太陽光発電は、電気代の節約になり、地球環境の保護にもつながる画期的なエネルギー供給法です。
昨今では省エネブームやエコ意識の高まりから、太陽光発電事業者だけでなく一般のご家庭でもソーラーシステムを取り入れるケースが増えてきました。
しかしながら、個人がご自宅で太陽光発電設備を導入する場合には、悪質業者との契約によるトラブルや、反射光によるご近所の方とのトラブルなど、数々のトラブル事例が報告されているのも事実です。
太陽光発電の導入を検討されているならば、どのようなトラブルが起こりうるのか、トラブルを防ぐための対処法などについて、しっかりと事前知識を仕入れておくことが転ばぬ先の杖になります。
太陽光発電のトラブルの実態とは
電気料金の高騰や電力不足にも柔軟に対応でき、毎日の電気代の節約も見込める太陽光発電。
数々のメリットに惹かれて太陽光発電を導入される個人のご家庭は年々増加の傾向にあります。
ところが一方で、太陽光発電の契約、設置後のメンテナンスや使用にまつわるトラブルも後を絶ちません。
トラブルに見舞われないように、どのようなトラブルが起こるのかをきちんと把握しておきましょう。
トラブル相談件数
さまざまなトラブルの相談を受け付けている国民生活センターの2011年から2015年までの記録によると、太陽光発電のトラブルの年間相談件数は2011年の3935件から上昇を続け、2013年の4747件をピークとして若干の減少を見せ、2015年には3364件に落ち着いています。
件数は減っていますが、まだまだトラブルが多発している状態と言えます。
またトラブルの内容を見ると、毎年全体件数のおよそ6割から7割を訪問販売の太陽光発電業者とのトラブルが占めている点にも注意が必要です。
慎重に検討しないままに勢いで契約してしまい、あとから不信感を抱いてクーリングオフを申し込みたいという内容の相談が毎年かなりの数にのぼります。
この結果をふまえれば、訪問販売での太陽光発電契約には一層慎重になるべきと言えるでしょう。
契約前のトラブル7選
太陽光発電のトラブルはさまざまなケースが存在しています。
契約前の段階で、トラブルになりそうかどうかを判断する際のポイントとして、代表的な7つの例をご紹介します。
① 「指定の業者」「推奨の業者」とうたっている
太陽光発電業者が自らの会社のことを「〇〇県指定の業者」や「産総研推奨の業者」、「大手ソーラーパネルメーカー指定の工務店」などとうたっているケースです。
自社が実績多数で安全な業者であるかのように見せかけるための文言ですが、実体を伴っていない場合が多々あります。
都道府県や大手ソーラーパネルメーカーが太陽光発電業者を指定したり推奨したりというケースはまれなため、こういった文言はうのみにせずによく確認しなければなりません。
② 「モニター割引」をすすめられる
モニター登録と引き換えに大幅な割引を提示されるケースです。
「この〇〇地域では1件だけのご家庭だけにモニターをお願いする予定で、今契約していただければモニターになって割引を受けられます」などと契約をあおってくることがあります。
この場合、提示される金額はもともと相場より大幅に高い金額であり、安易に割引に飛びついてしまうと結果的に損をすることになります。
複数業者に相見積もりを取るなどして、本当にお得な料金で施工してもらえるのかを確かめる必要があります。
③ 「今すぐ契約しろ」と迫られる
「今日契約しなければ格安割引プランでの案内が出来ない」「今すぐ契約してくれれば〇〇円でできる」などと言って急かし、消費者によく吟味するための時間を与えないままに契約させる手口です。
悪徳訪問販売では昔から後を絶たない手法ですが、残念ながら太陽光発電でもこういった業者が存在しているようです。
④ 高額な見積もりを出してくる
消費者が相場をよく知らないことにつけこみ、ほかの業者に比べて異様に高額な見積もりを出してくる業者です。
契約し、施工も済んでしまった後で、実はとんでもない高額で契約を結ばされていた、と判明するケースがあります。
後の祭りとならないよう、不安な場合は複数業者で相見積もりを取りましょう。
⑤ 「補助金が出る」と言われる
地方自治体からの補助金が受けられるので初期費用が非常に安く済むと勧誘されるケースがあります。
確かに地方自治体は太陽光発電に補助金を出していますが、全ての自治体で適用になるわけではなく、その上補助金受給のためには設備規模・施工期間などさまざまな細かい条件があります。
不親切な業者はそのような条件をきちんと調べずに「補助金が出る」と言うことが多いため、あてにせずご自分でしっかりと事前調査を行うことが大切です。
⑥ 「メンテナンス不要」とうたっている
太陽光発電は修理交換などのメンテナンスが一切不要で、一度設置すればずっと使用できると説明する業者があります。
太陽光発電設備は、継続して使用すればしだいに消耗し、サビや劣化が起き、やがて修理や交換が必要となる時期を迎えます。
「メンテナンスが必要ない」ということはありません。
設置システムをしっかりと吟味しましょう。
⑦ 「費用ゼロで運営できる」と説明される
設備投資の費用が全額売電費用でまかなえると説明されるケースです。
確かに、初期投資費用をローンで分割払いにして、その一部を売電利益でまかなうことは可能です。
しかし、家庭用太陽光発電設備の発電量には限界があるため、売電益で月額の初期費用の支払いを全てまかなえるという試算には疑問が残ります。
実際の支払いの段階になって「話が違う」となっても、すでに契約から時間が経ち、施工も完了しているため後の祭りとなる場合があります。
契約後のトラブル5選
一方、契約後に発生しがちな太陽光発電のトラブルには、以下のようなものがあります。
① 雨漏りがする
ソーラーパネルの設置時、屋根の構造を傷つけると後々になって雨漏りを起こしてしまうことがあります。
経験豊富な業者であれば屋根の構造をよく熟知しており、こういったミスも少ない傾向にありますので、業者の選択の際は値段だけに惹かれることなく、施工実績数や知名度もよく確認すべきです。
② パネルメーカーの保証が受けられない
工事業者は、「設置後の不具合はすべてパネルメーカーの保証が適用されるので安心です」と説明します。
しかし実際には、パネルメーカーによる保証には設置や使用に関して細かな条件が設定されており、工事業者がいい加減な方法で工事をしていると保証が全く受けられないケースもあります。
③ 予定していた発電量にならない
多くの業者では、契約前のシミュレーション段階では想定発電量をひかえめに見積もるので、実際に使用し始めるとシミュレーションよりも発電量が多かった、と感じる利用者の方が多くなります。
想定していた発電量よりも実際の発電量が大幅に少ない場合、そもそもシミュレーションの発電量が嘘であったか、工事に重大なミスが隠れているかのどちらかを疑うべきです。
④ メンテナンス費用がかかりすぎる
初期費用が安いとうたっている業者の中には、相場に比べて異様に高額なメンテナンス費用で差額を稼いでいるケースがあります。
メンテナンス費用が高すぎて太陽光発電を続けられない、といったことがないよう、事前に確認しておかなくてはいけません。
⑤ 工事業者と連絡がとれない
太陽光発電設備は、設置後もメンテナンスなどで工事業者と長くおつきあいをしていくものです。
しかし、新規参入の業者の中には、業績がふるわないからと太陽光事業を撤退してしまい、連絡がつかなくなる業者が多々あります。
長く付き合っていけそうな業者を見極めることが大切です。
【注意】近隣トラブル太陽光パネルの反射光事例
太陽光発電のトラブルの中でも、大きな問題をまねきがちなのが反射光による近隣とのトラブル事例です。
実際にあった裁判を例にとり、ご説明いたします。
裁判はどうなった?
2008年、横浜市で新築住宅の屋根にソーラーパネルが設置されました。
この新築住宅は隣に建っている家より少し低い位置にあったため、屋根のソーラーパネルに太陽光が当たると、反射光がちょうど隣家の2階部分に差し込む形となりました。
隣家の住民はほぼ1年中毎日まぶしい思いをする生活に耐えかね、ソーラーパネルの撤去を求めて新築住宅の住民と施工業者を相手取って裁判を起こしました。
一審では隣家の住民の要求通り撤去が認められたものの、二審では「カーテンを閉めることで対処できる」などの理由から否定される結果となりました。
近隣と揉めない!反射光の対処法
横浜の事例では、裁判ではソーラーパネルを所有する住民の主張が認められる形となりましたが、それでもこの一件がご近所関係に深い溝を作ったことは間違いありません。
ご近所から苦情を受けず、円満に太陽光発電を利用するにはどのような点に気をつければ良いのでしょうか。
実は、横浜の事例では屋根の北側に設置されたソーラーパネルが問題となりました。
北側に設置されたソーラーパネルには太陽光が大きく角度を付けて当たるため、反射光の行き先が予期しにくく、思わぬ光害の原因となります。
太陽の光は南側から当たるため、南側の屋根に設置されたソーラーパネルにはより直角に近い角度で太陽光が当たり、反射光は空に向かうので近隣の住宅に差し込むことはほぼありません。
設置計画の際は、南側の屋根を活用できるよう設置業者と相談してみると良いでしょう。
トラブルを十分理解して、太陽光発電を
電力の自由化によって、太陽光発電はより身近なものになりました。
電気代が安くなったり、環境にもよいとなれば、ぜひはじめたいものです。
しかし、メリットばかりに気をとられ、トラブルに巻き込まれることも少なくありません。
太陽光発電をはじめるならば、どのようなトラブルが起きるかを十分に理解して、快適なエコライフにしましょう。
- 太陽光発電設備はメリットがある一方、設置業者とのトラブルが多い
- トラブルの大半は、消費者自身がしっかりと自衛することで防ぐことができる
- 設置業者ばかりでなく、近隣住人のかたへの配慮も必要
- 信頼できる業者選びや、太陽光発電に関する知識を付けることが大切