企業や法人が太陽光発電を導入することは、災害時の非常電源の確保や売電事業に参入できるなどのメリットが考えられます。
加えて、太陽光などの再生可能エネルギーは環境にも良いため、環境保護意識を高めて社会的信用も得ることができるでしょう。
企業や法人向けは、住宅用太陽光発電とは異なり、産業用太陽光発電に該当します。その大きな違いとして、固定資産税が発生することをご存知でしょうか。
これから参入を考えてる方のために、今回は、産業用太陽光発電の固定資産税や、導入するメリットについて詳しくご紹介します。
産業用太陽光発電とは?
産業用太陽光発電は、一般住宅以外に設置可能な太陽光発電システムです。
ビルの屋上や沿岸部など、太陽光発電システムをあらゆる場所に設置できるように工夫されたものになっています。
太陽電池モジュールは、ビル屋上の設置で伴う強風や積雪、沿岸への設置による塩害などの考慮が求められ、それに耐えられる太陽電池モジュールを発注するため費用も高額です。
太陽電池モジュールを設置するための架台も、特注がほとんどの割合を占めます。また、発電した直流を交流に変換するためのパワーコンディショナーも、10kW以上が多く、屋外に設置するケースが主流です。パワーコンディショナーは、屋内型よりも屋外型の方が価格は高く、直射日光や雨などの設置環境についても配慮する必要があります。
住宅用と何か違う?
住宅用と産業用の大きな違いは、「規模」に伴うものです。
住宅用の場合、基本的には一般住宅の屋根に設置されています。住宅用のパワーコンディショナーは、2kW~5kWが主流で、設置場所も屋外ではなく、屋内の方が多数です。
最大の違いが売電方法の違いだといえます。住宅用の売電方法は、「余剰電力買取制度」と呼ばれており、発電された電力は、住宅内で消費され、余剰電力を電力会社へ10年間売ることが可能です。1kWhあたり税抜き28円または30円、ダブル発電の場合は税抜き25円または27円という設定となっています。
一方、産業用は、2012年7月から「全量買取制度」へ変更されました。全量買取制度は、産業用太陽光発電で発電された電力を全て電力会社へ売ることが20年間義務付けられています。1kWhあたりの価格は税抜き21円です。
そもそも固定資産税ってなに?
住宅用太陽光発電では、基本的に固定資産税がかかることはありませんが、産業用太陽光発電においては、固定資産税がかかります。
固定資産税とは、地方自治体が負担する税金のことで、土地や家屋、償却資産の所有者に納税義務が発生します。土地や家屋が課税対象となるため、アパートやマンションを借りている人は、固定資産の納税義務はなく、家主が支払う必要があるのです。
では、固定資産税の課税対象や計算方法などをみていきましょう。
課税対象にはどんなものがある?
固定資産税の課税対象は、土地、家屋、償却資産の3つです。土地とは、畑や田んぼ、塩田、山林、牧場などが当てはまります。家屋は、一般住家や店舗、発電所や変電所なども含む工場、倉庫などの建物です。
そして、償却資産は、事業に用いることができる資産になります。例えば、パソコンやコピー機、医療機器、客室設備など業務に関するものが申告対象です。
産業用太陽光発電は、償却資産とみなされるため売電の有無に関係なく、固定資産税の課税対象となるので申告する必要があります。屋根一体型など太陽光発電モジュールを屋根材として使用している場合は、家屋の固定資産税の対象となるので償却資産の申告は不要です。
固定資産税の計算方法
固定資産税は、「評価額×標準税率(1.4%)」の計算式で求めることが可能です。評価額は、「購入金額×減価率(初年度0.064、2年目以降0.127)」で求めることができます。
2000万円の産業用太陽発電を購入した場合で計算してみましょう。固定資産税は年々減少していきますが、太陽光発電システムの耐用年数は17年ですから、17年間は払い続ける必要があります。
特例措置
産業用太陽光発電にかかる税金は固定資産税が一番大きく、特例措置がなされています。初年度から3年間の間は固定資産税が2/3になるので、計算式では2/3をかけて算出します。
固定資産税シミュレーション
産業用太陽光発電を導入する際は、購入価格も重要ですが、それにより固定資産税がどのくらいかかるかしっかりシミュレーションすることも大切です。自分でシミュレーションするのも良いですし、販売業者によっては固定資産税のシミュレーションも行っているところもありますから確認してみてください。
それでは、産業用太陽光発電を5,000万円で購入した場合のケースで固定資産税をシミュレーションしてみます。
5,000万円で設備を購入したケース
・初年度
評価額:50,000,000円×(1-0.064)=46,800,000円
税金:46,800,000円×1.4%×2/3=436,800円
・2年目
評価額:46,800,000円×(1-0.127)=40,856,400円
税金:40,856,400円×1.4%×2/3=381,326円
・3年目
評価額:40,856,400円×(1-0.127)=35,667,637円
税金:35,667,637円×1.4%×2/3=332,898円
・4年目
評価額:35,667,637円×(1-0.127)=31,137,847円
税金:31,137,847円×1.4%=435,930円
・5年目
評価額:31,137,847円×(1-0.127)=27,183,340円
税金:27,183,340円×1.4%=380,567円
固定資産税の軽減措置とは?
固定資産税では、種類によって様々な軽減措置が設けられています。
例えば、住宅用地の場合は、1/6もしくは1/3に軽減されます。新築住宅の場合は一定面積に相当する固定資産税額の1/2が3年間分軽減されるのです。
主に家屋に関する措置となりますが、上記でも説明しましたが産業用太陽光発電では3年間に限り2/3に軽減される特例措置があります。さらに減価率は0.127のところ、初年度に限り半分の0.064です。
産業用太陽光発電の固定資産税を計算する場合は、特例措置と減価償却に注意して計算をしましょう。
産業用太陽光発電のメリット
産業用太陽光発電の固定資産税についてご紹介しましたが、固定資産税だけでみると負担が大きいイメージがわくかもしれません。
ここからは、導入することでどんなメリットがあるのか見てみましょう。
全量売電できる
つい5年ほど前までは、産業用太陽光発電も余った電力だけを売る余剰電力買取制度の対象であったため、経済的なメリットはあまり大きくありませんでした。
しかし、全量買取制度のスタートにより、20年間はすべての電力を売ることができるようになっています。再生可能エネルギーは、発電コストが高い理由からなかなか普及しておらず、それを促すために設けられた制度です。
売電単価は余剰電力よりも低いですが、発電した電力すべてを売ることができるため安定収入事業の開拓も可能です。現在は、電力自由化により電気事業に新規参入する企業も増えているため、ますます注目は高まることでしょう。
すでに北海道や東北、四国、九州、沖縄の電力会社では、買取規制がかかってしまったことがあるほど人気を集めています。
スケールメリットで導入単価が住宅用より安い
太陽光発電の導入で気になる部分が導入価格です。
産業用であれば住宅用と違って、かなり高額であることが予想されます。
しかし、太陽光発電では、予算や規模が大きいほど、また、設置する太陽電池モジュールの枚数が多いほど1kWあたりのシステム単価を下げることができるのです。
住宅用は、容量が小さい分、人件費を含めて工事に費やした単価は上がります。
産業用の場合、太陽電池モジュールにパワーコンディショナー、接続箱といった部材が必要不可欠であり、設置工事もなかなかの金額となりますから、1kWあたりのシステム単価は住宅用よりも低くなっているということです。
20年間は安定収入事業
環境に優しい発電ができる太陽光発電を、産業用として導入する企業も増えています。全量売電により、20年間は安定収入事業として展開していくことができるメリットがあるからです。
近年は、電気料金などの増加も経済の負担となっているため、企業や法人で発電して社内で活用し、非常用としても電源の確保を考えているところもあります。
生産性向上設備投資促進税制や、グリーン投資減税といった優遇措置はなくなってしまいましたが、その背景には、普及に伴って初期費用が安価となり、十分に運用ができるようになったという理由があります。初年度の減税を利用したとしても、結果的に支払う税金は変わりませんから、大きなデメリットとは考えにくいでしょう。
さまざまなメリットのある太陽光発電ですが、確定申告の際には、正しく固定資産税や経費を算出する必要がありますから注意してください。
新たな投資産業としては有効ですから、企業や法人への導入は十分価値があるといえます。まずは、ソーラーフロンティアなど各メーカーの中から、どれが導入するに相応しいかを選ぶことからはじめてみましょう。
住宅用との違いを把握して、産業用太陽光発電の利点を存分に活用してください。
- 住宅用太陽光発電は2~5kWが主流で産業用太陽光発電は10kW以上である
- 産業用は屋根ではなく屋外に設置が基本
- 産業用なら全量買取制度を選択し20年間すべての電気を売ることができる
- 産業用太陽光発電は固定資産税の対象で軽減措置の対象となる
- 産業用は大規模な設置となり1kWあたりのシステム単価が住宅用よりも安い