの断熱性・省エネ性能を上げること、そして住宅用太陽光発電施設などでエネルギーを作ることにより、年間の一次消費エネルギー量(空調・給湯・照明・換気)の収支をプラスマイナス「ゼロ」にする住宅を指します。
つまり、自分のところで発電したエネルギーは、自分のところで消費することを目標としています。
ではなぜこのようなシステムに、補助金がでるようになったかといいますと理由は2点挙げられます。
①再生エネルギー促進賦課金の増大
②送電網への負荷の増大
FIT制度が始まり、申請の9割が太陽光発電と言われるほどに太陽光発電は普及しました。
導入促進効果は絶大でしたが、その結果として上記2点が問題点として浮き彫りになりました。
政府としては、さらなる太陽光発電の普及をさせたいという思惑はありますが、上記2点の問題をさらに深刻化させないために、方針転換をして自家消費を前提としたシステムに補助金を出すようにしたのです。
対象となる人は?
- 申請者が常時居住する住宅
- 専用住宅であること(店舗兼住宅などでも住宅部分が設備要件など満たしていれば申請可能)
- 既築住宅の場合は申請時に申請者自身が居住していること
- 新築住宅の場合は申請者は建売住宅の購入予定者であること
- 賃貸住宅・集合住宅は対象外
補助金額(2016年度)
- 交付要件を満たす住宅 1戸あたり定額125万円
- 交付要件を満たし寒冷地特別外皮強化仕様 1戸あたり150万円
- 蓄電容量2.1kwあたり5万円(住宅補助金に加算される)
- 蓄電システムの補助額上限 補助対象経費の1/3か50万円のどちらか低い方
2017年の蓄電池の補助金について
2017年度蓄電池に関する補助金は国からも地方自治体からも支給されますが、補助金の性質により交付要件が違います。国やお住まいの地方自治体の補助金の交付要件に対して御自身に最も合致しているものはどれかよく調べてから申請するようにしましょう。
国からの補助金は
2017年度についても、国からの補助金は前年度と同じく、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SⅡ)で公募しているZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業)になります。
補助金額は2016年度と比較して変わっています。
- 交付要件を満たす住宅 1戸あたり定額75万円
- 交付要件を満たし寒冷地特別外皮強化仕様についても同額とする
- 蓄電池容量1kwhあたり4万円
- 上限金額は補助対象経費の1/3または40万円の低い方となる
地方自治体からの補助金は
蓄電池の補助金については、国からだけでなく都道府県や市町村などの地方自治体でも公募していますので、住宅メーカーさんに問い合わせてみたり、役所の窓口へ問い合わせてみましょう。
例として東京都の蓄電池補助金について記載します。
<平成29年度 東京都 蓄電池、燃料電池(エネファーム)等に対する助成金>
・担当窓口:東京都環境公社 クール・ネット東京
・参考URL:https://www.tokyo-co2down.jp/individual/subsidy/kodo-riyoka/index.html
・助成総額35億円
・応募期間:2016年6月27日~2021年3月31日まで
・対象要件:
①国が平成28年度以降実施する補助事業における補助対象機器として一般社団法人環境共創イニシアチブ(SⅡ)に登録されているもの。
②太陽光発電システムと同時導入すること
・補助金額:機器費用の1/6 上限50万円
ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル実証事業)について
こちらも2016年度から補助金として、一般社団法人環境共創イニシアチブ(SⅡ)で公募された案件で法人を対象としています。
高性能建材屋高性能設備機器等を導入する既築、新築、増築及び改築の建築物に対してその経費の一部を補助するものであり、対象申請者は建築主等(所有者)、ESCO(シェアードセービンクス)事業者、リース事業者等となります。
経費は、2/3まで支給されかなりの金額がカバーされます。
補助対象設備は、ZEB実現に寄与する高性能建材、空調、換気、照明、給湯BEMS装置等で構成するシステムとなっていまして。
この中に蓄電池のことは触れられていません。
しかし、交付決定したシステムを見ますと蓄電池や太陽光発電設備の設置でも補助金が受けられることがわかります。
新しくビルなどを建築することを計画されている場合こちらの補助金を交付申請するのもひとつの方法だと言えるでしょう。
ダブル発電について
太陽光 | 10kW未満 | |||
余剰買取 | ダブル発電・余剰買取 | |||
出力制御対応機器 | 出力制御対応機器 | 出力制御対応機器 | 出力制御対応機器 | |
設置義務なし | 設置義務あり※ | 設置義務なし | 設置義務あり※ | |
調達価格 | 31円 | 33円 | 25円 | 27円 |
調達期間 | 10年間 | 10年間 |
参考:http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/kakaku.html
資源エネルギー庁のHPをみると、10kw未満の固定買い取り金額のところにはこのような記載があります。
ダブル発電とは何かと言いますと、家庭用燃料電池エネファームや夜間の安い電気代を利用して蓄電池に充電し、その電気を昼間使用することで太陽光発電で得た電気を売電の方に多く回せるようにすることです。
これを、押し上げ効果といい転売のような形を取ってしまいますので、FIT制度の本来
の趣旨から外れていることから、買い取り価格を安くされてしまいます。
最近の蓄電池は、太陽光発電と連携している蓄電池を使用することが主流になっていますので、蓄電池を利用してもダブル発電とならないシングル発電専用型、シングル発電/ダブル発電選択型、ダブル発電型など御自身の要望に応じてメーカーや商品を選択できます。
太陽光発電と蓄電池の今後
2016年度から政府が補助金の方針を変更したことから、今後太陽光発電と蓄電池のモデルとなるシステムが見えました。
太陽光発電で発電された電気を、蓄電池を利用して自家消費することが、今後のモデルとなっていきます。
そうなると、固定買い取り価格の下落は設置費用に関わらず、今後とも止まらないことでしょうし、接続枠の拡充による出力制御の緩和も、急速に解消するような話にならないかもしれません。
- 家庭用蓄電池はリチウムイオン電池が使用される
- 太陽光発電の急激な普及から蓄電池の国からの補助金は2016年度から方針転換された
- 国からの補助金はZEH/ZEBというシステム要件を満たすと交付される
- 地方自治体からも補助金は交付されるので住まいの役所など窓口に問い合わせをしよう
- 太陽光発電用と蓄電池用がひとつになったハイブリットパワーコンディショナーが現在の主流
- 太陽光発電と併設されてもダブル発電にならない蓄電池も多くある