電気の買取価格は太陽光発電の利益の大きさを左右する重要な要素です。
太陽光発電の導入をご検討されている方なら「発電したものをどれくらいの価格で売れるのか?」ということは気になるところでしょう。
太陽光発電で生産した電気の買取価格は常に一定ではなく、実は2017年にも引き下げが行われたばかりです。
もし太陽光発電を導入し、売電利益を上げたい場合にはこうした制度の改正情報をこまめにチェックする必要があります。
ここでは、今後の買取価格はどうなっていくのか、売電収入を得るためにはどのようなライフスタイルが適しているのかなど、これから太陽光発電の導入を考えている方にとって気になるポイントを整理してご紹介します。
太陽光発電の買取価格について
太陽光発電は、発電した電気を電力会社に買い取ってもらうことで利益を上げることができるシステムです。
つまり、電力会社に買い取ってもらう際の「単価=買取価格」が利益を大きく左右することになります。
買取価格は「固定価格買取制度」という制度によって定められており、毎年買取価格も変動するので注意が必要です。それでは「固定価格買取制度」のチェックポイントを詳しく見ていきましょう。
「固定価格買取制度」とは
「固定価格買取制度」とは、太陽光発電・風力発電などで生産された電気を国が定めた「固定価格」で買い取ってもらえることを保証する制度です。
火力発電や原子力発電といった旧来の発電法よりも、太陽光発電・風力発電などの再生可能エネルギーによる発電の方が地球環境への悪影響を少なく抑えて発電できます。
そこで現在では世界各国において、このようにクリーンな発電法を普及促進していく流れが生まれています。
しかし再生可能エネルギーは発電コストが高い傾向にあり、開発のためにかかるコストも高い傾向にあります。
特に太陽光発電においては、太陽電池モジュールなどの設備における技術革新がなかなか進んでいません。
太陽光発電・風力発電で作られた電気は地球環境に優しい発電方法でありながら、今のところ自由競争では火力発電や原子力発電などの大規模で安価な発電方式に勝つことができずにいます。
再生可能エネルギーの健全な成長を保護し、また発電設備をより容易に導入できるようにするため「固定価格買取制度」が制定されました。
つまり「固定価格買取制度」は、地球環境保全のために国家主導で太陽光発電・風力発電などのクリーンエネルギーの普及を促進するための制度なのです。
「固定価格買取制度」は毎年変更され、それに伴い売電価格も変動しています。
また、太陽光発電を導入する「設備申請」をした年の固定価格を基準に電力の単価が決定し、一度決まった単価は10年または20年の間継続して適用されます。
なお、適用される期間が10年なのか、20年なのかは設置量が10kW以上かどうかの導入規模によって異なります。
「余剰電力買取制度」とは
一般的に家庭用として導入した太陽光発電で生産された電力は、「余剰買取」方式で買取が行われます。
生産した電力のうち、一部はその建物内で消費し余った分を電力会社に売電するという方式です。
「余剰買取」の場合、家庭内で節電すればするほど売電に回せる電力が増え利益が出るため、個人レベルでの節電効果も期待できるのが魅力です。
「全量買取」では、太陽光発電でできた電力のすべてを電力会社に買い取ってもらえます。
しかし申請する設備の規模に10kW以上という制限があり、一般家庭の太陽光発電設備ではあまり対象になることはありません。
主に産業用として設定されている制度です。
【2017年】経済産業省が発表した買取価格の引き下げ
太陽光発電の買取価格は毎年改定されています。2016年度の1kWあたりの買取価格は、余剰売電の場合31円~33円(10年間固定)、全量売電の場合24円(20年間固定)でした。
2017年4月1日からこの価格は改定され、設置量10kW未満の場合は28円~30円(10年間固定)、10kW以上の場合は21円(20年間固定)と一律3円ずつの引き下げとなりました。
買取価格は余剰売電・全量売電ともに2012年から毎年数円ずつ下がり続けています。
毎年の変動はほんの数円とはいえ、積もり積もっていけば大きな額となるでしょう。
少しでも単価の高い買取価格で設備申請を終えていれば、今後10年間もの間有利な単価で売電を続けることができます。
太陽光発電設備の導入の際には申請のタイミングに十分気をつける必要があるということです。
買取価格が引き下げられる理由
そもそも「買取価格はなぜ年々引き下げられていくの?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
前述の通り「固定価格買取制度」は地球環境保護のもと、再生可能エネルギーの電力を高い価格で買い取るシステムです。
この高い買取価格は最終的に電力の消費者、つまり私たち国民が電気代の一部として負担しています。
電気代の領収書をよく見ると「太陽光発電促進付加金」や「再生可能エネルギー発電促進賦課金」といった名目の費用が徴収されていることがわかります。
国民の生活に金銭的負担がかかっているため、「固定価格買取制度」をいつまでも高い単価で維持し続けることはできません。
このような事情が、毎年徐々に再生可能エネルギー発電の買取単価が引き下げられることの一因となっています。
補助金はどうなる?
太陽光発電の導入時に考慮すべきなのは「売電単価」だけではありません。
国や地方自治体から補助金が受けられるかどうかも重要な問題です。
2013年度までは国による補助金が受けられたのですが、現在は募集をストップしてしまいました。
太陽光発電設備への補助金は普及拡大を目的としており、その役割を達成したとみなされたといえます。
一部の都道府県や市町村など、現在でも補助金を出している地方自治体は存在しますが、いずれも募集がストップとなる可能性は高いといえます。
補助金を受給する計画を立てる場合は、補助金制度の有効期限に注意しておく必要があるでしょう。
地方自治体の補助金の注意点
新たに太陽光発電設備を導入し、地方自治体の補助金へ応募する際は、導入する設備が補助金を受けられる要件を満たしているかをよく確認しておくことが大切です。
一部では、施工業者が「補助金が受けられるので格安で施工できます」などと勧誘しておきながら、実際には知識不足のために補助金の対象外の施工を行って補助金が受けられないといったトラブル事例が報告されています。
補助金の受給要件については業者任せにせず、自分でも最新事情をリサーチして予備知識をつけておくとよいでしょう。
今後も売電価格は下がっていく?
「固定価格買取制度」の実施以来、ほぼ毎年電気の買取価格は下落し続けています。
この下落傾向は今後も変わらないでしょう。それは国民への負担金以外にも2つの理由があげられます。
1つ目の理由は、先行の太陽光発電施工者との公平性を保つためです。
技術の進歩や安価な海外産ソーラーパネルの市場参入により、太陽光発電設備の導入コストは10年前に比べて約半額にまで縮小されています。
安い費用で設備を導入できる分、売電のメリットも低く抑えておくことで、先に高い費用で太陽光発電を導入した人たちとの間でバランスを保っているのです。
2つ目の理由は、新規参入者の買い控えを防止するためです。
技術革新により導入コストが年々安くなっていくと、導入検討者は「もう少しコストが安くなるまで待とう」と考えます。
年々買取価格を下げることで早期参入のメリットを持たせて、太陽光発電の普及促進を図っています。
この傾向は今後も変化することはないでしょう。
買取価格は来年度以降も下落していくと予想されます。
太陽光システム導入で売電収入を得られる家庭とは?
太陽光システムの導入を検討するならば、実際のところどれほどの利益が見込めるのかは当然気になるところです。
しかし実は売電によって利益が得られるかどうかは、ライフスタイルと設置条件でほぼ決まっています。
太陽光発電は昼間の間に発電して余剰電力を販売するしくみですから、昼間に使う電力量が少なければ少ないほど有利になるからです。
また、発電効率の良い大きな屋根を持っていることも有利な条件となります。
また、ソーラーフロンティアや京セラ製太陽電池モジュールなど、太陽光パネルメーカーによっても発電効率は異なります。
太陽電池セルをうまく屋根に組み込むことで、より発電量を増すことも出来ますから設置枚数の想定も大切なポイントです。
大きな屋根のある家で共働きの家庭であれば、より大きな売電収入が期待できますから是非実践してみてください。
逆にメリットがない家庭
売電収入のメリットが得られないのは、発電効率が悪く消費電力量の多い家庭です。
具体的には、ソーラーパネルが設置できる屋根が小さく、しかも日中に人がいて電力をたくさん消費しているような家庭が該当します。
このような家庭は、残念ながら太陽光発電で売電収入を得るにはあまり向いていないといえます。
しかし土地が余っている場合、または太陽光発電投資を行うことでメリットが生じる可能性は残されています。
農地や空き地だった場所に産業用太陽電池モジュールを導入して運用すれば、住宅用よりも高い売電収入を得ることができます。
また、メガソーラー事業に投資することで安定した収入を得ることも可能です。
いずれの場合も、雨や雪など天候に左右されるリスクを考慮したうえで検討する必要があります。
設置場所の見学会報告を確認したり、実際に開催報告の資料をもらって現地に足を運んでみることも出来るようですから、興味のある方は利用してみてください。
最後に
今回の記事では、太陽光発電を上手に利用するうえで必須知識ともいえる最新動向だけでなく、導入の際の補助金や今後の売電価格の動向までを紹介してきました。
太陽光発電を推進するPVTEC技術交流会の分科会活動報告を見ても、今後も導入費用が徐々に下がりつつ買取価格も下落していく傾向は続くと考えられます。
一度、技術交流会報告に目を通してから導入を考えてみても良いかもしれません。
しかし屋根が大きい家に住んでいる人や日中に在宅者がいないような家にとって、太陽光発電を導入するメリットは大きいといえます。
今年2017年は改正FIT法が制定され、手続きや義務が新たに変わりました。
こうした条件で導入を検討している方は、早い段階で太陽光発電を導入することをおすすめします。
- 太陽光発電による電力は、国の制度によって買取価格が決まる
- 「固定価格買取制度」は一度決まった価格が一定期間変更されない制度
- 補助金を申請する場合は業者の甘言に注意
- 太陽光発電を導入するなら、少しでも有利な買取単価であるうちに導入するのがおすすめ