太陽光発電と聞いて、おそらくほとんどの人は屋根の上にあるソーラーパネルの姿を思い浮かべるでしょうが、実はそれ以外に、産業用の太陽光発電事業の開発も進行しています。
それがメガソーラーと言われる大規模太陽光発電です。
メガソーラーの発展は2011年の東日本大震災における福島原子力発電事故で、改めて電気エネルギー、それも原子力電源に対するアンチとして自然エネルギー、クリーンエネルギーに関心が向くようになり、再生可能エネルギーが注目されるようになりました。
2012年から再生可能エネルギーに対して、固定価格買取制度(FIT)がスタートし、多くの企業がメガソーラー事業に参入しました。
百花繚乱のごとくメガソーラーが出来ている中で、ビジネスがどのように行われているのか、問題点を探ってみることにいたします。
メガソーラーとは
メガソーラーというのですから、当然、発電される電力の出力は1,000kw(1MW-メガワット)以上を指しています。
前述しましたが、再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まったことで、多くの企業が太陽光発電事業に乗り出し、電力会社に発電された電力を一定金額で売電することが出来るようになったことで、新規事業として捉えています。
火力発電所や原子力発電所のように、広大な土地の必要性はありませんが、それでも、1MWのメガソーラー場合、太陽光パネルの枚数が半端ではないので、2ヘクタール程度の敷地が必要とされています。
因みに、サッカーフィールドが約1ヘクタールなので、その倍が2ヘクタールということになります。
1MWの発電量はどれくらいあるのでしょうか。
もちろん、設置場所や日射量で違ってきますが、発電能力としては、おおよそ年間で100万kwhを超える発電量が期待できます。
この発電量は一般家庭の年間電力使用量を5,000kwhとした場合、200世帯分に相当します。
メガソーラーのメリットとは
メガソーラーのメリットとしてはどのようなものがあるのでしょうか。
メリットというからには、既存の発電システムにはない要素がなければなりません。
では、既存の発電システムにはどのような問題点があったのでしょうか。
既存の発電システムの問題点
- 環境にやさしくない
化石燃料は地球温暖化の元凶と言われている二酸化炭素を排出します。
そして、原子力は東日本大震災で経験した放射能問題が重く圧し掛かってきます。
つまり、環境にとっては最悪の発電システムということが出来ます。
- 電力を買い取ってもらえない
個人や企業が電力産業に参入するのは非常に困難で、お上から指定ではありませんが、日本全国10電力会社からの供給を受けています。
- 事故のリスクがある
先の原子力発電所の事故に象徴しているように、既存の発電システムは装置産業だけに、どこかで事故が起きる可能性があります。
- 燃料の海外依存度が大きい
火力発電所の燃料である化石燃料は90%以上を海外から調達していますし、核燃料にしてもしかりで、国内で調達できるものはありません。
メガソーラーのメリット
その、既存の発電システムの問題点を解消したのが、メガソーラーのメリットということになります。
では、それぞれについて見ていくことにいたしましょう。
- 環境にやさしい
国や自治体が補助金制度まで作って、太陽光発電設備の導入を促進してきたのは、環境負荷の大きい化石燃料や核燃料が主流の発電システムから、二酸化炭素の排出がない再生可能エネルギーを導入することで、少しでも環境にやさしいエネルギーの確保を目指したものと考えられます。
このままのペースで温室効果ガスの排出が続くと当然温暖化が進むわけで、水資源、農作物、生態系に影響が出ることが指摘されています。
それだけでなく、国家間の暴力的衝突までつながる可能性があることも指摘されています。
そういう意味では、二酸化炭素の排出を抑制することは現代人の責任と言わざるを得ませんが、それだけに、エネルギーに対する視線を化石燃料、核燃料から再生可能エネルギー、なかんづく太陽光発電は環境にやさしいエネルギー源としての役割を担っています。
- 電力の固定価格買取制度で電力を買い取ってもらえる
一般家庭用が自家需要を賄いつつ余剰電力を、固定価格買取制度によって売電するのに対して、メガソーラーでは、発電した電力の全てを売電することができることで、完全に電力の販売事業としての性格を有しています。
実際には、導入してから20年間はその年の売電価格を維持することができますので、多くの企業や団体が参入しています。
売電価格は、2017年では全量買取で21円/kwh(+税金)となっています。
因みに、固定価格買取制度が始まった2012年の全量買取の場合では40円/kwh(+税金)となっていましたので、それからすると19円/kwh下げられています。
2018年、2019年については、一般家庭用の場合は明示されていますが、メガソーラーについては、今のところ未定となっています。
- 事故のリスクが小さく、あったとしても被害範囲が狭い
一般家庭用と違って、メガソーラーは当然事業として展開するため、規模からいっても事故のリスクはついて回ります。
しかしながら、メガソーラーの場合は、燃料は使わないし、天災の事故も起こりにくいですし、仮に起きた場合でもかなり限定されていて、ソーラーパネルの破損ぐらいで、それ以上のものはないようです。
東日本大震災の例でもわかる通り、大規模なものであればあるほど事故が起きた際には、途轍もない事故に繋がる可能性があります。
- 燃料を海外に依存することがない
火力発電の原料は化石燃料(石油、石炭、天然ガス)ですが、そのほとんどは輸入に頼っています。
それらの価格支配力は日本にあるわけではないので、莫大な金額を支払うことで輸入しています。
仮に、石油や天然ガスが何かの理由で輸入出来なくなった場合、大変なことが起きます。
それに対して、太陽光発電の場合では物理的な燃料は必要としません。
無尽蔵にある太陽光を利用すればいいので、燃料費はかからないし、先に触れた二酸化炭素の問題もクリアできることになります。
燃料に対して、莫大な金額を使う必要もないし、全く心配することはありません。
- 遊休地の利用
先にも記した通り、1MWのメガソーラーを稼働させようとした場合、サッカー場が2つ分の2ヘクタールもの土地が必要になります。
このような土地を都会で手当てすることは、投資金額との兼ね合いからいってもほとんど不可能ですが、都会を離れたエリアには手つかずの土地があります。
例えば、工場の跡地や耕作していない農地、学校の跡地など、利用可能な遊んでいる土地がそれに当たります。
そのような土地の賃借料も、メガソーラー事業の推進のためには、大きな固定費になることから出来るだけ安価の方がいいわけで、土地所有者にもメリットがあるし、事業者にもメリットがあることになります。
メガソーラーのデメリットとは
メリットがあれば、当然、デメリットもあります。
- 初期費用の回収に問題が?
メガソーラーについては、一般家庭用の太陽光発電システムとは違って、全ての電力を買い取ってもらうことが前提になります。
その発想からすると、初期投資の回収は厳然として行わなければなりません。
メガソーラーが大規模になればなるほど、ちょっとした躓きは初期費用の回収に影響を及ぼすことになります。
例えば、設置場所の問題や、導入したシステム、中でもソーラーパネルの問題で見込みの発電量を確保できないことも起こり得ます。
これをなくすには、しっかりとしたシュミレーション(自前の土地か、賃貸の土地か。導入のkw単価、それに、売電による回収費用の償還スケジュール)をする必要があります。
特に、売電価格は低減化の方向に向かっていることからも、大切なポイントになります。
- 設置するための敷地のチェック
メガソーラーにおいては、2ヘクタールの敷地の手当てが必要になることは既に述べました。
特に、ソーラーパネルの数に比例して発電得ようが多くなるということは、それだけ、設置面積の拡大が条件となります。
つまり、敷地にかかる費用いかんでは、初期投資の回収に支障を来すことが起こり得るのです。
また、地盤強化のために費用が嵩むとか、日照に影響を与える樹木、中でも雑草が生い茂ることは、即発電量に関係しますので、除草や防草が必要になります。
場所によっては住民の生活に影響を及ぼす可能性があることから、除草剤をまくことが出来ないため、人手によって処理しなければならず、その分コストが発生することになります。
つまり、想定外の費用がかかることがあります。
また、大規模になればなるほど、売電に際して電力会社の送電網への接続問題が発生し、場合によっては、電柱の増設や、それに伴う設備や作業があることもあり、費用の発生を伴うことを覚悟しておく必要があります。
- メンテナンス費用が発生
機器類については全てに言えるのですが、経年劣化することを前提にしなければいけません。
メガソーラーも屋外に設置されていることから、定期的なメンテナンスが必要になります。
それをするかしないかで、直メガソーラーの発電効率に影響が出ます。
そしてそれを怠った場合、正常発電の寿命が短縮されることで売電にも支障を来たし、20年間の売電計画にも狂いが生じ、回収スケジュールが成立しない可能性が出てきます。
したがって、事前に20年間、あるいはそれ以上を視野に置いて、メンテナンスにかかる経費を見込んでおくことが大事になります。
メガソーラー 都道府県 ランキング
メガソーラーの都道府県別のランキング10位までは次のようになっています。
1位 福島県 3,427,526kW
2位 宮城県 2,358,444kW
3位 鹿児島県 2,346,687kW
4位 茨城県 2,319,820kW
5位 北海道 2,088,308kW
6位 熊本県 1,902,093kW
7位 栃木県 1,763,542kW
8位 千葉県 1,744,210kW
9位 大分県 1,522,978kW
10位 宮崎県 1,342,528kW
参考:経済産業省 「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」
平成24年7月1日から平成26年3月末までに認定された設備の容量
メガソーラービジネスを徹底解説!
再生可能エネルギーの固定価格買取制度は、2011年の東日本大震災の翌年、2012年7月1日から始まりました。
メガソーラービジネスも、その時からスタートしたのです。
つまり、メガソーラーで発電した電力の全てを、向こう20年間にわたって、その時の固定価格で電力会社が購入する仕組みが出来上がったことで、メガソーラービジネスが成立したというわけです。
では、実際にどのようにビジネスが行われているのかを見て行きます。
メガソーラービジネスとは
発電規模1000kw―1MWを超える大規模太陽光発電所のことを、メガソーラーと呼んでいます。
ソーラーパネルの設置ができる敷地があれば、固定価格買取制度のスタートと相俟って事業性が認識され、メガソーラービジネスとして成り立つようになっています。
電力会社が、20年間一定金額で買い取ってくれることが明らかになった段階で、企業や自治体の参入が目立つようになってきたのです。
そのことは、ソーラービジネスの可能性を示すことになり、例えば、遊休地を有効利用することで、それがビジネスに直結することが明らかになると、参入する企業が増えてきました。
メガソーラーがビジネスとして成功するかどうかの1つに、システムへの初期投資のコントロールで、いかに低く抑えるかということがあります。
そして、もう1つが敷地の問題です。
特に、敷地については、自己の土地なのか、賃貸なのかによってシュミレーションがまったく異なってきます。
例を挙げると、1MWのメガソーラーを1kwあたり25万円で建設すると、それだけで、2億5,000万円になります。
そして、1kwあたりの発電量を年間で1100kwhとした場合に、2017年の全量買い取り金額21円/kwhで計算すると、
1000kw×1100kwh×21円×20年=462,000,000円
となります。
単純計算での収益は
462,000,000円-250,000,000円=212,000,000円
となります。
したがって、一年では約1,000万円の収益が確保できます。
土地を賃貸にした場合では、
仮に、2ヘクタール(20,000㎡)を、年間1㎡あたり200円で借りたとすると、その賃貸料は、
20,000㎡×200円×20年=80,000,000円
となり、最終的には、
462,000,000円-250,000,000円-80,000,000円=132,000,000円
となって、一年当たりの収益は660万円となります。
こうしてメガソーラービジネスを考えてみますと、単純計算でのシュミレーションでは、土地が自己で用意できるか、できないかによって大きく収益構造が変わってきます。
実際に、メガソーラービジネスとして参入したのはいいのですが、数年経ってみて、どうもビジネスが思うようにいかないとする例が出てきているそうです。
投資先としてのメガソーラービジネス
メガソーラービジネスが導入されて電力の売電が始まると、新たな投資先としてクローズアップされて、注目を集めています。
2012年当初にファンドが作られ40円/kwhでの売電で契約している場合では、不動産投資や株と比較して、投資した分はしっかり戻ってくるので、投資のしがいがありましたが、売電価格が下がり始めると、必ずしもそうはいかないことは前項のとおりですので、慎重な対応が求められます。
メガソーラービジネスを成功させるポイント
メガソーラービジネスが成功するポイントは何処にあるのでしょうか。
まず前提として次の項目を考える必要があります。
- 固定価格買取制度での買取り金額が下がっていくことの覚悟
- メガソーラー導入時のコストのコントロール
- 発電効率がいいソーラーパネルの選択
- できるだけ自前の土地を確保
- メガソーラーの維持費の試算
- 蓄電池設備の準備
- 長期計画の立案
その上で、日あたりのいい場所、季節の日あたりの変化、繁茂した樹木や雑草、落ち葉の整理、雪害などにも注意を向けることもポイントになります。
安定した発電量を確保できるように、ソーラーパネルの質にも拘りを持ちたいですね。
そして、先のメガソーラービジネスでは単純計算でしたが、実は、維持管理に費用や減価償却、設備の管理なども含めて、竣工後もしっかりと長期管理ができることがソーラービジネス成功に対してのポイントになります。
メガソーラービジネスの問題点とは
政府が策定しているエネルギー基本計画では、望ましい電源の組み合わせということでエネルギーミックス政策を打ち出しています。
その中で、再生可能エネルギーの比率12%(2014度)から、22~24%(2030年)へ増やす目標を立てています。
それを促進するために、これまでのFIT制度に代わって「新FIT制度」が2017年4月1日からスタートしています。
このことは、少なくとも欧米諸国並みの再生可能エネルギーの比率の実現と、二酸化炭素排出の削減意味合いを濃くしているようです。
当然、太陽光発電システムも、これまで以上にその役割を担うことになりますが、その中でメガソーラー市場は、縮小傾向を見せている500kw以下の分野に対して、比較的堅調に推移しているとされています。
実際に、数字的な背景からもそれが読み取れるようで、JPEA(太陽光発電協会)によると、2015年対2016年のパネル容量の増減は、住宅用が1.5GW→1.1GW、(10KW~500KW)では、2GW→1.1GWに落ちているのに対して、メガソーラーは1.5GWを保持していることが指摘されています。
2017年以降2020年まではこの傾向は続きそうで、現実にメガソーラーの施工業者、部材業者の受注残もあり、そのことからも堅調に進むと見られています。
そこで、メガソーラービジネスにも影響がある、新FITでの売電価格の目標値を見て行きますと、2020年では、14円/kwh、2030年で7円/kwhを設定する見方があり、技術イノベーションや発電事業者の一層の努力、コストカットを期待しようとしています。
このような背景からすると、メガソーラービジネスの短期、中期の見通しは、デメリット案件をいかにクリアしていくかによって、ある程度の方針を立てることが出来そうです。
メガソーラービジネスは、再生可能エネルギーの中のエースビジネス
2030年までの間に、再生可能エネルギーを22~24%に拡大しようとする国の目標がある中で、再生可能エネルギーを代表する分野が太陽光発電で、特に、メガソーラーに期待するウエートは非常に高くなっています。
例えば、1500ボルトの直流回路の問題化があります。
というのも、現在のメガソーラーは1000ボルトを主に使っていますが、次世代のシステムとして高効率化、建設コストの下げる方向性が求められ、直流1500ボルトのシステム構築が注目されています。
1500ボルトでは1000ボルトに比較すると、建設コストが削減できるとされています。
例えば、設備全体の効率化を高め、機器類の集約化をはじめ、工事の段階でも工数の削減が可能になることなどが挙げられています。
また、ソーラーパネルの技術革新も進み、ペロブスカイト太陽電池の研究が現実的なものになれば、ソーラーパネルとしては、究極のパネルが出来上がることになり、発電コストの削減化が実現できることになります。
となれば、ソーラービジネスにも革命が起きることになります。
- メガソーラービジネスは再生可能エネルギービジネスのエース
- メガソーラービジネスは、固定価格買取制度次第でいかようにも変わる
- メガソーラービジネスは、エネルギーミックスを変える
- メガソーラービジネスは、環境にやさしく、燃料を海外に依存しないし、遊休地が利用できる
- メガソーラービジネスは、長期的視点での管理が必要
- メガソーラービジネスは、初期投資の削減と固定費の見直し(土地の賃貸)
- メガソーラービジネスの成功のポイントは予見の確かさ
- メガソーラービジネスの問題点はデメリットのクリア