売電によって収益が見込める太陽光発電。
導入費用は高いですが、発電・売電によって元がとれ、所有しているだけでお金が入ってくるのは魅力です。
しかし、売電価格は年々下がっています。
売電で収益を上げたい方にとって、売電価格の推移は気になるところです。
今後はどうなるのでしょうか。
ここでは、売電方法の種類や売電価格の推移理由などに迫ります。
太陽光発電を効果的に利用するため、ぜひ参考にしましょう。
家庭用太陽光発電の形態の違い
家庭用太陽光発電は産業用と比較して形態に違いがあります。
まず、太陽電池モジュールに違いがあります。
ソーラーパネルは見た目がどれも似ていますが、商品ごとに強み弱みなどの特徴があります。産業用は設置箇所に合わせて選ばれ設置されることが多いです。
たとえば、高いビルの屋上に設置される場合、ビルの上は風が強いため、強風に強いパネルが選ばれます。浜辺に設置される場合は潮風に強いものが選ばれます。
このように、産業用は特殊な環境下に耐えられる必要があり、その分値段も高めです。
一方で、家庭用のものは、たいてい住宅の屋根に設置されるので、あまり特殊な状況というものはありません。
よって、住宅用太陽電池は一般的で同じような設置方法となります。
また、パワーコンディショナーも違います。
住宅用のものは2~5kW用が多いのに対し、産業用は10kW以上であることが多いです。
さらに設置架台にも違いがあります。
住宅用の場合は屋根材に合わせ、どんな屋根にも設置できるようキット化され、安く手に入るようになっています。
一方で産業用は特注になることが多く、値段が高めになります。
仕組みの違い
売電の方法は、実はひとつではありません。パネルの出力によって、買取の方法も変わってくるのです。それぞれの特徴をご説明します。
余剰買取制
余剰買取制は読んで字のごとく、余った電気を売ることができる制度です。余剰買取制を利用できるのはソーラーパネルの総出力が10kW未満である場合です。
余剰電力を売るというのはどのようにするのでしょうか。
蓄電器が設置しない限り、太陽光発電で発電した電気は貯めておくことができません。発電したその瞬間に使われなかった分が、リアルタイムで売電されることになります。
使われなかった分は住宅の外の電線へと流れ、電力会社のものとして別の住宅へと供給されるのです。
余剰電力が住宅の外の電線に流れる前に計量され、売電額が収益として入ってきます。
余剰電力買取制の主な目的は節電です。
太陽光発電パネルを設置している家庭では、電気を使わなかった分だけ売電でき、収益になるため、結果的に節電ができます。
全量買取制
全量買取制とは、発電した電気を全量売ることです。
全量買取制を利用できるのは、ソーラーパネルの総出力量が10kW以上である場合です。
全量買取制は発電した電気を自分たちで使うことなく、すべて売電して収益に回すというもので、産業用途が前提となっています。
余剰電力買取制の目的が節電であるのに対し、全量買取制の目的は発電事業を後押しすることです。
売電価格は推移する?
太陽光発電の固定買取価格は、契約時の売電価格で決まります。売電価格の推移から、太陽光発電をいつ導入するとお得になるのか考えてみましょう。
固定価格買取制度導入後の売電価格
2012年7月1日よりスタートした固定価格買取制度。
固定価格買取制度とは固定価格で一定期間売電できるという制度です。経済産業省が主体となって、再生可能エネルギーの導入を進めるために設けられました。期間は先にご説明した、「余剰買取制」と「全量買取制」で異なっていて、余剰買取の場合は10年、全量買取の場合は20年となっています。
当時の売電価格は住宅用で1kWあたり48円。
2009年に契約を開始したグループは48円/kWという価格で10年間売電を続け、2019年に契約が切れるということです。
そこで、10年の売電契約が切れた後、どんな選択肢があるのかということに注目が集まっています。それを含めて2019年問題と呼んでいます。
また再び売電契約をしても良いのですが、10年前と比べて大きく変化したのは売電価格です。当時1kWあたり48円/kWだった売電価格は推移し、2017年の時点では28円/kWとなっています。
これまで48円で売電できていたものが、約半分の28円に落ちてしまったということです。
売電価格は今後も下がっていくことが予測されます。
そのことを考えると、契約が切れた時点ですぐに再契約を検討するべきです。
数年後に売電価格がさらに下がったら、「あのとき契約しておけばよかった」ということになります。
売電価格が今後も下がっていくことが予測される限り、早めに契約をした方が良いといえます。
これまでの売電価格の推移を見てみましょう。
全量買取制の売電価格の場合、2012年は40円、2013年は36円、2014年は32円、2015年は29円、2016年は24円、2017年は21円と下降していて、ほぼ直線的に下がっているのがわかります。
今後そのまま下がることが予測されるので、もっと下がってしまう前に、事業用なら20年間の売電契約をしておいた方が良いといえます。
なお、エリアによっては買取に制限がかかる可能性があるという点にも注意が必要です。2014年、太陽光発電が急速に普及したことで、九州電力が持つ接続可能量を超えてしまう事態が起こりました。そのため、必要に応じて電力会社が買取を拒否できるよう、出力制御機器の設置が進められているのです。とはいえ、家庭用として使われる10kW未満のシステムの場合は、ほとんど気にする必要はありません。
売電価格と導入費用は連動する
以上で述べたように、売電価格は年々下がっています。
太陽光発電システムの導入を考えるときに、売電価格はどうしてもチェックしたいポイントです。
ところで、売電価格は何に基づいて推移しているのでしょうか。
ひとつの要素として、太陽光発電システムの導入費用と連動しているといえます。
太陽光発電システムの価格の推移を見てみましょう。
2009年度は51.8万~63.9万円/kW、2010年度は49.6万~59.3万円/kW、2011年度は47.2万~54.3万円/kW、2012年度は44.7万~49.7万円/kWと順調に下がり、2017年には海外パネルを含んだ場合は30万~35万/kWという安さで購入できるまでになっています。
太陽光発電システムは、この8年間で16万円以上も安くなっているのです。以前と比べてそれだけ簡単に設置できるようになったため、売電価格を下げても普及を推し進めることができると考えられ、売電価格が下がっているのです。
売電価格が下がるのは残念ですが、太陽光発電システムが安く手に入るようになったのはうれしいことです。
これも、国によって太陽光発電の普及が推し進められたため、太陽光発電業界が活発になり、価格競争が起きたためです。
今こそ太陽光発電システムを購入するタイミングだと考えられます。
今後の売電価格はどうなる?
太陽光発電システムの導入をお考えなら、今後の売電価格がどうなるのが気になるところです。
何もしなくても売電によってお金が入ってくるのは確かに魅力的な話です。
しかし、売電価格はほぼ直線的に下がり続けている状態です。今後もさらに下がると考えられ、このままいけば、平均電力単価と同じくらいまで下がることが予測されます。
ただし、売電価格は今後も、太陽光発電設置者に一定の利益が出るように設定されるはずです。
売電価格が下がったとしても限界があり、太陽光発電の設置が損になるということにはならないということです。
買取期間終了後は売電価格が必ず下落する?
太陽光発電の10kW未満の固定価格買取制度の契約期間は10年になっています。
買取期間終了後の売電価格がどうなっているのか気になるところです。
ここまでで考えてきたように、売電価格が下落の一途をたどっていることを考えると、買取期間終了後は売電価格が必ず下落しているといえるでしょう。
今後、太陽光発電を導入するにあたって
売電価格が下落傾向にあることを考え、太陽光発電の将来が不安だという人もいるのではないでしょうか。確かに、今後売電価格はさらに下がっていくことが予測されます。
しかし、太陽光発電を導入するメリットは売電だけではない、ということを覚えておく必要があります。
自然エネルギーである太陽光発電システムを設置することで、自家発電して光熱費を削減できます。夜間の電気代も節約したいなら、蓄電機を購入し、日中に発電した電気を貯めておくという手もあります。今後太陽光発電を導入するなら、売電に重点を置くのではなく、光熱費の節約・削減に重点を置いてみましょう。
とはいっても、売電による収益を得ることはできるため、太陽光発電を導入するなら早めがいいでしょう。できるだけ早いうちに売電契約をすれば、それだけ売電による収益も期待できるはずです。
導入コストが下がっている今が買い
いかがでしたか?ここでは、売電価格が推移している理由について考えました。売電価格が下がっているため、太陽光発電のメリットは減っているように見えますが、同時にシステムの導入費用が安くなっています。ひと昔前よりも簡単に導入できるようになっているため、今が買い時だといえるでしょう。今ならまだ売電価格による収益も期待できます。
何よりも、太陽光発電で自家発電した電気を使えるのは、エコで魅力的です。太陽光発電システムをまだ導入されていないご家庭は、この機会に検討してみるのはいかがでしょうか。
・売電価格は固定買取制になっており、発電システムの規模によって余剰買取制度と全量買取制度がある
・売電価格は下落の一途をたどっているが、同時に太陽光発電システムの導入費用が安くなっている
・かつてより簡単に導入できる上、まだ売電価格による収益も期待できる
・今後の太陽光発電は、売電より蓄電による節約に重点が移ると見られる