市場拡大が見込まれていた太陽光発電ですが、最近関連事業者の倒産が相次いでいるというニュースが報じられました。
再生可能エネルギーや自然エネルギーへの注目が集まったことや、電力自由化をきっかけとして一大ブームとなった感もある太陽光発電。一般家庭の太陽光システムの何千倍もの発電力を持つメガソーラーというものも登場しています。
太陽光をエネルギー源としたソーラーエネルギーは、基本的に場所を選ばず設置できるというのも魅力です。
しかし、近年の電力買取価格の下降などにより、必ずしも順風満帆とはいえない状況となりつつあります。
もしも事業者が倒産したら、保証制度はどうなってしまうのでしょうか?また、そういった不測の事態に備えておく方法はあるのでしょうか?
万が一の時にも動じないために工夫いておくべき点を解説します。
太陽光発電事業者の倒産が相次いでいる?
電力の自由化により、日本における太陽光発電の導入量は大幅に伸びてきました。
この背景には、2012年の7月から始まった固定価格買い取り制度があります。
この時期、安易に太陽光発電市場に参入した販売店や業者が、ここ4年間の買取価格の連続下落による販売台数の伸び悩みに耐え切れず倒産という事態に追い込まれています。
太陽光発電事業者だけでなく販売店も
2016年1月~12月の太陽光関連事業者の倒産は65件にものぼり、前年比20.4 %という結果になったことが東京商工サーチの調べにより判明しました。同調査は2000年以降毎年行われてきましたが、これまでのなかで最も多い倒産件数になっています。
上半期だけで前年同期比20.0%増の30件となり、2014年の年間件数を上回るという事態に及びましたが、下半期はさらにそれを上回る前年同期比20.6%増の35件でした。
なかでも12月は単月最多の10件をマークし、太陽光関連事業者の経営環境が一気に悪化していることが伺えます。
この傾向は太陽光事業者だけではなく販売店にも及んでいます。2010年頃は売上を順調に伸ばす販売店も少なくありませんでしたが、2016年時点ではかつての勢いを継続している販売店はごくわずかになっています。
メンテナンス等を販売店に一任している人も少なくないなか、不安な状況が続いているといわざるをえません。
一体なぜ、このような状況になってしまったのでしょうか。
倒産の原因は?
相次ぐ倒産の背景には、太陽光発電による電気の買取価格が年々下がっていることが一つの大きな原因となっていることは間違いありません。
太陽光発電事業者が電気の高額買取を期待して投じた多額の設備投資が、買取価格の低下によって回収が難しくなってしまったのです。
東京商工サーチは「一部事業者が現実性のない安易な事業計画で参入した結果、業績の見込み違いによって倒産するケースが増えている」と、警鐘を鳴らしています。
2016年の太陽光発電事業者の負債総額は1億円以上5億円未満が14件で、これは実に全体の45%です。
一般的な企業の負債額平均が1,000万円~5,000万円未満であることを鑑みると、太陽光発電関連事業というのは負債額が大きくなる可能性があることがわかります。
販売店倒産という事態に備えておくべきもの
もし、販売店が倒産してしまったら、速やかに次のような点を確認するようにしましょう。
保証申請の有無
どのような太陽光発電でも、基本的にはメーカー保証がついてきます。だいたいの場合において1~30年の保証があります。
ただし、保証を受けるには設置後数ヶ月以内に申請を行うことが義務付けられている場合もあるので注意しましょう。
申請方法はメーカー毎に異なるので、まずはシリアルナンバー、製造番号などを入手するようにしてください。
設備認定IDとパスワードの入手
売電をするには経済産業省から設備認定を受けなければいけません。
設備認定は業者が申請を代行しているケースが多々あります。
ところが、業者が倒産してしまうと、これがわからなくなってしまうことがあり、大変不便です。
契約時や完工時に業者から渡される書類に設備認定IDとパスワードが記載されているはずです。なくさないように保管しましょう。
配線図を探す
太陽光発電システムの回路構成が記載されている配線図がないと、電気的なメンテナンスをする際に不都合が発生します。
配線図は、どのソーラーパネル(モジュール)がどのパワコンのどこの回路に接続されているかがわかる重要な図面です。不具合発生時の重要参考資料になるので、必ず手元に置いておくようにしてください。
もし見当たらない場合には、見積書、契約書類などに同封されていることが多いので、再度確認してみましょう。
他の販売店に相談する
メンテナンスフリーともいわれる太陽光発電ですが、実際のところ定期点検は必ず必要です。設置を行った販売店が倒産したからといってメンテナンスをせずに運用するのは大変危険といえるでしょう。
車同様、太陽光発電も購入先以外でもメンテナンスを受けることは可能なので、他の販売店に相談するという方法もあります。
倒産していなくても対策すべき
どんなに営業が順調に見える販売店でも、いつ何が起きるかはわかりません。まして、太陽光発電は10年、20年という長いスパンで使用する設備です。
販売業者が倒産していなかったとしても、何が起きても問題ないように、常日頃から準備をしておきましょう。
まずは、万が一、販売店が倒産した時のために、保証申請を確認し、設備認定のIDとパスワード、配線図などを一つのファイルにまとめてください。人任せにせずに自分で管理することが何よりも大事です。
倒産しなかったとしても、長い年月の間にオーナーが変わってしまうというようなことも多々あります。太陽光発電システムの譲渡、販売、相続といった問題が発生した時にあわてないように、必要書類をきちんとまとめておくようにしましょう。
太陽光発電導入前にできること
太陽光発電はおよそ20年間という長期にわたって安定した利益が期待できます。反面、現在でもさまざまなトラブルが報告されており、今後20年の間にどう対応してもらえるのかという不安の声があるのも事実です。
何かトラブルがあればまずは販売店に相談するという人がほとんどでしょう。しかし、20年後もその販売店が存在しているかどうかは賭けともいえます。
太陽光発電導入前に、20年後も繁栄していそうな事業者、販売店をしっかりと見極めることが大事になってくるのです。
太陽光発電事業者その他の事業内容を確認する
最近では誰でもインターネットで気軽に情報を検索できます。
まずは施工会社、販売店などの名前で検索をしてみましょう。ホームページの会社概要を読んでみると、おおよその将来像は想像できるものです。
また、ほとんどの会社のホームページには事業内容が掲載されています。注目したいのは、その会社が太陽光発電以外に、どのような事業を行っているのかという点です。
2012年7月にスタートした固定価格買取制度によって、太陽光発電に参入してきた事業者は少なくありません。しかし、今後は売電価格の値下げ傾向が続くため、爆発的な成長は見込めないというのが現状です。
なかでも先止まりが不安視されているのが、太陽光発電事業しか行っていない会社です。行き詰った時に太陽光発電から事業撤退してしまう可能性は大いにあります。
一方、建設事業なども行っていて、太陽光発電はあくまでも事業の一つの柱でしかない会社は安心といえるでしょう。なぜならば、他の事業での収益を回すなどして太陽光発電事業を維持できる可能性もあるからです。
それでも現在は太陽光発電の需要はけっして小さくはありません。太陽光発電設備の設置だけを事業としていたとしても、その売上だけで営業していくこともできるでしょう。
しかし、来年も再来年も売上を維持できるかというと、それは業界全体の動向としても難しいといわざるをえません。
単に「太陽光発電が儲かるらしい」と軽い気持ちで参入してきた太陽光発電事業者は事業撤収を始めているというのが現状です。一時のブームではなく、太陽光発電に対してどれだけ真剣に取り組んでいるのか企業の姿勢が問われています。
会社の設立年月日を確認する
もちろん、太陽光発電を専門としながらも成長が見込める優良企業もあります。
たとえば2012年7月よりはるか昔から参入している企業ならば、一時のブームに乗っただけの企業ではないかもしれません。太陽光発電に特化した会社ならではの専門性を有し、今後の成長が期待できる可能性もあります。
とはいえ、太陽光発電以外の事業をしていたとしても、倒産リスクがゼロということはありません。いずれにせよ、見極めは慎重に行うようにしなければいけないといえるでしょう。
また、不測の事態が起きたとしても対処できるように備えておくことも大事です。
太陽光発電事業をするときはもしもの倒産に備えよう
太陽光発電のスペシャリスト「ソーラーマニア」や、太陽光発電と農業を掛け合わせた「ソーラーシェアリング」など、太陽光発電を取り巻く環境は日々進化しています。
太陽光発電を始めようという時、業者選びというのは非常に大切です。業者の良し悪しで成否が決まるといっても過言ではありません。
設置後のトラブルのほとんどは工事の問題ともいわれていますし、最悪の場合、設置後連絡がとれなくなるケースさえあるといいます。もしもの倒産に備えておくとよいでしょう。
・安易に参入してきた業者・販売店が倒産
・設備認定ID、パスワード、配線図を手元に置いておく
・メンテナンスを相談できる他の販売店を探しておく
・太陽光発電を導入する前に、事業者や販売店の事業内容を十分確認する