電力自由化は、家庭で太陽光発電システムを取り入れ、あまった電力を売ることを可能にしました。しかし、太陽光発電システムで得た収入は、確定申告する必要があることをご存知でしょうか。
また、太陽光発電システムの導入にかかった費用は経費として申告することができます。そこで必要になってくるのが太陽光発電の減価償却についての知識です。
ここでは、国税庁が示す太陽光発電システムの減価償却についてお話します。太陽光発電システムの導入を検討されているなら、事前にその知識を身につけておきましょう。
太陽光発電の減価償却とは?
太陽光発電は寿命が非常に長いことで知られていますが、まったく劣化しないわけではありません。時間の経過で価値が変動する資産とみなされ、減価償却の対象となります。
太陽光発電の導入を考えている事業者は、減価償却の内容についても把握しておきましょう。
国税庁HPで示されている定義
太陽光発電設備の減価償却について国税庁HPで説明されているので、抜粋して解説します。
減価償却とは、高額なものや設備に対して適用される償却方法です。一度に経費として申告せずに、定められた期間を経て一定金額ずつ償却していきます。
減価償却費を計算するにあたり、太陽光発電設備がいったい何に分類されるのか考えます。
では具体的に、太陽光発電システムが何に分類するのか見てみましょう。
太陽光発電設備は、太陽電池モジュールやパワコンなどが一体になって発電や送電を行う「自家発電設備」です。したがって、一般には「機械及び装置」に分類されます。
また、減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第2の55番「前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の区分によらないもの」の「その他の設備」に該当し、さらに「主として金属製のもの」に該当します。耐用年数表によれば、その場合の法定耐用年数は17年です。
つまり、太陽光発電設備の耐用年数は17年として減価償却します。実際のところ、太陽光発電システムの耐用年数はもっと長いですが、納税者に不公平な負担が生じないようにするため、あえて短めの耐用年数を設定しています。
ちなみに、連係工事費負担金(発電した電力を電力会社の電力系統と接続するため、発電者が支払う工事費用)は繰り延べ資産となり、「耐用年数省令別表三」の「電気ガス供給施設利用権」で定められた耐用年数に準じて、15年間で償却となります。
ところで、減価償却を適用することには、どんなメリットがあるのでしょうか。それは、減価償却額を毎年計上できることです。毎年ある程度の金額を経費として落とすことにより、節税につながります。
場合によっては、今年全額を償却した方が節税になるというケースもあります。どのようなときに、全額即時償却が節税になるか、詳しくは税理士さんに相談してみると良いでしょう。
いずれにしても、こうした制度を上手に活用して、できるだけ効率よく太陽光発電を利用したいものです。
確定申告の際に必要
この減価償却の知識は、確定申告の際に必要となりますが、具体的にはどのように申告すれば良いのでしょうか。もう少し噛み砕いて説明します。
ある年に1700万円をかけて太陽光発電設備を導入したとします。しかし、この年の確定申告でこの額を経費として差し引けるわけではありません。先ほど触れたように、太陽光発電システムの法定耐用年数は17年とされていますから、確定申告上では17年かけて費用化していきます。
1700万円を17年で割ると1年あたり100万円ですから、1年100万円ずつ経費として申告していきます。これは「定額法」といわれる減価償却の方法ですが、それとは別に「定率法」と呼ばれる減価償却方法もあります。
定率法とは、最初は償却できる額が大きく、年数の経過とともに償却できる額が大きく減っていくというものです。
詳細は後述しますが、定額法と定率法のどちらで計算するかは選択できる場合もあります。
基本的には税法で一般的とされているものが適用されます。
どんな人が減価償却を必要とする?
減価償却をする必要があるのは、太陽光発電システムを導入しているすべての人というわけではありません。
屋根と一体型になっている場合には家屋としての固定資産税がかかってきますが、住宅用太陽光発電はたいていの場合、固定資産税はかかりません。税金がかからないのであれば、減価償却の必要もありません。
ここでひとつ確認しておきたい要素があります。それは、売電による収入に関する申告です。売電をして収益を上げているなら申告の必要があり、減価償却の必要が出てくるのではないでしょうか。先に結論を言うと、その必要はありません。
家庭用の4kWシステム程度の太陽光発電設備の場合、売電で得た収入は「雑所得」として申告します。雑所得は年間20万円以下であれば課税対象にはなりません。家庭用の4kWシステム程度の場合、売電額が20万円を超すことはほとんどないため、課税対象にはならないのです。
ほかにもいくつか関連する要素はありますが、課税対象にならないのであれば減価償却の必要はないといえます。
何年で減価償却するか?
では、減価償却が必要になったとき、どのように償却率と金額を計算すればよいのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
減価償却の割り出し方
高額な資産に対して適用される減価償却ですが、ここで減価償却の割り出し方について考えてみましょう。何年で減価償却するのか、その割り出し方など、その制度の仕組みが分かれば確定申告もスムーズに手続きできます。
まず減価償却の対象についてです。太陽光発電システムを導入する場合、その初期費用はすべて減価償却の対象として考えることができます。ただし、太陽光発電システムに必要になった土地や、屋根のリフォーム費用などは含まれません。
次いで減価償却をする期間ですが、これは前述したとおり、減価償却資産の耐用年数等に関する省令にて定められています。太陽光発電設備の場合は17年です。
計算方法は2種類
減価償却の計算方法は2種類あります。ひとつは「定額法」、もうひとつは「定率法」です。
定額法の場合、対象となる費用を耐用年数で割り、一定の額を毎年経費として申告することができます。たとえば、太陽光発電の導入に200万円かかったとします。法定耐用年数は17年なので、200万円÷17年=117647.05…となり、毎年11万7647円が償却となります。
それに対して定率法は、上記と同様の太陽光発電システムであれば、1年目は200万円×0.333(償却率)となり、66万6,000円が償却となります。2年目は44万4,220円となり、償却額は年々下がっていきます。
一般的には、個人事業主は定額法、法人は定率法で計算します。ただし、場合によっては自分で選ぶこともできます。どちらが節税になるかはケースバイケースです。どちらにもメリットはあるので、現状と照らし合わせてお得な方に決めましょう。
できるだけ早いうちに、できるだけ多めの額を経費として落としたいなら定率法が良いでしょう。納税額を減らすことができれば、手元に残ったお金で別の投資を行うこともできます。そういった必要がないなら定額法でも良いでしょう。
定額法のメリットは、17年間一定の金額を経費として計上できることです。
グリーン減税で優遇?
太陽光発電を導入したとき、減価償却とは別に「グリーン減税」という税制優遇措置を受けることが可能でした(平成27年3月31日終了)。すでに期限は終わっていますが、今後同じような制度が出てくるかもしれません。
念のためここでは、グリーン減税がどんな内容だったのか、どんな人を対象としていたのかをご紹介します。
グリーン減税の内容
太陽光発電を導入すると、グリーン投資減税が適用されて税額控除を受けることができました。グリーン投資減税の適用によって、こちらの2つから選択することができました。
①取得価額の30%を特別償却できる
②7%税額控除(中小企業者等のみ)
グリーン投資減税は税制優遇が受けられたため、その性質上よく節税に利用されていました。
法人税額が500万円の場合、それ以上の額、たとえば500万円の太陽光発電設備を導入したらその分が差し引かれ、法人税は0円になるということです。
グリーン減税は平成27年3月に期限を迎えていますが、ほかにもすでに終了している制度がありますので少しだけ触れておきます。
それは、「生産性向上設備投資促進税制」です。これは取得価額の5%税額控除または即時全額償却ができるというものでした。この制度もまた、平成29年3月で終了しています。
グリーン減税の対象条件
グリーン減税が適用されていたのは、青色申告書を提出する個人もしくは法人です。定められた適用期間内に対象設備(太陽光発電設備)を取得し、取得から1年以内に国内で、当人あるいは当法人の事業に利用された場合に適用される制度です。
グリーン減税や生産性向上設備投資促進税制は、太陽光発電をはじめるために必要な初期費用を抑える目的でつくられましたが、現状ソーラーパネルやその周辺機器の値段は非常に安くなっています。
これらの制度が終了したからといって、今から太陽光発電をはじめるのは決して損ということではないのです。
電力自由化と太陽光発電の制度は、まだまだ発展途上の段階です。今後新しい法律や制度ができる可能性も踏まえて覚えておきましょう。
太陽光発電を導入するなら税金の理解は必須
ここまで確定申告の際に役立つ、太陽光発電の減価償却について考えてきました。
太陽光発電の法定耐用年数のことや、それに伴う経費の落とし方などについても理解が深まったのではないでしょうか。
こうした計算は税理士さんにお任せしてしまえば楽ですが、太陽光発電に関する税金のことは可能な限りきちんと把握しておきたいものです。
能動的な計画が、今後、太陽光発電のさらなる発展につながっていくことでしょう。
・太陽光発電の耐用年数は17年
・減価償却は、事業として太陽光発電を行っている人に関わる
・グリーン減税・生産性向上設備投資促進税制は終了しているが、初期投資のコストが減っ ているため一概に損になるとはいえない