太陽光発電システムを導入して電気を作り、余った電気を電力会社に売る売電。
その売電で副収入を得ようと考えている方、多いのではないのでしょうか。
しかし、太陽光発電システムは、電圧抑制によって思うような売電ができないことがあります。
せっかく副業を考えていたのにできないなんて、家族との人間関係にも拘わってしまいますよね。
そのようなことになる前に、太陽光発電における用語、「電圧抑制(電圧上昇抑制)」「出力制御」という言葉をご存知ですか。
太陽光発電をするなら、「電圧抑制(電圧上昇抑制)」「出力制御」の知識・情報を知って、しっかり行動できるようにすることが大切です。
この記事では、太陽光発電で売電を考えている方なら知っておきたい電圧抑制と出力制御についてわかりやすい日本語で説明します。
太陽光発電との関係性もあわせて、自分自身がしっかり把握することが肝心です。
電圧抑制・出力制限とは?
太陽光発電パネルや風力発電システムで作った電気が余った場合、電力会社に売ることができる「売電」が認められています。
それでは大規模な太陽光発電システム(メガソーラー)を建設して、より発電量を多くすれば大きな利益を得ることができると考える方も少なくありません。
ですが、「電圧抑制」や「出力制御」があるため注意が必要です。
辞典で調べると、「あばれ出さないように押さえとめる」といった意味のある抑制。
電圧抑制と出力制御について、詳しく見ていきましょう。
電圧抑制って?
「電圧抑制」とは、太陽光発電においてどのような意味・表現のことをいうのでしょうか。
電圧抑制とは電力会社の電線に流れる売電用の電気が、パワーコンディショナーによって流されなくなり、売電できない状態になることをいいます。
電力会社の系統連系(電線)は、電圧を一定範囲に維持するように設定されており、電圧が頻繁に変化することを抑制しているのです。
これを「電圧制御」(電圧上昇制御)といい、電圧上昇を抑制するためのパワーコンディショナーという装置が設置されています。
電力会社の系統連系(電線)側と、住宅内の配線は買電用の電力メーターの箇所で接続。
この接続点における電圧が、95V~107Vの範囲を保つよう法律で定められています。
太陽光発電所側に設置されているパワーコンディショナーは、法律で規定されている電圧の上限値・107Vに近づいたら、それ以上に電圧が上昇しないように抑制。
これが「電圧抑制」です。
出力制御って?
「出力制御」とは、電力会社が太陽光発電事業者に対して電気の出力を停止したり、抑制したりする要請を行う制度のことです。
電力会社が太陽光発電施設の電力を買い取る場合、電力の需要と供給のバランスが取れている状態であれば問題なく受け入れてくれます。
しかし、電力利用者の需要と供給のバランスが崩れることが予想される場合、一時的に電力会社がもつ電力系統への電力の受け入れをストップすることがあります。
たとえば電力消費量が減少し、電力の需要が少ない時期は供給量を制限することが必要です。
こうした電力需要と供給量のバランスを保つために、太陽光発電で作った電気をパワーコンディショナーから系統連系に流れないよう制御することを「出力制御」といいます。
電力会社の系統連系(電線)に太陽光発電所で作った電気が流れないということは、当然ながら売電の受け入れをストップしていることを意味します。
電圧抑制が起こる理由とは?
では、なぜ電圧抑制が起きてしまうのでしょうか?
具体的には2つの原因があると考えられています。
ひとつは電力会社の系統連系(電線)内の電圧が高いケース。
もうひとつは、住宅内の配線に問題が生じている可能性がある場合です。
それぞれの課題について、詳しく解説します。
電力会社の系統連系(電線)内の電圧が高い
前述したとおり、太陽光発電で作った電気を電力会社の系統連系(電線)に流す場合、法律で決められた電圧の上限値である107Vを超えることはできません。
電力の消費量が多く、需要が大きい時期は電力会社の電線は電圧が低い状態です。
この場合、上限値までは売電用の電気を流すことができます。
しかし電力需要が減る春や秋は、電力会社の電線に十分な電力が流れているため、太陽光発電で作った電気を流す余裕がないことになります。
そのため、すぐにパワーコンディショナーの上限に達してしまい、売電が止まってしまうのです。
住宅内の配線に問題が生じている
電圧抑制の原因が、住宅内の配線に問題があるケースも考えられます。
注意が必要です。
電圧というのは配線のケーブル内に抵抗が大きいと、一定の電力を流そうとして電圧を上げるという特性があります。
配線のケーブル内で抵抗が大きい状態というのは、基本的には配線が細かったり、接続点までの距離が長かったりした場合に発生。
このように配線ケーブル内の抵抗が大きくなると、電力会社の電線との接続点では上限の電圧を超えていなくても、パワーコンディショナーまでの配線で上限を超えてしまい、電圧抑制機能が作動して売電できなくなるというケースも多いのです。
太陽光発電の電圧抑制対策は?
太陽光発電で作った電気の電圧抑制が起こるメカニズムは理解できても、納得して受け入れることは容易ではありません。
せっかく太陽光パネルで発電した電気を売って収入を得ようと考えていたのに、思うように売電できないのは損です。
原因を究明し、対策を取りましょう。
電力会社の系統連系(電線)内の電圧が高い場合の対策
電力会社の電線内電圧が高い状態の場合、これは地域の電圧変動によって発生することが原因。
あまりにも長期間にわたって電圧抑制されたり、出力制御されたりするようであれば交渉が必要です。
ただ、電力会社に直接交渉することはむずしいので、太陽光発電システムの設置業者に相談し、間に入ってもらって交渉するのがよいでしょう。
電力会社が電線内の電圧を調査し、問題を確認したら対応してくれますが、少し注意が必要となります。
まず提案されるのが、自宅の引き込み用電柱にトランスと呼ばれる装置を設置する方法です。
このトランスによって、他の家で売電が行われた場合でも電線内の電圧上昇を避けることが可能となります。
ただし、このトランス設置工事に必要な工事費用は自己負担になってしまうのです。
あまりにも電圧抑制が長引くようであれば、費用対効果を検討してトランス設置を依頼することも検討するようにしてください。
住宅内の配線に問題が生じている場合の対策
基本的に電力会社と太陽光発電システムのメーカーでは、パワーコンディショナーの出力する箇所と、電力会社の電線との接続点の2ヶ所で電圧を測定することを推奨。
そして、この2ヶ所の電圧差が2Vを超える場合には、住宅内の配線に問題が生じているとして、確認と対策を勧めています。
まずは、配線の細さと長さを調べてみてください。
もし配線が余っていてムダに巻いていたり、メーカーが定めている距離よりも長く、しかも細いケーブルで配線を接続していたりする場合、太陽光発電システムを設置した施工業者に連絡してください。
これは明らかに不適切な施工なので、すぐに2ヶ所の電圧差が2V以下になるように住宅内の配線ケーブルを太く、短い距離のものに交換してもらうようにしましょう。
こうした対策を取ることで、パワーコンディショナーが正しく作動することになりますので、自分で確認することが肝心です。
出力制御は再生エネルギー特別措置法の改正が原因だった!
太陽光発電の電圧抑制は、どちらかといえば技術的な側面が強い問題。
対策は容易なのですが、出力制御に関しては法律が絡んでくるので深刻です。
そもそも太陽光発電による電力の出力制御とは、2015年に改正された「再エネ特措法」の制度によるもの。
発電された電気を電力会社の電線へ流す場合、電力会社の容量がオーバーにならないようにパワーコンディショナーによってコントロールされてしまうことなのです。
もともと家庭用の太陽光発電システムは、この出力制御の対象ではありませんでした。
これが改正された再エネ特措法で対象となってしまったのです。
ただし一般家庭用の太陽光発電は、この出力制御の影響が少ないとされています。
しかも太陽光発電の出力制御は、地域や時期によって発生する頻度や規模が大きく異なります。
2016年に関しては、九州電力管内の離島電力(種子島&壱岐)で発生した1件のみです。
電力会社の発電所によって、出力制御が行われるルールが異なり、東京電力と中部電力、関西電力では50kW未満の太陽光発電設備は出力制御の対象外です。
また北陸電力と中国電力では50kW未満の発電設備に対して360時間ルールが適用され、それ以上なら指定したルールが適用されます。
四国電力と沖縄電力、九州電力、北海道電力、東北電力は10kWまでが360時間ルールの適用範囲内。
それ以上(あるいは超過分)は指定したルールが適用されることになっています。
つまり、めったに太陽光発電の出力制御が行われることはない、と考えておいて問題ないでしょう。
ただ、太陽光発電の売買をビジネスとして投資している方にとっては、万が一のリスクも回避しなければなりません。
その場合は「出力制御保険」という商品がありますので、加入の検討をしてみてください。
なお、この出力制御保険に加入していると、銀行からの融資も受けやすいということは覚えておきましょう。
しっかり対策して損をしないように!
太陽光発電の電圧抑制と出力制御について、その発生する理由と対策を説明してきました。
せっかく太陽光発電システムの設置に投資して、売電で利益を上げようと考えているなら、このような問題を放置してはいけません。
債利回りにも影響を及ぼします。
しっかりと対策して、損をしないように活性化しましょう!
- 「電圧抑制」とは電力会社の系統連系(電線)内の電圧が、上限値である107Vを超えないよう太陽光発電の電圧を抑制すること
- 電圧の上限値は法律によって定められている
- 電圧抑制の原因は電力会社の系統連系(電線)内の電圧が高いこと、家庭内配線に問題があることが考えられる
- 出力制御は改正再エネ特措法によって定められているが、めったに発生しない