太陽光発電は、ソーラーパネル(太陽電池モジュール)を使い、太陽光の熱を使って電気を作る再生可能エネルギーとして注目を集めています。
同時に投資対象としての側面も強く、売電によって収益を上げることのできる設備です。
もちろん、会計上「経費」として申告し、税金を軽減することができます。
なるべく効率よく資産を運用するためにも、太陽光発電の耐用年数や減価償却に関する知識は身に付けておくに越したことはありません。
ここでは、太陽光発電システムを導入した場合に発生する減価償却の仕組みについて解説します。
【太陽光発電の法定耐用年数って?】
国税庁が定めた太陽光発電の法定耐用年数は、その目的や用途によって、少し異なっています。
例えば、自動車工場を営む人が、自動車製造設備を稼働させるために太陽光発電を利用した場合、法定耐用年数は9年です。
また、輸送用機械器具製造業用設備も同様の年数が適用されます。
しかし、個人事業主や家庭で太陽光発電設備を利用する場合、その設備は、「その他の設備・主として金属製のもの」というものに分類されます。
そのため、上記の場合と異なり、法定耐用年数は17年になります。
このように、太陽光発電の法定耐用年数は、発電施設の用途によって異なるのです。
しかし、光熱費の節減や売電による収益を得る目的で個人が住宅用に太陽光発電を購入する場合、「法定耐用年数は17年」という認識を持っていれば間違いありません。
〇減価償却とは
太陽光発電施設は、「利益を生み出すための設備」です。
そのため、太陽光発電設置にかかった初期費用は「経費」として申告することができます。
初期費用を経費として申告すれば、その分の所得税を支払う必要がなくなるなど、税金を削減することできるのです。
しかし、費用を一括で経費として申告することはしません。
太陽光発電設備のように、使用や経年劣化によって価値が減少していくとされている資産(減価償却資産)は、「減価償却」という方法で費用を経費に計上します。
減価償却とは、使用や劣化によって価値が減少していく資産の取得にかかった費用を、分割して経費計上する方法です。
具体的には、その資産ごとに定められている「法定耐用年数」で、資産総額を分割していきます。
国税庁が定めた太陽光発電の法定耐用年数は17年です。
1700万円の設備を購入した場合、1年に100万円ずつ経費計上していく、というような具合です。
実際には償却率端数の切り上げなどがあり、しっかり17等分とはいきませんが、おおよそこのようなイメージになります。
資産の取得にかかった費用を、その資産の法定耐用年数で割るという減価償却の仕方を「定額法」と呼びます。
毎年、資産の残存価値の一定率を経費計上する「定率法」という減価償却の方法もありますが、現在は定額法を使うのが一般的です。
それでは、なぜ太陽光発電を購入したその時に、費用をいっぺんに経費計上しないのでしょうか。
その方が煩雑な手続きが減り、余計な手間がかからないようにも思えます。
しかし、企業や事業者にとっては、費用を一度に経費として計上してしまうと、自分たちの経済状況が見えづらくなってしまうのです。
法定耐用年数から考えても、太陽光発電が収益を上げるために稼働し続ける期間は17年となります。
太陽光発電が収益を上げ続けている間、それにかかった費用も同時に見れた方が、自社がどれだけ利益を上げられているかが明確になるというわけです。
これが減価償却を行う大きな目的です。
これは、会計用語で「費用収益対応の原則」と呼ばれています。
〇減価償却の必要がある人
では、太陽光発電を行っていたとして、どのような場合に減価償却が必要になるのでしょうか。
太陽光発電を行っている人は、基本としてこちらの3つに分類されます。
- 太陽光発電によって収益を上げている企業
- 事業の一環として太陽光発電で利益を上げている事業主
- 一般家庭で太陽光発電を導入、自家利用や売電で利益を得ている会社員
このうち、減価償却が必須といえるのは、①②の2つです。
【減価償却の算出方法】
資産の取得にかかった費用を「減価償却資産」と考え、その設備が稼働し続ける間、資産を分配し続ける、というのが減価償却の基本的な考え方です。
例えば、1億円の資産を現金で購入、その資産の減価償却期間が10年だったとします。
すると、その資産を購入した初年度には、1億円分の資産が生まれ、その年度末には1億円の10分の1、つまり1000万円の減価償却費用が発生するのです。
それを10年間続け、最終的に減価償却が終了します。
もちろん、実際のお金の流れは、初年度に自分の「現金」という資産を支払っただけで、それ以降の支出はありません。
しかし、このように分割して費用に計上することで、利益をわかりやすくしたり、節税になったりする場合があるのです。
前述でも少し触れましたが、減価償却の方法には、法定耐用年数の間、一定額を減価償却する「定額法」、そして資産の残存価値の中から、毎年一定率の金額を減価償却する「定率法」があります。
太陽光発電の法定耐用年数は17年ですから、わかりやすく1700万円の設備を購入したものとしてシミュレーションしてみます。
まずは、定額法の場合です。
法定耐用年数が17年で、償却率は0.059となり、これを設備費用に掛け合わせます。
- 1年目 1700万×0.059=100万円
- 2年目 1700万×0.059=100万円
- 3年目 1700万×0.059=100万円
このように、毎年一定額ずつ減価償却していきます。
続いて、定率法の場合ですが、17年経った時、最終的に償却される金額は同じですが、定率法では、年度ごとに金額が異なってきます。
法定耐用年数が17年で、償却率は0.118となり、その年の減価償却費用を翌年、翌々年と加算し、導入費用から差し引いて計算していきます。
- 1年目 1700万×0.118=200万
- 2年目 (1700-200)×0.118=177万
- 3年目 (1700-377)×0.118=156万
残存価値から償却する金額が決まるので、最初の方は償却する金額が大きく、最後の方になると小さくなるのが特徴です。
定額法には、会計がわかりやすく、計画が立てやすいなどのメリットがあります。
昨今では、定率法から定額法へと切り替える企業も多いようです。
尚、事業を営んでいる人が、その事業用にソーラーパネル(太陽電池モジュール)を所有していた場合、償却資産税(個人のでいう所の固定資産税)の課税対象になりますから注意しましょう。
【家庭用では基本的に減価償却をしない?】
企業や事業者ではなく、家庭で太陽光発電を行っている場合、基本的に減価償却は行いません。
10kW以下、余剰売電を行っている太陽光発電の場合、設備にかかった費用を「経費」として計上することがほとんどないからです。
余剰売電の場合、太陽光発電による年間の売電額が20万円を超えることは考えにくく、そうであれば確定申告する必要性もありません。
雑所得としての税金も発生しないと考えてよいでしょう。
しかし、もし普通に会社員の家庭であったとしても、10kW以上の太陽光発電設備を所持しており、余剰ではなく全量売電を行っている場合には、設備全体にかかった費用を、経費として計上することができます。
つまり、減価償却を行うことができるということです。
【グリーン投資減税の優遇措置と条件】
2016年3月まで、太陽光発電の減価償却に関する優遇措置に「グリーン投資減税」という制度が存在していました。
今のところ、この優遇措置が復活することはないようですが、今後どうなるかはわかりません。
念のため、どういった内容であったかを確認しておきましょう。
グリーン投資減税は、太陽光発電の取得にかかった費用を100パーセント、もしくは30パーセント前倒しして減価償却できるという制度です。
即時償却したとしても、17年間トータルの税金支払い額は変わりません。
しかし、このように多くの金額を早めに償却することで、直近の税金支払い額を引き下げることができるのです。
それにより、手元には、より多くの資金が残るため、他の事業などにキャッシュを有効活用できます。
このグリーン投資減税の対象者となるのは「売電収益を事業所得にしていて、かつ青色申告書を提出する個人、または法人」です。
その中でも、100パーセント即時償却できる権利があるのは、「平成25年4月~平成27年3月31日までに設備を導入した場合」です。
30パーセント償却の権利があるのは、「平成25年4月~平成28年3月31日までに設備を導入した場合」となります。
その適用の条件が、こちらとなります。
- 取得日から1年以内に事業所得を得ること
- 全量買い取り制度の適用を受けていること
- 10kW以上の産業用太陽光発電であること
これらを満たしており、かつ上記の期間内に設備を導入した場合に限り、グリーン投資減税の優遇措置を受けることができます。
太陽光発電をメイン事業としている企業などにはメリットのある制度です。
しかし、全量買取制度の適用、10kW以上の発電設備などの条件から考えると、住宅用太陽光発電には、あまり関わりのない優遇措置と言えるでしょう。
このグリーン投資税と間違われがちなのが、生産性向上設備投資促進税制です。
こちらは、「先端設備」や「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」などの質の高い設備投資について、即時償却又は最大5%の税額控除が適用出来る税制措置ですが、はやり2017年3月に終了しています
太陽光発電導入時の初期費用が下がり、減税措置を受けずとも、太陽光発電の普及が整備されはじめたという影響が大きいのかもしれません。
【減価償却と耐用年数を理解して、上手に資産運用】
ここまで、太陽光発電の減価償却の仕組みについて解説してきました。
太陽光発電施設の減価償却は、主に企業や事業者のためのものです。
しかし、一般家庭で太陽光発電を導入する際、もし10kW以上の設備を導入するならば、減価償却が必要なケースも出てきます。
少しでも資産を効率よく運用するため、太陽光発電の耐用年数、減価償却の内容をしっかり把握しておきましょう。
- 太陽光発電の法廷耐用年数は「17年」である。
- 減価償却の算出方法の基本は「定額法」だが、計画が立てやすいメリットから「定率法」に切り替える企業も増えてきている。
- 10kW以下の太陽光発電設備は、基本的に減価償却の必要がない。
- 減税の優遇措置が終了している背景には、太陽光発電の普及が整備され導入しやすくなっているという状況がある。
- 一般家庭で10kWの太陽光発電を導入する場合、減価償却が必要なケースもあるためしっかり把握しておく必要がある。