2009年に太陽光発電の余剰電力買取が始まり、2017年で8年になります。
2012年より、太陽光発電に加え、それ以外の方法で発電した再生可能エネルギーも対象とされるようになりました。
再生可能エネルギーへの投資を後押ししていたグリーン投資減税・生産性向上設備投資促進税制が終了してもなお、近年では、電気を生産して売電することで収益を得る収益モデルが浸透しつつあります。
一方で、固定価格買取制度によって決められる売電単価は、毎年下落傾向にあります。
このことから、売電収益を上げたいと考える方の中には、発電量を増やすために、過積載に興味を持つ方もいるようです。
今回は、ソーラーパネルを過積載するメリット・デメリットについて考えたいと思います。
過積載についての理解を深めたうえで、過積載をするかどうか今後の計画を立てましょう。
太陽光発電の過積載とは?
最近注目されている、太陽光発電の「過積載」ですが、太陽光発電の過積載とはいったい何でしょうか。
太陽光発電機器の中にパワーコンディショナーと呼ばれるものがあります。
これは、太陽電池モジュールで発生した直流の電気を、交流へと変換する装置です。
電気は、直流から交流へと変換して、はじめて家庭用電気機器などに利用することができます。
このパワーコンディショナー(通称パワコン)は、容量の上限が定められています。
太陽光発電の過積載とは、この上限を超える容量のパネルを増設することです。
例えば、49.5kW容量のパワコンに75kWのパネルをつないだり、5.5kW容量のパワコンに8kWのパネルをつないだりするような状況を指します。
過積載によるメリット
過積載によるパネル設置には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
売電収入が増える
過積載のメリットは、発電量アップのため、売電収入が増えることです。
実際、太陽光発電の過積載を検討される方のほとんどは、売電収入を増やすことが目的です。
太陽光を集めるパネルが多ければ、それだけ生産される発電量は増加します。
過積載というワードには、どこか危険な響きがありますが、安全性を考慮したうえで、過積載となるパネルの設置を引き受けている業者はたくさんあります。
初期費用が安くなる
過積載のメリットとして、初期費用が安く済むことがあげられます。
あとから増設するのはパネルだけですから、初期費用はパワコンと数枚のパネルのみで、最初から大容量のものを設置するよりも、初期費用が安くなります。
過積載は、初期費用をできるだけ安く抑えたい方にとって、魅力的な選択肢といえるでしょう。
過積載の増設で売電収益が上がる
売電収益アップを狙った過積載ですが、ここでひとつ疑問がわきます。
パネルにいくら太陽が当たって発電できても、パワコンの容量を超えてしまえば、越えた分は捨てることになります。
パワコンの容量を増やさずして、どうして発電量を増やすことができるのでしょうか。
パネルの容量が多いほど天気の良い日は、容量を超えて捨てられてしまう電気が多くなります。
しかし、同時に、朝夕の日光が弱い時間帯も、より多くのエネルギーを集め、たくさんの電気をつくることができます。
このことから、全体的に換算すると、結果として発電量が増しているのです。
過積載のデメリットはないの?
過積載にはデメリットも存在しています。
それは、パワコンの容量を超えた大幅なパネル過多の場合、パワコンのメーカー保証が付きにくくなってしまうということです。
最近では、パワコンについているメーカー保証は20年のものが多くあります。
その期間以内にパワコンが故障することは、十分にありうることです。
そんな時に保証が付かないとなれば、収益アップどころか赤字になってしまうこともあります。
過積載に対するメーカー保証が、条件付きで付いているメーカーもあります。
例えば、入力電圧と入力電流の条件を満たしていることや、過積載率の上限などです。
過積載を検討するなら、過積載に対する保証が付いているものを選ぶと良いでしょう。
過積載の実力がわかる計算
過積載のことを考えた際、実際にどれほどの実力が発揮できるのか数字を見ることができたら嬉しいでしょう。
ここでは、売電収入や初期費用の回収期間に関する具体的な計算を見ていきます。
年間の売電収入で検証
太陽光発電で売電して収益を得る場合、過積載でどれくらいの収益アップが見込めるでしょうか。
まず1ヶ月の電気使用料金を求め、太陽光発電導入後の売電収入を計算し、それから過積載後の差額分を求める、という方法で過積載の実力を検証してみます。
太陽光発電導入前の電気使用料金
1kWhあたりの電気料金を29円として、太陽光発電導入前の電気使用料金を割り出してみましょう。
一般家庭の平均年間総消費電力量は、4,936kWhというデータがあります。
1kWhが29円ですから、年間の電気料金は
4,936kWh×29円= 143,144円/年
となり、143,144円を月々に換算すると
143,144円÷12ヶ月= 11,9218円/月
つまり、太陽光発電導入前の一般家庭の平均電気使用料金は11,9218円ということになります。
太陽光発電導入後の電気使用料金
では、この住宅に太陽光発電を導入するとどうなるでしょうか。
年間を通して日中に使用する発電電力を1,700kWhとすると
1,700kWh×29円= 49,300円/年
月々に換算すると
49,300円÷12ヶ月= 4,108円/月
つまり、太陽光発電を導入すると、月々4,108円お得になることが分かります。
売電収入を求める
一般家庭の太陽電池容量は、4kWシステムです。
1kWシステム当たりの年間発電量は、1,000kWhなので、年間総発電量は
4kW×1,000kWh=4,000kW/年
となります。
10kW未満の太陽光発電の場合、年間総発電量から日中の使用電気量が差し引かれ、余った電力を売電できる「余剰買取制度」が適用されます。
この場合、4kWシステムですから
4,000kW/年(年間総発電量)-1,700kWh/年(日中の使用電気量)= 2,300kW/年
となり、2,300kWの余剰発電量を売電することができるのです。
売電価格を単価28円とすると、見込める収益は
2,300kW/年×28円(売電価格)= 64,400円/年
64,400円/年÷12ヶ月= 5,370円/月
と、なります。
太陽光発電を導入し、日中の電力を補うだけで月々4,108円、年間49,300円お得になり、更に売電することで月々5,367円、年間64,400円の収益を得ることができます。
つまり
49,300円/年(太陽光発電で補える料金)+64,400円/年(売電収入)= 113,700円/年
113,700円/年÷12ヶ月= 9,475円/月
これだけの金額がお得になるのです。
太陽光発電導入前の使用料金が年間で143,411円でしたので、そこから上記の113,700円を差し引くと、年間で支払う電気料金が実質、なんと29,444円。
月々に換算するとわずか2,454円となります。
過積載によってさらに収益アップ
ある過積載率と発電量増加率を調べたデータによれば
- 110%の過積載 ⇒ 発電量は110%に増加
- 120%の過積載 ⇒ 発電量は120%に増加
- 130%の過積載 ⇒ 発電量は130%に増加
しています。
引用:https://mega-hatsu.com/column/840/
ここでは、パネルを130%増設したと仮定して計算してみます。
年間総発電量を4,000kWhとした場合、発電量は130%に増加し5,200kWhとなります。
仮に増加分を売電した場合、年間33,600円もの収益アップが見込めます。
ただし、過積載率と発電量増加率の関係性は環境によって大きく左右されるため、あくまでも目安として考えてください。
初期費用の回収期間
各家族に適しているといわれる4kWシステムの太陽光発電の場合、初期費用の目安は130万円。
先ほど計算した売電による収益で元をとるには、いったいどれくらいの期間が必要なのでしょうか?
まず年間の収益は
49,300円/年(電気料金の削減分)+64,400円/年(売電収益)= 113,700円/年
初期費用の130万円で、年間の収益を割ると
130万(初期費用)÷113,700円/年= 11.4
この計算によれば、太陽光発電をはじめてから、11年と少しで初期費用を回収できることが分かります。
また、上記で仮定したパネルを130%増設した過積載の場合
130万円÷147,300円/年= 8.8
となり、9年とかからないうちに、初期費用を回収できる計算になります。
実際には、売電価格に税金がプラスされ、それも収益となるので、売電による収入額はもう少し上がります。
それに伴って、初期費用の回収期間短くすることが可能です。
利回りについて
太陽光発電をご検討されている方の多くは、太陽光発電の売電による利回りを気にされています。
利回りのイメージをつかむために、ここでは家庭用の太陽光発電パネルではなく、もう少し大きな面積を使った発電パネルを例にあげてみましょう。
50kWのパワコンに対して80kWの過積載設備を導入し、1kWあたりの年間発電量が1,100kWhであるとします。
ピークカット分は全体の3%、売電単価を21円/kWとします。
初期費用は1600万円です。
この場合、年間の発電量は88,000kWで、3%のピークカット分を差し引くと、85,360kWとなります。
これを売電すると1,792,560円となり、消費税込みで1,935,965円となります。
初期費用1600万円は8.2年で回収できる計算になります。
初期費用が回収できた後は、初期費用に充てられていた分が利回りになります。
つまり、13%程が利回りということになります。
太陽光発電は初期費用がかかりますが、大変利回りの良い投資といえそうです。
初期費用を抑えて過積載するのがベスト
太陽光発電で収益を上げるためのポイントは、初期費用をできるだけ抑えたうえで、パネルを過積載することだといえそうです。
朝夕、曇りの日など太陽光が少ないときも、パネルが多ければ、それだけ多くの太陽エネルギーを集めることができます。
また、太陽光発電(ソーラーパネル)は減価償却資産の一面も持ち合わせており、減価償却資産税がかかるものの、車などに取り付けてある太陽光発電(ソーラーパネル)は、輸送用機械器具製造業用設備が耐用年数9年に対し、家や土地に設置してある太陽光発電(ソーラーパネル)耐用年数17年の減価償却費として経費を計上できます。
設置量10kW以上で全量売電を目的とする場合には、税金の負担を軽減できるメリットがありますから、把握しておくと良いでしょう。
平成29年4月からの売電価格は、28円+税(東京・中部・関西管内)となりましたが、売電価格は年々下がっています。
過積載を検討するなら早めが良いでしょう。
今後売電で収益を上げていくことができるのか不安になりますが、初期費用をできるだけ抑え、効率よく発電できるようにすれば、早めに元がとれ、収益へとつながっていきます。
今後、効率よく収益を得られる過積載は規制される可能性もありますから、効率的な運用を考えているのであれば、早い段階での太陽光発電導入をおすすめします。
メリット・デメリットを踏まえたうえで、過積載を前向きに検討してみてください。
- 太陽光発電の過積載とは、パワコン容量を超える容量のパネルを設置すること。
- 過積載のメリットは売電収入が増えること。
- 過積載のデメリットはパワコンのメーカー保証が付きにくくなること。
- 太陽光発電は利回りが良い投資だといえる。
- 効率よく収益を上げるためには、初期費用を抑えたうえで過積載するのがいい。