再生可能エネルギーとしてエコでクリーンに発電を行うことができる、通称グリーン電力。
なかでも太陽光発電は、2012年より固定価格買取制度が実施され、着実に普及しています。
しかし、各地方の電力会社が新規の売電契約を中断するという大きなニュースや、売電単価が年々減額されることなど、不安な要素もはらんでいます。
数年前と比較すると、太陽光発電を取り巻く環境はかなり変化しています。
今回はそんな太陽光発電の今後の展望について、売電中断の問題をふまえながら解説していきます。
太陽光発電の買取は終了?
今、太陽光発電の買取はどうなっているのか。
太陽光発電の買取の現状を、解説します。
2014年電力会社4社が新規買取中断を発表
2014年9月に九州電力が太陽光発電の接続契約に関する新規申し込みへの回答を保留することを発表しました。
それを受け、北海道電力、東北電力、四国電力も同じように接続契約の新規申し込みを保留したため、2014年の10月時点で4社が新規で接続契約の申し込みがあった電力事業者からの売電を中断した形となりました。
これは太陽光発電の普及により供給する電気の量が需要を上回り、電力の安定供給が難しくなったからといわれています。
あくまでも設備認定の中止であり買取の中止ではない
九州電力からはじまった売電の中断は、あくまで中断であり中止ではありませんでした。
電力会社は法律で、設備に問題のない発電施設からの売電の申し出は中止することはできず、受ける義務があります。
一時的に問題がある状態とし、あくまで中止ではなく中断している状態でした。
また、売電の中断といわれていますが、実際には新規の接続契約申し込みへの回答を保留している状態です。
接続契約とは、設備認定を受けた太陽光発電設備を持つ事業者が、電力会社と売電を行うために結ぶ契約のことをいいます。
上記の電力会社4社は、新規の接続契約、つまり新たに売電を希望する事業者に対して、契約の締結を保留することを決定したのです。
発電後の売電自体ができなくなるわけではありません。
一時的に中断しましたが、今では、ほとんどの契約が再開している状況です。
電力会社が買取中断を決めた理由
どうして、電力会社は買取を中断することになったのでしょうか。
ここでは、その理由をご説明します。
電力会社ごとの設備認定容量と供給力
電力会社ごとに、設備認定容量と供給力は異なります。
これは地方の都市の規模と電気の消費量とが関係しています。
上記電力会社が新規での売電を行わない決定に至った理由は、すでに設備認定を行っている発電施設で発電されるであろう電力が、供給量を上回ると判断したからです。
電力会社ごとの設備認定容量と実稼働容量
「設備認定を行った発電施設がすべて稼働している」とは限りません。
各電力会社の設備認定容量から実稼働率を算出すると、最も高いところで沖縄電力の約18%、低いところで東北電力の約4%です。
この数字で、設備認定をしておきながら発電していない施設の多さが分かります。
電気ニーズを満たしてしまい需要と供給のバランスが崩れる
電力は性質上、生産と消費が同時に行われます。
これを「同時同量性の原則」と呼びます。
電力を安定して供給するには、発電して生まれた電気の量と、需要があって消費される電気の量が同量でなければなりません。
東日本大震災のような災害を受けた場合、発電して得られる電力に対して、需要が上回った状態となり、安定した電力の供給ができず大規模な停電が起こる事態となります。
需要と供給のバランスが崩れた状態です。
これと同じように、発電した電気が需要よりも上回ってしまうと、これもまた需要と供給のバランスを崩すこととなります。
再生可能エネルギーのなかでも、火力や原子力と違って、太陽光発電はその発電を人為的に止めることができません。
そのため、需要よりも供給が上回ってしまう場合、売電を中止して、需要と供給のバランスを保ち、電気の安定供給を維持するのです。
買取中断の条件
今では、ほとんどの契約が再開している状況ですが、中断時もすべての太陽光発電の買取を中断したわけではありません。
ここでは、買取中断の条件についてご紹介します。
買取中断となる対象
電力会社が売電の買取を中断の対象としているのは、太陽光発電設備の発電量が10kW以上の場合のみです。(東北電力は50kW以上。沖縄電力はすべて中断。)
10kW未満の住宅用太陽光発電設備であれば、新規での申し込み、売電のための接続契約も可能です。
電力会社が買取中断をする期間
新規の接続契約を中断している電力会社が、いつまでこの中断を続けるかは、はっきりと決まっていません。
新規の売電の契約を中断することになった理由は、電気の需要よりも供給が大きく上回ってしまったからです。
電気の安定供給を保つため、一時的に新規の売電の契約を保留、中断し、供給量の減少を待っている状態です。
太陽光発電の設備導入におけるコストは低価格化が進んでおり、新規参入もしやすい状態になっています。
電気の供給量率によって、中断の期間は決まります。
太陽光発電を検討している人はどうすべき?
「太陽光発電を検討している」そういった人には、過去に中断した事実は不安ですよね。
では、どうしたらいいのでしょうか。
住宅用太陽光発電、産業用太陽光発電について、ご紹介します。
住宅用太陽光発電には特に影響はない
各電力会社が新規の接続契約を保留し、新たな売電を中断しましたが、その対象となるのは、太陽光発電設備の発電量が10kW以上の産業用太陽光発電設備です。
一般的な家庭に導入されている太陽光発電設備は4kWから5kW程度なので、売電中断の対象にはなりません。
引き続き売電を行えるのはもちろん、新たに太陽光発電設備を導入しても、設備認定を受け、接続契約を申請すれば通常通り契約の締結が可能です。
産業用太陽光発電を「買取中断を発表した電力会社4社の管内」で検討している場合
太陽光発電設備を導入しても、ずっと売電できる可能性は未知数です。
電力の供給量が増加してしまい、それを抑制するための措置では、太陽光発電が普及していく今後も継続する可能性が高いといわれています。
産業用太陽光発電の導入を検討している場合、一度計画を凍結させて、動向を見守るのが良いでしょう。
一方で、これまでの法律では、売電の契約を締結した場合、発電された電力のすべてを電力会社が購入しなければなりませんでした。
しかし、これが全量買取でなくなれば、売電の買取を中断しなくてもよくなる可能性があります。
その際、投資した設備費の回収にかかる期間は長くなってしまいますが、少しずつでも利益を得ることは可能になります。
産業用太陽光発電を「買取中断を発表した電力会社4社の管内以外」で検討している場合
2014年の九州電力の新規売電買取中断を受けて、その他電力会社も同じ対策を採るようになりました。
新規買取が中断されていない地域でも、今後電力の供給量が多くなるようであれば、買取が中断される可能性がありました。
売電するためには、電力会社と接続契約を締結することが必須です。
現在太陽光発電の導入を検討しており、すぐにでも設置ができる状態であれば、なるべく早く業者に相談し、着工することがおすすめです。
設置を開始してから完成、契約締結までの手続きには数か月必要となります。
新規の売電の契約が締結できるうちに進めておくのが得策でしょう。
もし売電目的ではなく経済的なメリットのみを重要視しているのであれば、太陽光発電の導入よりも、電力自由化を利用した最安値の料金プランを契約するほうが有効といえます。
2017年以降太陽光発電事業はどうなる?
では、これから太陽光発電はどうなるのでしょうか。
みなさんの疑問にお応えします。
導入価格が下降し発電効率が向上しているため堅調に市場は伸びる
2017年には、固定価格買取制度(FIT)が新認定制度を導入し、設備認定申請も変わり、昔よりも国民の負担は、減りました。
ただ太陽光発電は、固定価格買取制度(FIT)の売電価格が年々下がっていることから、「利益を得られなくなるのでは?」と懸念する方もいるかもしれませんが、実際にはそうではありません。
太陽光発電のためのパネルや周辺設備は低価格化が進み、導入の際にかかる費用負担は少なくなっています。
売電で得られる利益が年々減少しても、その分設備費も減少しているので、十分に利益を得ることは可能です。
また、さまざまな場面で環境への配慮が叫ばれるなか、再生可能エネルギーである太陽光発電が重要視される姿勢は、今後も変わらないでしょう。
以前のような爆発的な普及ではないにしても、太陽光発電事業は今後も堅調に伸びていくと考えられます。
太陽光発電は今後も注目される
電力の需要量よりも供給量が増加してしまったため、一部の電力会社で新規の売電が中断された状態となりました。
ただこのことで、固定価格買取制度(FIT)が見直されたのも、事実です。
これからもなにかしら、問題が起きるかもしれません。
ただ、再生可能エネルギーとして注目が集まる太陽光発電は、以前よりも緩やかにはなりますが、今後も堅調に伸び、増加していくことでしょう。
・電力の需要と供給の安定を図るために、新規の売電が中断された
・中断は、「発電施設で発電されるであろう電力が、供給量を上回る」という理由
・売電の中断は産業用太陽光発電のみが対象で、住宅用太陽光発電には影響がない
・売電価格の低下が進んでいるが、設備費用も低価格化が進んでいるため、今後も利益を得ることは可能である