再生可能エネルギーのエースである太陽光発電システムの導入は、国の政策の影響下でかなりのスピードで実現してきました。
導入下での家庭での自己使用と、余剰電力の売電の仕組みも浸透を経て定着してきていますが、導入が進んでいる背景を意識して、売電価格の低減化の傾向が見られ始めています。
そこで、これから太陽光発電システムの導入を意図している人に対して、現段階での太陽光発電を取り巻いている環境を、売電の仕組み、これからの問題点を整理していきましょう。
太陽光発電の仕組み
火力発電所では化石燃料で、原子力発電所では原子核の核エネルギーとなり、このような熱エネルギーを取り出すことで、蒸気タービンを回し電気エネルギーを得ています。
しかし地球温暖化問題で化石燃料が、東日本大震災で原子力が問題視され、自然が持つエネルギーを電気エネルギーに変換する再生可能エネルギーが脚光を浴びています。
その中の一つに太陽光発電が位置づけられています。
それでは、太陽光発電の仕組みを見ていきましょう。
太陽光発電システムは、ソーラーパネルで電気を発生させるのですが、具体的にはどのようにして太陽の光から電気が取り出せるのでしょうか。
ソーラーパネルは太陽電池とも呼ばれています。
この電池は私たちのイメージするあの電池とは少し違っていて、電力を蓄電するわけではありません。
太陽光のエネルギーは、簡単に説明すると、電気に変える発電機の仕事をしています。
太陽の光エネルギーが、屋根の上にある太陽電池であるソーラーパネルにあたると、光電効果で電気を起電します。
その仕組みは、ソーラーパネルはN型半導体とP型半導体が接合されていて、そこに太陽から光が当たると半導体内の電子が移動することで電気を発生します。
ソーラーパネルを構成する素材は、大きく分けてシリコン系(全体の80%)、化合物系、有機系の3種類あり、素材によって発電効率に差が出ています。
そのためにソーラーパネルは、当然、発電効率が良いほうが値段が高いことになります。
発電量は?
太陽光発電システムを導入には3つの方向性があります。
それは、
1.二酸化炭素の排出がないクリーンエネルギーの推進
2.自家用の電気量の削減―電気代の削減
3.余剰電力の売電
です。
特に、2. 3. については、導入費用の回収にも関係するので、どの程度の発電量かで影響に変化があります。
では、発電量とは一体何を指すのか説明しましょう。
太陽光発電の年間発電量は、1kwあたり1,000kwhとされていますが、実際には、地域、ソーラーパネルメーカーによって発電量も変わってきます。
実はその発電量は予測することが出来ます。
NEDO(技術開発機構)のガイドラインによると、
年間予測発電量=1日あたりの年平均日射量(kwh/m²)×損失係数×システム容量(kw)×365÷1(標準時における日射強度)
この計算式で概算の発電量が算出できます。
それでは、簡単に例を挙げて計算してみることにします。
1日あたりの年平均日射量を3.9kwh/m²/日、システム容量は4.8kw、損失係数0.85の場合を採り上げてみます。
年間発電量=3.9kwh/m²/日×4.8kw(システム容量)×0.85(損失係数)×365日×1kw/m²=5,807kwh
こうして計算した結果は、5,807kwhの発電量になります。
太陽光発電の補助金について
太陽光システム導入の補助金制度には、国と自治体の2本立てとなっていました。
国の補助金制度とは
2014年に国からの太陽光発電への補助金は廃止になりましたが、実は、補助金制度が始まったのは24年前の1993年。
「家庭用太陽光モニター事業」としてスタート、1997年には「住宅用耐余光発電導入基盤整備事業」となって、金額の変動はありましたが2005年まで続きます。
この結果、住宅用の太陽光発電システムの導入・普及はかなり進むことになったのです。その後、補助金制度は廃止したままになっていましたが、二酸化炭素、温室効果ガス問題が浮上すると、2009年から補助金制度が「住宅用太陽光発電導入基盤整備事業」として復活、2014年まで続きましたが、システム価格の低価格化に応じて、補助金額は低減化して行きました。
1994年度の補助金額は、設置費用の最大1/2(上限90万円/kwで5kwまで)でしたが、最終年の2013年の補助金額は、システム単価が50万円以下では15,000円/kw、41万円以下では20,000円/kwとなっていて、システム価格の低減が進み、国の補助金制度制度の初期の目的を達成したとして、2014年に廃止になっています。
地方自治体の補助金制度
国の補助金制度は廃止になりましたが、地方自治体の補助金制度は継続している自治体と、全く制度がない自治体があります。
補助金額もそれぞれの自治体によって異なっていますので、詳細情報については、住んでいる自治体に確認することが必要になります。
因みに、都道府県の補助金制度は終了している場合が多いですが、一部の市町村では上限を9万円にして、補助金制度を継続しているところもありますが、予算の上限を決めていますので、それに達した場合は打ち切りになるようです。
太陽光発電の売電とは?
再生可能エネルギーの電力は固定価格買取り制度(FIT)によって、決められた売電価格、それに一定の期間の買取りが保証され、家庭用の発電システムの2017年度の導入では、10年間のわたり、28円/kwh、30円/kwhでの売電が出来ることになっています。
昨年2016年度と比較すると、3円/kwhほど下がっています。
もちろん、太陽光発電システムそのものの価格も下がっていることから、採算性はあると見られていますが、場合によっては自家消費を前提に考えること必要になるかも知れません。
太陽光発電システムを導入し自宅に取り付けたからと言って、すぐに売電というわけにはいきません。売電をするためには、システムの設置前に設備のチェックを行いFITに副った諸条件をクリアしているかどうかの証明をしなければなりません。
売電価格は年々下がって行くため、導入・設置が遅れると、設備の認定時の価格で契約ができないことになり兼ねませんので、遅れが出ないようにすることが肝心です。
売電の相手先住んでいるエリアの電力会社との間で行われるのが普通ですが、昨年から新電力が参入していますので、売電の相手先として新電力の選択が可能になります。
売電についての買取りの原資は、各電力会社の需用家が毎月の電気使用量の支払いに際に、賦課金という名目で負担をしています。
なお、2019年までの売電価格は次の表のとおりになっています。
2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
①売電価格 | 31円/kwh | 28円/kwh | 26円/kwh | 24円/kwh |
システム費用 | 35.3万円/kw | 33.6万円/kw | 32.2万円/kw | 30.8万円/kw |
②売電価格 | 33円/kwh | 30円/kwh | 28円/kwh | 26円/kwh |
システム費用 | 36.3万円/kw | 34.6万円/kw | 33.2万円/kw | 31.8万円/kw |
*①は、出力制御対応機器設置義務なし
*②は、出力制御対応機器設置義務あり
売電収入の計算【1】
実際に太陽光発電システムを導入して発電を開始しました。
既に諸手続きも終わって昼間の使用電力を賄うことにして、余剰電力を売電することにしました。
仮に、年間の使用量が5,800kwとした場合で計算しますと、
年間では、5,800kwh×29円(東京電力の1kwhあたりの電気料金)=168,200円となります。
1カ月にしますと、168,200円÷12カ月=14,000円(16円の端数は切り捨て)となります。
つまり、電力会社には1カ月14,000円を支払っていることになります。
ここで、昼間の電力量を設置したシステムで賄うとした場合、おおよそ30%が充当されますので、5,800kwh×0.3=1,740kwhとなり、その金額は1,740kwh×29円=50,460円となります。
したがって、1カ月にしますと50,460円÷12=4,200円(5円の端数切捨て)ということになります。
つまり、毎月の電力料金のうちで4,200円が安くなりますので、電力会社に支払う電気料金は、
14,000円-4,200円=9,800円
になります。
売電収入の計算【2】
太陽光発電システムの容量を4.8kwとして、1kwの年間発電量は1,000kwh、売電価格は1kwhあたり28円(2017年の出力制御対応機器なしの場合)で計算を行います。
一般家庭用では、余剰買取制度の扱いになりますので、昼間の使用電気量を差し引いて計算をします。
システム容量が、4.8kw×1,000kwh/年=4,800kwh/年ということになりますが、これから昼間の使用する電気量1,740kwhを差し引いた余剰電力が売電できる電力となります。
4,800kwh-1,740kwh=3,060kwh/年から、3,060kwhが年間の売電電力量で、
その金額は、
3,060kwh×28円=85,680円/年
となります。
したがって、1カ月にすると85,680円÷12=7,140円となります。
こうした計算によって、太陽光発電システムを導入した場合、自家用で賄って電気代と、売電によって得られる金額を併せると1カ月の金額は、
4,200円(昼間の自家用の電気代)+7,140円(売電による収入)=11,340円となり、年間では、11.340円×12=136,080円となって、結構な金額になります。
2017年は28円の売電価格で計算しましたが、2018年、2019年となって行くと、売電価格は先に示したように26円、24円と下がっていくことになっていますので、システム導入価格と照らし合わせながら考えることがポイントになります。
そこで、次に太陽光発電システムを導入した場合の費用を見てきましょう。
導入費用を知っておこう!
まず、国の補助金制度が始まった1993年当時の太陽光発電システムの導入価格を見てみますと、370万円/kwで、仮に4.8kwのシステムの場合では、1,776万円もすることになります。
前述の通り補助金額が90万円/kw、5kwまでとなっているのも納得ができます。
では、2017年の現在はどのようになっているのでしょうか。
現在の相場観は海外パネルの場合は30~35万円/kw、国内パネルでは35~40万円/kwで、1993年と比較すると1/10の導入金額になっています。
システム価格の内訳は、
ソーラーパネル…50%
パワーコンディショナー…15%
接続関連…5%
架台…10%
工事…20%
となっています。
売電価格の表の中でシステム価格が示されていますが、それによると2017年は33.6万円/kwが示されています。
このようにシステム価格は低減化の傾向をたどっていることがわかります。
さきほど、例で示した4.8kwのシステムを仮に33.6万円/kwで導入した場合、161万円の費用が発生します。
ただし、自家用需要からの浮いた金額と、売電による金額を合算すると136,080円でした。
この金額をシステム導入金額にあてるとした場合、売電期間は10年ですので、136万円を充当すると残りは25万円となり、この分を11年目から処理するわけですが、11年目以降の売電状況ははっきりしていません。
そのために、全部の電力を自家用に使ってもいいですし、仮に売電ができるとしたら、28円よりははるかに安い価格になることから、3年程度の年数がかかるかも知れません。
特に、国からの補助金制度は既に廃止になっていますので使うことはできません。
また、地方自治体の補助金制度も都道府県の補助金制度も打ち切りの場合がほとんどで、頼みは市町村ですが、これも、制度を維持している所とないところがありますので、チェックが必要になります。
ご自分で調べることも可能ですが、できたら慣れている業者さんにお願いするのもいいかも知れません。
補助金があっても、最高金額が9万円という場合が多いようなので、それほど期待するような結果にはならないかもしれません。
太陽光発電のメリット
太陽光発電のメリットについてはいろいろ挙げることが出来ますが、地球温暖化、二酸化炭素問題から有限資源である化石燃料に対して、無尽蔵にある太陽光資源を有効利用できるだけでなく、自然エネルギーに依拠した次世代の自給率を高めるエネルギー源としての役割が期待されています。
火力発電所や原子力発電所、水力発電所のように大規模電力発生装置の必要がなく、それこそ太陽光発電の地域性を活かし、その上で身近なところでの電力の供給が簡単にできることが挙げられます。
そして、自然エネルギーを利用しながらも環境破壊がないところが優れた特徴になっています。
●メリット1―電気代の節約
太陽光発電システムで発電された電力の自家用使用は昼間の時間ということで、先の売電に回す電力量に対して、昼間の使用で30%を賄うことにしておりましたので、その分の電気代が節約できます。さきほどの例では、年間で50,000円程度の節約が可能となっていました。
このように発電状況に応じてフレシキブルに対応することが大切になります。実際に成果として夏季の冷房、冬季の暖房と需要期での節約は嬉しいものです。
●メリット2―節電マインドの醸成
太陽光発電システムの導入を機に、いかに電気を使わないようにすればいいのかという、節電に対する考え方が出てきます。無駄な電気は使わない。それで、余剰な電力が確保できるのであれば、売電に回すということが出てきます。
例えば、電力会社からの買電、電力会社への売電でプラスの差額がでるようであれば、当然、売電を選択することになりますし、マイナスの差額であれば、買電を選択することになります。いずれにしても、電気代の削減方法をしっかりと考慮することに繋がるセンスが身につくようになるでしょう。
●メリット3―太陽光発電の環境に対して
再生可能エネルギーは自然が持つ無尽蔵なエネルギー源を有効利用するわけですが、太陽光発電システムも光エネルギーを使い勝手の良い電気エネルギーの変換することで、これまでの化石燃料や原子力によるエネルギー生産の比率を抑制しようとするものです。
当然、二酸化炭素の排出はありませんし、放射能による汚染もありません。
つまり、環境負荷を与える要素がないことが、21世紀のエネルギーと言える所以ということになります。
節電マインドと相まって環境負荷低減マインドの醸成ができれば、太陽光発電システムの導入が進むことは地球環境にプラスの影響力をもたらすことになります。
●メリット4―売電できる
10kw以下の一般家庭用の太陽光発電システムでは、余剰電力を向こう10年間、売電することが出来ます。例えば、2017年にシステム導入をした場合では、28円/kwh(出力制御対応機器設置義務なし)、30円/kwh(出力制御対応機器設置義務あり)の価格が適用されます。
この制度は固定価格買取制度と呼ばれ、先の金額で電力会社が買い取ってくれます。
これまでの買取り金額は、普段の電力料金よりも高めの設定になっていましたが、2017年以降からは、その高めの設定は低くなっていくことが分かっています。
したがって、こと売電に関しては2017年が分水嶺になりそうです。
●メリット5―災害時のメリット非常用電源になる
特定エリアの突発的な雷、事故などで一時的に停電に見舞われた際、電力会社からの送電がなくなることがあります。その場合、太陽光発電は自動的に停止します。その一方で、自立の運転システムが動き出し、太陽光がある限り稼働することになります。
しかしながら、使用電力については制約があり、1.5kwと決まっています。
したがって、1.5kw以内の使用ということになりますので、何でも使えるわけではありません。夜間でしたら、蓄電池設備が供えられていた場合に限って、必要とする電力を得ることが出来ます。
ですが、蓄電池設備も高価なので、そう簡単に導入するわけにはいきません。太陽光発電システムの導入だけでは済まなくなりますので、負担がかなり大きくなります。
●補助金のメリット
前述した補助金制度も、2014年からは国の制度は廃止になり、都道府県の補助金も多くの自治体が廃止にしています。一部の市町村が予算額を限定して、それに達したところで打ち切りになる制度を取り入れています。
したがって、以前のように補助金のメリットは左程得られなくなっています。その背景には、太陽光発電システム価格の下落傾向が顕著に見られ、今では、30万円/kwを切る導入価格が提示され、補助金が得られなくても、導入することが出来る環境が見えていることが挙げられます。
ということで、補助金のメリットは薄れていると考えられます。
太陽光発電の問題点
■ 補助金の廃止、売電価格の低下
初期の頃の導入価格は370万円/kw、少し経ってからは200万円/kwと、4kw、5kwのシステムを導入すると1,000万円以上の投資を必要としていました。
2009年以前は電力会社自主的に24円/1kwhで買取りをしていましたが、2010年になって売電価格は48円/kwh、補助金は7万円/kwとなっていました。
そして、2011年には、それぞれ42円/kwh、4.8万円/kwと1年間で6円、2.2万円下がっています。
そして、2017年の売電価格は28円/kwhまで下がり、国の補助金制度は廃止になり、自治体の補助金についても廃止か、縮小傾向にあります。
このような傾向下でも太陽光発電システムの導入は進んだのは、発電システムの50%を占めるソーラーパネルの質的な向上と価格の低下が挙げられます。
太陽光発電システムの導入は新時代へ
太陽光発電システムは、企業間競争の激化(技術革新、変換効率のアップ、コストの低下)によって、国からの補助金制度は廃止されているに中にあっても、太陽光発電システムは順調に伸びています。
また、2017年以降は地方自治体の補助金制度も廃止、縮小されていくことがあきらかになっていることから、自前の資金手当で導入を決めなければなりません。
そして、電力会社への売電価格も、電力会社からの買電価格よりも安くなる傾向にあり、2017年はその分水嶺となる年のようです。
となると、売電をすることで太陽光発電システムに投資した金額を回収しよう考えるよりも、発電した電力を自家用に使うことで、電力会社へ支払う金額のセービングをすることと、自然環境への負荷を低減する太陽光発電の使い勝手に注目する方が、ベターな選択になるかも知れません。
そういう意味では、太陽光発電システムの導入に対する発想転換が必要になる新時代を迎えることになりそうです。
- 太陽光発電は、太陽光のエネルギーを電気に変える発電機
- 太陽光発電の導入は、二酸化炭素の排出がないクリーンエネルギーの推進
- 太陽光発電の導入は、自家用の電気量の削減―電気代の削減
- 太陽光発電の導入は、余剰電力の売電
- 太陽光発電導入における国の補助金はゼロ、自治体の補助金もゼロか縮小
- 導入費用は年々廉価の傾向
- 太陽光発電の問題点は売電価格の低下と補助金の廃止
- 太陽光発電については発想の転換が必要