再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を、国が定める価格で一定期間電気事業者が買い取ることを義務付ける制度「固定価格買取制度(FIT)」。
この制度が設けらたことで、太陽光発電投資に興味を持った方が多いでしょう。
そこで、太陽光発電の投資について調べていると、「表面利回り」「実質利回り」という言葉をよく見かけます。
この利回りとは太陽光発電に限らず、株式投資など投資全般で使われる重要な言葉です。
投資をする人が確認すべきポイントである「利回り」について解説していきます。
「利回り」とは?
利回りという言葉は投資全般で使われる言葉であり、太陽光発電や不動産投資の場合「投資金額に対してどれだけのリターンがあったか」というのを表す指標となります。
分かりやすく単純な例をひとつ挙げましょう。
(例)
100万円で年に5万円の売電利益を上げる太陽光発電設備を5年間保持し、最終的に125万で売れたという場合
「売却額125万円+利益25万-投資額100万円」
で5年で50万の収益を上げられたということになります。
つまり年間収益は10万円となり、利回りは10%です。
注意点として、これは太陽光発電や不動産投資で使う場合の話であり、株券や債券などの場合「利息と売却益を含めた利益」を指すのが一般的という点です。
投資の分野によって「利回り」という言葉は、指す意味合いが異なります。
そのため、こちらの例はあくまでも「不動産や太陽光発電投資においての利回り」という理解が必要です。
太陽光発電の場合、天候に左右されるとはいえ同じ立地であれば、日照量はある程度安定するため、買取制度による売電収入はある程度一定といえます。
そのため投資の中でも比較的安定した収益がでやすく、それに応じて利回りも計算しやすいというメリットがあります。
また、この利回りには2つの種類があります。
表面利回り
単純に収入と支出のみで概算して出すのが「表面利回り」です。
太陽光発電であれば、売電価格と年間発電量の予想を単純にかけて発電量を導き出し、投資額や投資予定期間など、はっきりした数字を用いて計算します。
太陽光投資関連サイトなどに記載されれている多くは、「表面利回り」の数値となっています。
実質利回り
実質利回りとは表面利回りのうえに、次のような内容の条件を加えた計算となります。
- 地代
- メンテナンス費用
- 保険費用などの諸々の手数料
- 天候不良によって売電ができなかった
- 売電が多かった
このように、実際の条件を加えて計算するのが実質利回りです。
実質利回りは表面利回りよりも下回るのが一般的のため、表面利回りだけみても正しい数値は出せません。
しかし発電所同士を比較する際など、不確実な要素が多い実質利回りをわざわざ計算するよりも、表面利回りだけを計算して比較するほうが、分かりやすいこともあります。
利回りを計算する際は、状況によってうまく使い分けましょう。
表面利回りを出してみよう
では、まず表面利回りの計算方法について解説していきます。
(※表面利回りというのも会社などによって定義が異なります。
そのためここではその中でも一番簡単な方法を解説しますが、実際にホームページなどで確認する場合はどのような定義で使っているか確認しておきましょう。)
表面利回りの計算方法
まず、表面利回りの計算には2つの情報が必要です。
- 売電量と売電価格から出した1年あたりの収益
- 初期投資額
この2つの情報から、以下の計算式が成り立ち、1年あたりの利回りを確認することができます。
「収益÷投資額×100」
(例)
年間100万円の売電利益がある土地を1000万円で買った場合
「100万円÷1000万円×100=10」
1年あたりの表面利回りは10%になります。
実質利回りを出してみよう
では次に実質利回りについて解説していきます。
こちらは要素が非常に多くなるので、計算が難しくなります。
実質利回りを計算するのに必要なこと
まず、実質利回りでは表面利回り以外に必要な要素として、主に以下の金額を算出する必要があります。
- 土地代(賃貸の場合は賃料)
- メンテナンス費用
- パワコンやパネルの買い替え費用
- 保険
- ローン金利
こちらはあくまでも主な要素であり、もっと詳しく見るのであれば年間の発電量の変化やパネルや装備などの経年劣化も考える必要があります。
実質利回り計算方法
以上の金額を確認したうえで、1年あたりのランニングコストを導き出します。
計算式は、収益からその分を引いて計算することで実質利回りが算出されます。
「(収益-維持コスト)÷投資額×100」
(例)
1000万円の太陽光発電設備で、年に20万円の経費が必要な場合
「(100万円-20万円)÷1000万円×100」
年利8%となります。
導入前には実質利回りを計算しよう
現在の太陽光発電施設で年利10%を超えるような土地はまずありません。
しかし、売電価格が高い時代に運営を開始した過去の太陽光発電施設であれば、表面利回りが10%代の土地が存在します。
また、中古では初期投資が低くなるので、場合によっては10%を超える場合もあります。
しかし中古はメンテナンス費用や維持費、パネルなどの設備の経年劣化で高額の金銭が必要になり、新規で制作するよりもお金が必要になることもあるので注意が必要です。
反対に新しい太陽光発電施設を設置する場合は、売電単価が低いため、表面利回りが低いことがあります。
しかし、パネルや設備に関する技術は年々上がるとともに、初期費用も下がってきているので、実質利回りと大きな差がでないメリットもあります。
また、土地の代金やメンテナンスや保証を受けるか、どこの会社に業務を委託するかなどによって実質利回りが異なります。
メンテナンス費用が安い代わりに、サービスの範囲が狭い会社を選び、利回りを増やすのも一つの手です。
保険についても保証範囲を狭くすることで費用を抑えることができます。
しかし、その結果トラブルが起きると実質利回りは大きく下がりますし、場合によっては赤字を出す可能性もあります。
とくに売電量は最終的に天候による部分が大きく予想しようがありませんし、トラブルも予測不能です。
リスクを少しでも減らすためにも、実際の経費などを事前に考慮して、実質利回りを計算し、吟味したうえで導入することが大切です。
失敗しない太陽光発電をするには
太陽光発電で失敗しないために注意することはいろいろありますが、最終的なポイントは2つです。
- 良い物件を選ぶ
- 良い業者を選ぶ
日当たりや値段、既存の設備であれば保存状態や経年劣化の状態などをよく確認し、収益が上がる物件かどうかを最初にしっかりと確認しましょう。
そして、保障やメンテナンスを受けるために専門の業者に委託することになるので、
- その企業が信頼できるか、
- 金額が他所と比べて妥当か
- 対応は丁寧か
など、細かい点を確認し業者を比較して選ぶことが大切です。
太陽光発電は事前の準備が肝心
太陽光発電投資は、投資の中でも売却価格や発電量などがある程度一定となるので、収益が計算しやすい投資方法です。
そのため、太陽光発電を成功させたいと考えるのであれば、事前に実質利回りの計算をするのはもちろん、各種リスクを避けるためにしっかりと情報を集めることが大切です。
計算して利益が見込める場合、ぜひ導入を検討してみてください。
- 利回りとは投資額に対しての利益のこと
- 表面利回りとは実質利回りがある
- 表面利回りは諸経費を含めない数字
- 実質利回りは諸経費を含める
- 実質利回りのほうが実際に近い数字が出る