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ペロブスカイト型|有機-無機複合原理の新しい色素増感太陽電池

太陽光発電

ペロブスカイト太陽電池」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。太陽光電池について詳しくない方には、聞きなれない言葉かもしれません。

このペロブスカイト太陽光電池は、次世代の太陽光発電装置と呼ばれており、現在非常に注目を集めているものです。今のところ実用化には至っていませんが、実現する日はそう遠くないといわれています。

今回は、ペロブスカイト太陽光電池について解説します。

ペロブスカイトは科学者?

ペロブスカイトとは、「チタン酸カルシウム鉱物」の名前です。灰チタン石を発見したロシアの科学者である、「ペロブスキー」にちなんで名づけられました。

チタン酸カルシウム(灰チタン石、CaTiO3)と同じ結晶構造は、「ぺブロスカイト構造」呼ばれています。ペロブスカイト型の結晶構造を持つものの中には、非常に有用性の高い化合物が多く、太陽光発電にも応用されているのです。

ペロブスカイト太陽電池とは?

現在、使われている太陽光電池のほとんどが、「シリコン系太陽電池」か「化合物系太陽電池」です。これらの太陽光電池は、耐久性に優れている、交換効率が良いなどのメリットがありますが、一方で製造コストが高くかかり過ぎてしまうというデメリットも抱えていました。

そこで、次世代を担う太陽光電池として期待されているのが、「ペロブスカイト太陽電池」です。上記で説明した「ペロブスカイト構造」を利用した太陽光電池で、現在主流のシリコン系太陽光電池、化合物系太陽光電池にも、負けず劣らずのエネルギー交換効率を持っています。

国際再生可能エネルギー研究所によると、2016年には20.3パーセントという高い交換効率を記録したのです。

ペロブスカイト化合物を最初に太陽光発電に利用したのは、桐蔭横浜大学 宮坂教授らの研究グルーブでした。2009年 この研究グループは、有機-無機複合物質であるハロゲン化鉛系ペロブスカイトを利用した色素増感太陽電池を開発しています。

ペロブスカイト太陽電池は、従来の太陽光電池とは異なり、「ハイブリット型」太陽電池と呼ばれています。太陽光発電の種類は、大きく分けて3つあり、最も一般的な「シリコン太陽電池」やCIGSなどの「化合物系太陽電池」、光の吸収に有機材料を用いている「有機系太陽電池」です。

シリコン系太陽光電池は、「多結晶シリコン」「単結晶シリコン」「アモルファスシリコン」とさらに細かく分類することもできます。

しかし、ペロブスカイト太陽電池は、上記のどれにも分類されません。なぜなら、光吸収の機能に、有機物と無機物の材料を組み合わせた、「ペロブスカイト結晶」を使っているからです。

ペロブスカイト太陽電池は、有機物-無機物の「ハイブリット型太陽電池」に分類されます。現在、主流となっているシリコン系、化合物系太陽電池の欠点を補う太陽電池として期待されています。

シリコン系や化合物系の無機物太陽電池は、交換効率はいいものの、「製造コストが高い」というデメリットがありました。しかし、ペロブスカイト太陽電池は安価で製造でき、交換効率も研究により無機物太陽電池に追いついてきています。

ペロブスカイト太陽電池は、まさに次世代の太陽光発電なのです。

その他の太陽光電池とは何が違うか?

まず、ペロブスカイト太陽電池が従来の太陽光発電と異なっている点は「光電変換の方法」です。従来の太陽光発電は、半導体のバンドギャップを利用して発電を行います。バンドギャップとは、半導体の中にある価電子帯と伝導体とのエネルギーの差のことです。

太陽光電池は、n型半導体とp型半導体という2種類の半導体が接合した、pn接合半導体という構造をとっており、その前後を2枚の電極が挟んでいます。太陽光パネルに光が当たると、接合部に電子と正孔のペアが生まれ、それらがn型、p型半導体を移動する電位差を利用して、電気を生み出しているのです。

しかし、ペロブスカイト太陽電池のような色素増感太陽電池は、それとは異なる光電変換を行っています。色素増感太陽電池の発電メカニズムがこちらです。

①酸化チタン多孔膜に吸着している色素が、光エネルギーを吸収する
②色素から電子が、酸化チタンナノ多孔膜に入る
③その電子が、透明電極、外部回路を通って、対極に到達する
④対極の表面で、電子は電解液を通り、ヨウ素に渡され、ヨウ化物イオンができる
⑤ヨウ化物イオンが、光エネルギーを吸収して酸化した色素に電子を渡すことで、色素が再 生するそれと同時にヨウ化物イオンは、再度ヨウ素となる

このサイクルが繰り返され、光による表面エネルギーを電気に変換しているのです。このように、色素増感太陽電池では、酸化還元反応を利用してエネルギーを生み出しているところが、従来の太陽電池と異なる点です。

また、製造する際の温度が低いことも、ペロブスカイト太陽電池の特徴です。

例えば、プラスチックを太陽光発電に用いた場合、高熱を利用するとプラスチックが溶けてしまいます。しかし、ペロブスカイト太陽電池を製造する際の温度は、プラスチックを傷つけない程度のものなので、プラスチックを使用した、薄いフィルムタイプの太陽光電池を製造することも可能なのです。

シリコン系太陽電池の場合、フィルムタイプのように薄くしてしまうと、発電できる電気の量が、極端に減ってしまいます。しかし、ペロブスカイト太陽電池の場合、太陽光の吸収係数が大きいため、フィルムのように薄くしたとしても、高いエネルギー変換効率を維持できるのです。

従来型のシリコン系のパネルと違い、ペロブスカイト太陽電池は、曲げることができます。折り曲げられるということは、これまで太陽光発電を設置できなかった場所にも、設備を設置できる可能性が出てくるということです。

オフィスビルや車の窓に太陽電池を張り付けて、発電ができるようになる日も、そう遠くはないでしょう。

塗るだけで発電する

ペロブスカイト太陽光電池の製造には、シリコン太陽光電池のように高温加熱や、高真空、というプロセスが必要ありません。基板の上で、多孔質の酸化チタンに溶液を塗布するだけで作ることができます。つまり、「塗るだけ」で発電をすることが可能なのです。

また、そのコストも1平方メートル当たり、約150円と安価で、実用化に向けて研究が続けられています。近い将来、車のボディだけでなく、カーテンなどにもこの技術が応用される可能性は高いといえます。

デメリットはある?

安価に製造できて、従来パネルが設置できなかった場所でも発電を行うことができる、そんなペロブスカイト太陽電池にもデメリットはあります。

例えば、「」を使用していることです。
ペロブスカイト太陽電池には、製造工程で鉛が使用されており、環境や人体への影響が危惧されています。この問題をクリアできない限り、実用化は難しいといわれていますが、鉛のかわりに「錫(スズ)」を使用した開発がなされるなど研究は進んでいます。

また、「耐久性に優れていない」というのもデメリットです。
風や悪天候に弱く、使用を重ねると、非常に早い段階で劣化してしまうということが、実験で明らかになりました。

2011年段階では、プラスチック基板のもので5年、ガラス基板のものは約10年という実験結果が出ています。一般的なシリコン系パネルの寿命は2~30年ですから、それには大きく劣っていると言わざるを得ません。

また、電圧の掛け方によって、交換効率にばらつきが出てしまうという不具合も出てきており、実用化に向けては、改善点が多々あるようです。

ペロブスカイト太陽電池の今後

ペロブスカイト太陽電池は、大きな可能性を秘めている太陽光電池です。開発されてまだ10年と時間が経っていないにも関わらず、急速に研究が進んでいます。

開発当時には、3.9パーセントだった交換効率も、2012年には10.9パーセント、2016年には20.3パーセントと躍進を遂げました。日本の市場で取引されているシリコン系パネルの交換効率は、ほとんどが20パーセント前後ですから、シリコンパネルにも負けない交換効率を誇るようになったのです。

研究が進めば、これまででは考えられないようなものにも、太陽電池を設置できるようになると考えられます。塗布技術や印刷技術の発達により、家の壁紙やカーテン、さらには普通の紙でも、ペロブスカイト太陽電池を用いて発電ができるようになるのです。

このように、様々な場所で発電ができるようになれば、エネルギーは劇的にクリーンになり、自給率も格段に上昇します。耐久性や鉛の問題など、解決すべき点はありますが、今後、ペロブスカイト太陽電池が世界のエネルギーを変える日もそう遠くはないでしょう。

次世代を担っていくペロブスカイト太陽電池

ペロブスカイト太陽電池は、これまでの太陽電池に比べて安く製造できることに加え、交換効率も無機物太陽電池に追いつく勢いを見せています。

実用化はされていないものの、研究は日々進んでいます。
これからの太陽光発電を担う存在として、わたしたちの暮らしを支えてくれる、身近なエネルギー源になるかもしれません。

 

まとめ

ペロブスカイト太陽電池は、シリコン系太陽電池と比べて、低コストで発電ができる次世代の太陽光発電装置
人体への影響や耐久性など、ペロブスカイト太陽電池には研究すべき課題も多い
ペロブスカイト太陽電池が実用化すれば、シリコン系のパネルにとって代わることは間違いない

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