環境に優しい再生可能エネルギーが注目され、太陽光発電の技術も常に進化を遂げています。
家庭や会社でも導入が増加しており、その時に「交換効率」という言葉を耳にする機会があるかもしれません。
交換効率は発電量を左右する重要な役割であり、太陽光発電ではこの交換効率の向上が課題とされています。
では、どのメーカーのソーラーパネルが最も効率がいいのか、交換効率の基本知識と一緒にご紹介していきます。
太陽光発電の交換効率とは
太陽光発電の交換効率は、太陽光を電気エネルギーに変化させる割合を示すものです。
ソーラーパネルに照射される太陽光エネルギーのすべてが電気に変わるわけではなく、そのうちの何%を電気へ変化できるのかをあらわしています。
一般的な太陽電池では20%程度のものが多く、5分の1程度にしか活用できていないため、交換効率が約50%の火力発電よりは劣ります。
しかし、火力発電に使われる石油や天然ガスなどの化石燃料には、原料が枯渇する問題や、CO2の排出による環境汚染への影響も不安視されています。
それに比べると太陽光発電は、太陽さえなくならなければエネルギー交換ができることから、環境に優しいクリーンエネルギーとして大いに期待されています。
交換効率の基礎知識
交換効率には「モジュール交換効率」と「セル交換効率」の2種類がありますが、それぞれの違いとは何なのでしょうか。
交換効率の基礎知識を見ていきましょう。
モジュール交換効率とセル交換効率の違い
モジュール交換効率は、ソーラーパネル(太陽電池モジュール)1枚あたりの効率を示す指数です。
一方、セル交換効率とは太陽電池セル1個あたりの効率を示す指数で、数値が25%に及ぶものもあります。
ソーラーパネルは、数十枚の太陽電池セルをつなぐ導線部分で電気抵抗などが発生してしまうため、10%~20%とセル交換効率よりも低くなりますが、太陽光発電の世界では、より現実的な数値を示す「モジュール交換効率」を交換効率とすることが一般的です。
モジュール交換効率は、ソーラーパネルの種類によっても数値は変わります。
ソーラーパネルの種類で普及率がもっとも高いものが「シリコン系太陽電池」です。
この種類には、セルが1つの結晶でできている「単結晶」と複数の結晶でできている「多結晶」の2種類があり、単結晶では15%~20%前後、多結晶では12%~17%程度の交換効率となります。
各メーカーによっても数値は変動します。
それぞれの計算式
モジュール交換効率とセル交換効率では、それぞれ計算式が異なります。
■モジュール交換効率の計算式
パネル公称最大出力(W)÷{パネル面積(㎡)×1000(W/㎡)}×100(%)
「1000」という数値は太陽光エネルギーの国際規格の条件です。
たとえば「最大出力:200W」で「ソーラーパネル面積:2㎡」だと仮定した場合を考えてみましょう。
200(W)÷{2(㎡)×1000(W/㎡)}×100(%)=10%
このケースでのモジュール交換効率は「10%」だということです。
■セル交換効率の計算式
パネル公称最大出力(W)÷{1セル全面積(㎡)×1パネルのセル数×1000}×100(%)
セル交換効率では、パネルのフレーム部分などを含む面積に関わらず、発電部分である「太陽電池セルの効率のみ」を算出するため、モジュール交換効率よりも高い数値が出るのです。
交換効率のメーカー比較ランキング
交換効率は設置するソーラーパネルによって変わりますが、メーカーによっても数値は異なります。
では、どのメーカーのソーラーパネルが最も交換効率が良いのでしょうか。
住宅用単結晶パネル
単結晶太陽電池モジュールは、シリコン系ソーラーパネルの1つで太陽電池セルを1つの結晶からつくりだしています。
太陽電池の中で最も交換効率が良いパネルといわれています。
■単結晶パネル|交換効率のメーカー比較ランキング
1位 東芝(サンパワー) SPR-250NE-WHT-J(出力250W/効率20.1%)
2位 シャープ NB-245AB(出力245W/効率19.7%)
3位 パナソニック HIT250α(出力250W/効率19.5%)
4位 シャープ NQ-220AE(出力220W/効率19.1%)
5位 パナソニック HIT240α(出力220W/効率18.7%)
トップは東芝ですが、1位と2位シャープのNB-245ABはアメリカに拠点を置くサンパワーの商品であり、住宅用では最高効率を誇るパネルです。
3位のパナソニックが販売しているヘテロ接合太陽電池であるHIT250αは受注生産の商品であるため、一般的に市場で注目されているのはHIT240αだといえます。
住宅用多結晶パネル
多結晶太陽電池モジュールは、太陽電池セル構造が複数の結晶で構成されており、不良のシリコンなどを再利用して製造されているため、単結晶よりもコストを下げて大量生産されています。
結晶の集まりで構成されているため、デメリットとしては単結晶シリコン型太陽電池モジュールよりも、発電量がやや落ちる点があげられます。
■多結晶パネル|交換効率のメーカー比較ランキング
1位 インリーソーラー YL280C-30b(出力210W/効率16.2%)
2位 東芝 TMX-205P-WHT-J(出力205W/効率15.8%)
3位 シャープ ND-175AC(出力175/効率15.2%)
4位 京セラ KJ200P-3CUCE(出力200W/効率15.1%)
5位 フジプレアム FMCT-215Y3(出力215W/効率14.7%)
多結晶パネルのメリットは、初期費用のコストダウンを狙える点です。
交換効率ではインリーソーラーの方が優れていますが、4位の京セラは多結晶パネルに特化しており、ラインナップが充実しています。
薄膜ソーラーパネル
薄膜ソーラーパネル(薄膜太陽電池)はシリコン系パネルの1種で、身近なものでは電卓や時計に内蔵されているパネルです。
従来の結晶シリコンよりも薄くて軽量であり、屋外用も増加しています。
■薄膜パネル|交換効率のメーカー比較ランキング
1位 ソーラーフロンティア SF170-S(出力170W/効率13.8%)
2位 ファーストソーラー FS-395(出力95W/効率13.2%)
3位 カネカ U-NB115(出力115W/効率8.8%)
トップは化合物CIS太陽電池を世に広げたソーラーフロンティアで、それとほぼ同等の効率を有するのが2位のファーストソーラーのパネルです。
一方、3位のカネカの薄膜シリコン太陽電池は、結晶シリコン太陽電池や化合物太陽電池に効率は劣るものの、安価な価格に注目が集まっています。
産業用ソーラーパネル
産業用ソーラーパネルは、ビルの屋上や沿岸部など住宅の屋根以外の設置場所に配慮した性能を持っていることが住宅用との大きな違いです。
■産業用パネル|交換効率のメーカー比較ランキング
1位 サンパワー E20/327(出力327W/効率20.1%)
2位 パナソニック 293A(出力293W/効率19.0%)
3位 長州産業 CS-284C31(出力284W/効率17.4%)
4位 サンテック STP270S-20/Wem(出力270W/効率16.6%)
5位 ジンコソーラー JKM270PP-60/多結晶(出力270W/効率16.5%)
5位 ハンファQセルズ Q.PLUS-G3 275/多結晶(出力275W/効率16.5%)
単結晶パネルだと交換効率20%を有するサンパワーが住宅同様にトップです。
住宅用では直接購入できませんが、産業用なら直接購入ができます。
一方、多結晶パネルだとジンコソーラーとハンファQセルズが同率で、効率性や性能の良さから注目されているメーカーです。
各メーカーは新素材でさらに上を目指す
各メーカーは交換効率の上昇を目指して開発を続け、太陽光発電が登場した当初よりも高性能なパネルが数々登場しています。
この項では、住宅用ソーラーパネルで上位をキープするシャープ・東芝・パナソニック、3社のソーラーパネルについてご紹介します。
シャープ
大手家電メーカー・シャープは、国内メーカーでも早い段階で太陽光発電の開発を始めています。
そんなシャープの主力が「ブラックソーラー」です。
ブラックソーラーは、表面の電極を省くことで太陽光エネルギーをより受け入れやすくしており、さらに電気を運ぶための銀配線幅を太くすることで「電流損失」を軽減することに成功しました。
また、発電ロスを抑えるために「再結合防止膜形成技術」を導入することで、発電能力を強化しています。
太陽光発電は天候が悪いと発電量も減ってしまいますが、接合型化合物太陽電池であるブラックソーラーでは、日射量が少ない場合でも出力低下を抑えて、より多くの発電量を確保する工夫がされています。
さらにシャープでは技術を推し進め、宇宙用太陽電池の開発にも取り組んでいます。
東芝
東芝は、交換効率20%台を誇るサンパワー社のOEM製品と、メーカー独自のソーラーパネルの双方を展開しています。
いずれもパネル表面の電極を裏面に設計することで、太陽光エネルギーを受け入れやすくして、交換効率を上げています。
太陽光の反射を防ぐためにARコートを採用し、セルの表面に反射防止膜を設けて、受け入れもさらに向上しています。
P型電極とN型電極を交互に配置した設計で電極の面積を増やし、送電と発電のロスを防ぐ工夫もされています。
パナソニック
国内メーカーでもパネルの性能が良いと評判のパナソニックの主力商品は「HITシリーズ」です。HITは単結晶シリコンと薄膜アモルファスシリコンのハイブリッド構造であるヘテロ接合型太陽電池で、高温に強い特性を持っています。
太陽光発電では、高温下で発電力が落ちるというデメリットがありましたが、HITはその影響を受けにくいパネルです。
また、1枚あたりの交換効率も良いため、少ないパネル数でも最適な発電ができます。
2017年4月にはパネル間を狭めたPS工法に対応したパネルも登場し、HITパネルが埋め込まれた屋根も登場しています。
メーカーの特徴と照らし合わせる
太陽光発電の性能は「交換効率」によってわかります。
しかし各メーカーでは、交換効率以外の部分でもしっかり工夫されているので、それぞれの環境・目的に合ったソーラーパネルを選ぶことが重要です。
初期費用や日射量・屋根の角度・劣化率なども含めて考慮し、複数の見積もりを算出することをおすすめします。
長期的な運用を考えて、慎重に計画すると良いでしょう。
今後も開発によって、さらなる優れたパネルの登場が期待できます。
交換効率が向上していく限り、太陽光発電の未来は明るいといえるのではないでしょうか。
- 太陽光発電の交換効率は電気エネルギーに変化した割合で15%~20%が主流
- パネルの種類によって交換効率も変動する
- モジュール交換効率はパネル1枚の効率数値、セル交換効率は太陽電池セル1個あたりの効率数値である
- 各メーカーでは様々な工夫がされた新ソーラーパネルがあるため、環境や目的にあったものを選ぶべき