これをお読みになっている方の中には、エネルギー業界に就職を考えている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
エネルギー業界は他業種よりも競争が少なく、どちらかというと安定しているため人気の業界です。
しかし昨今、再生エネルギーが注目されるなど、エネルギー分野は大きな転換期を迎えています。
就職する前に業界について詳しく知っておけば何かと安心というものです。
今回は、エネルギー業界の特徴や平均収入などをご紹介します。
エネルギー業界ランキング一覧
「エネルギー業界」といっても、現在では様々な企業が再生可能エネルギーの分野などに進出しており、一概に定義することは難しい状況です。
ここではわかりやすく、「電気」「ガス」「石油」の3分野に絞り、それぞれの業界ランキングを見ていきます。
※ 以下のデータは、平成27年~28年のもので、各企業の有価証券報告書に基づいて作成しています。
電力業界 売上高&シェアランキング
企業名 | 売上高 | シェア | |
1位 | 東京電力HD | 6兆0,699 | 30% |
2位 | 関西電力 | 3兆2,459 | 16% |
3位 | 中部電力 | 2兆8,540 | 14.1% |
1位の東京電力は業界内で約3分の1のシェアを誇っており、売上高も2位の中部電力と、およそ倍の数字となっています。
ガス業界 売上高&シェアランキング
企業名 | 売上高 | シェア | |
1位 | 東京ガス | 1兆8,846 | 39.7% |
2位 | 大阪ガス | 1兆3,220 | 27.9% |
3位 | 東邦ガス | 4,798 | 10.1% |
ガス業界は1位の東京ガス・2位の大阪ガスが業界内の約7割のシェアを独占しています。
石油業界 売上高&シェアランキング
企業名 | 売上高 | シェア | |
1位 | JXホールディングス | 7兆1,158 | 35% |
2位 | 出光興業 | 3兆5,702 | 17.6% |
3位 | 東燃ゼネラル石油 | 2兆6278 | 12.9% |
各業界の売上高は上記のようなものになっています。
続いて、就職する面で気になる年収のランキングを見ていきましょう。(平成27年~28年)
電力業界 平均年収ランキング
企業名 | 年収 | |
1位 | 中国電力 | 779万円 |
2位 | イーレックス | 752万円 |
3位 | 沖縄電力 | 750万円 |
ガス業界 平均年収ランキング
企業名 | 年収 | |
1位 | K&Oエナジーグループ | 800万円 |
2位 | 静岡ガス | 682万円 |
3位 | 大阪ガス | 650万円 |
石油業界 平均年収ランキング
企業名 | 年収 | |
1位 | JXホールディングス | 1,104万円 |
2位 | 国際石油開発石帝 | 933万円 |
3位 | 昭和シェル石油 | 925万円 |
エネルギー業界における年収の多寡は、業界内のシェアや売上高と必ずしも比例するわけではないようです。
内定した先輩たちの志望動機
就職活動に欠かせないのが「志望動機」です。
中身のない志望動機では一緒に働きたいと思ってもらうことができません。
エネルギー業界に就職を果たした人たちは、どのような志望動機を持っていたのでしょうか。
それぞれの業界の王手である「東京電力」「東京ガス」「JXホールディングス」を例にとってみてみましょう。
東京電力内定者の志望動機
東京電力に内定した方の志望動機として、よく出るものをまとめたものがこちらです。
- 社会を根底から支えたいのでエネルギー業界を志望した。
- 東日本大震災を経験し電気の大切さを知ったため、電力で人を支える仕事がしたいと思って志望した。
- 留学中に感じた「インフラへのストレス」をきっかけに、日本のインフラ整備の一助になりたいと思い志望した。
東京ガス
続いては、ガス業界最大手の東京ガスです。
内定者が東京ガスを志望した動機としてよく出るものがこちらになります。
- 人々の生活を支えたいと考えており、東京ガスならばそれができると感じ志望した。
- 首都圏にエリアを持っているため、多くの人に影響を与えられると考え志望した。
- 未来のエネルギー開発事業に貢献したいと考え志望した。
JXホールディングス
最後はJXホールディングスです。
こちらが志望動機として多いものです。
- 上流から下流まで幅広いエネルギー供給分野を担っており、貴社ならば日本のエネルギー安定供給に貢献できると考え志望した。
- 人々の暮らしを支えたいという思いがあり、生活の根底である石油企業を探していたところ最も将来性が感じられたため志望した。
- 水素エネルギー分野など新分野に積極的に挑戦する姿勢に惹かれ志望した。
これらの志望動機を見てわかるように、エネルギー業界を志望する人たちの中には「人々の暮らしを根底から支えたい」と考えている方が多いようです。
確かにエネルギーという生活に欠かせないものを扱うわけですから、人の役に立ちたいという思いや強い責任感がなければ務まらない仕事かもしれません。
電力・ガス・石油業界の特徴
エネルギー業界にはどのような特徴があるのでしょうか?
電気・ガス・石油業界それぞれの特徴をご紹介します。
電力業界の特徴・魅力
電力業界は、かつてない転換期を迎えています。
例えば原子力発電所の問題です。
東日本大震災を契機に安全性の問題を問われた原子力発電所がほぼ停止、国内の電力供給は火力発電に頼らざるを得なくなりました。
しかし、円安の進行もあり燃料費が増加、電力会社は軒並み収益を下げ電気料金の値上げが相次いだのです。
コストの面から原発を再稼働させるべきという意見もありますが、やはり安全性が危惧されており再稼働の問題は混迷を極めています。
平成28年からは電力の小売り完全自由化も実施されており、電力業界に異業種からの参入が相次いでいます。
市場競争が激しくなっているのも電力業界の特徴です。
しかし、競争が激しくなっているということは、逆に考えれば自分の能力を活かすチャンスが増すことを意味します。
そういった意味では魅力のある業界と言えるでしょう。
ガス業界の特徴・魅力
ガス業界は平成21年から平成26年まで徐々に業界全体の売り上げを伸ばしました。
平成27年は冬季の気温が高かった影響で売上高が減少していますが、全体的に見て業界は好調といえます。
その原因として原子力発電所が停止したことにより、火力発電の燃料としてガスの供給が増加したことが挙げられます。
中でも、Co2排出の少ない天然ガス・液化天然ガスの開発分野は売り上げが伸びており、今後も増加することが予想されます。
また、電力業界同様にガス業界でもシステム改革が進んでいます。
平成29年4月から一般消費者が自由にガス会社を選ぶことのできる「都市ガスの全面自由化」が始まったのです。
電力自由化と同じく異業種からの参入、市場競争の激化が予想されています。
石油業界の特徴
世界的な石油の需要はまだ少し伸びそうですが、日本での需要は明らかに減少傾向にあります。
こういった動きを見て、各社は次世代のエネルギー開発に力を入れているようです。
例として、JXホールディングスの傘下であるJX日鉱日石エネルギーが展開する太陽光発電事業があげられます。
石油元売り会社は筆頭株主が経済産業である国際石油開発帝石など特殊な例もありますが、基本的には出光やコスモなどの民族系企業(株式の半数以上を日本の株主が持っていること)、シェルなどの外資系企業の二つに分類することができます。
民族系企業はもともと国策として行われていた事業が母体になっている企業です。
現在では石油の精製販売よりも、油田やガス田開発に力を入れています。
対して、外資系企業では油田の開発は積極的に行われていないようです。
理系の学生が就職する場合は研究職に就くことが多いようですが、文系の学生はほとんどの場合まず営業に回ることになります。
この業界は、組織の人員が少ないことが特徴で、若いころからマネジメント能力を発揮できることが魅力の一つです。
どんなタイプに向いているか
エネルギー業界に向いているのはどのようなタイプなのでしょうか。
向いている人、向いていない人の特徴をご紹介します。
向いているタイプ
エネルギー業界に向いているタイプは「エネルギーに関心があり、人々の暮らしを支えたいと思う人」です。
エネルギー業界を志望するわけですから、前提としてエネルギーに関心がなければいけません。
ご紹介した志望動機にもあったように「震災をきっかけにエネルギーの重要性を知った」など誰もが知る関心でも良いですが、なによりも人の暮らしを支えたいという責任感の強さが重要となってきます。
すでに勤務している方は、これまで業界を通して競争が少なかったせいもあるのか穏やかな人が多い傾向にあるようです。
協調性があり、チームで仕事をこなすのが苦ではない人が向いているでしょう。
向いていないタイプ
向いていないタイプは「自分のキャリアアップのためにエネルギー業界に就職しよう」と考えている人です。
エネルギー業界は他業界に比べて競争が少なく、個人の力はそれほど重視されない傾向があります。
「数年でキャリアアップのために転職したい」
「個人の力を評価してほしい」
という人は途中で嫌になってしまうかもしれません。
エネルギー業界では転職をする人が少ない傾向にあり、キャリアアップのために就職を考えているのであれば他業界を志望することをおすすめします。
人の暮らしを支えるエネルギー業界
一口に「エネルギー業界」と言っても働き方は様々にあります。
どの業界でどんな企業が活躍しているのか、就職を希望する前に確認しておきましょう。
また、エネルギー業界は他業種よりも競争率が低い傾向にありましたが、昨今では競争が激しくなってきています。
エネルギーに興味があり協調性もありながら、自分の意見も持っている人が働きやすいと感じる職場かもしれません。
- エネルギー業界の売上高と平均年収は比例するわけではない。
- 再生可能エネルギーや天然ガスなどの新たな分野で開発競争が進み、法改正による異業種からの新規参入で競争が激化している。
- エネルギー業界は他業種よりも競争が少ない傾向にあったが、競争が激化していることで個人の能力を活かすチャンスが増す可能性が高い。
- エネルギー自体に関心を持っていて人の役に立ちたいという人はエネルギー業界に合っている。