太陽光発電を導入する際に気になるのが税金です。
固定資産税や所得税、太陽光発電には様々な税金が課せられていますが、条件によっては支払わずに済む場合もあります。
今回は、個人や企業で太陽光発電を導入した場合の税金について詳しく解説します。
消費税が太陽光発電に影響する?
太陽光発電にはさまざまな税金が関係してきますが、そのうちのひとつに消費税があります。太陽光発電に消費税がかかるのはどのような場合なのでしょうか。
対象は設置量10kW以上
太陽光発電に関わる消費税は、設置料が「10kW搭載しているかどうか」で取り扱いが異なります。
10kW未満の売電価格は、消費税込みの値段である内税方式で買い取り価格が決まっています。対して、10kW以上の場合は買取価格にプラスして消費税が加算される、外税方式で価格が決められているのです。
固定価格買取制度における、2017年度の買取価格は10kW未満の場合、kWあたり28円(出力制御対応機器設置義務なし)、そして10kW以上が21円プラス消費税です。つまり、10kW以上の場合、21円に消費税率の8パーセントがプラスされ売電価格は22.68円となります。
家庭などによく導入される10kW未満の太陽光発電の場合、消費税率の上昇で買電価格が変動するようなことはありません。しかし、10kW以上の太陽光発電の場合、消費税が増税すれば、それに伴って売電価格も上昇することになります。
これは再生可能エネルギーを普及させるため、消費税増税が企業にとって太陽光発電導入の妨げにならないようにしたものです。
企業や事業主は、基本的に消費税納税の義務がありますが例外もあります。太陽光発電や、その他の事業による収入が1000万円を超えない場合には消費税納税は免除されます。消費税が増額した場合、収益が1000万円以下の企業や事業主であれば、増額した消費税分がそのまま収益に加わることになるのです。
個人の場合はどうなの?
個人が太陽光発電を導入する場合、10kW未満の太陽光発電がほとんどです。その場合には当然消費税の納税義務もありませんし、消費税率の増税によって売電価格が変動するようなこともありません。
しかし、もし個人が10kW以上の太陽光発電を導入する場合、消費税納税の義務が発生する場合もあります。
個人が10kW以上の太陽光発電を導入した場合、「余剰買電」か「全量買取」のどちらかを選択することになります。余剰買電とは、発電した電気を自宅で使い、余った分を電力会社に買い取ってもらうことです。全量買取とは、発電したすべての電気を電力会社に買い取ってもらうことです。
前者の余剰買電は、主に個人の住宅向けの太陽光発電を想定した制度ですから、消費税納税の義務は発生しません。しかし、後者の全量買い取り制度は、主に企業や事業者を対象とした制度ですから消費税納税の義務が発生します。
つまり、個人が10kW以上の太陽光発電を導入し、全量買い取り制度を選択した場合、個人ではなく企業や事業主と同等の扱いを受けてしまうのです。しかし、前述したように年間の収益が1000万円以下であれば消費税の納税が免除されます。
個人が10kW以上の太陽光発電を導入した場合でも、1000万円を超えるようなことは少ないですから、ほとんどの場合、消費税分がそのまま収益になります。
家庭用でも確定申告は必要?
太陽光パネルは家庭用に導入して余剰売電を選択したとしても、少なからず電気を売って収益を上げることになります。収益を上げているということは、一般的に考えてそれに伴う所得税の申告をするために確定申告が必要です。
しかし、一般家庭での太陽光発電では、ほとんどの場合が確定申告をする必要がありません。太陽光発電による売電収入が20万円を超えなければ確定申告の必要はないのです。
これは、太陽光発電が10kW未満でも10kW以上の場合でも同様です。
雑所得と必要経費の考え方
雑所得とは、「所得税法で定められた各種の所得のいずれにも該当しない所得」のことで、太陽光発電の売電収入もこれに該当します。
ところで、この売電収入とは売った電力がそのまま雑所得になるのでしょうか。
例えば1年間で太陽光発電の電力を売って得た金額が10万円だったとします。この場合、単純に売電収入は10万円でしょうか…いえ、違います。太陽光発電の売電収入とは、シンプルに電気を売って得た金額ではないのです。
それでは、売電収入をどう計算すべきか詳しく見ていきましょう。
減価償却17年という利点
太陽光発電による売電収入は、
「電気が売れて得た金額」-「太陽光投資にかかった必要経費(メンテナンス費用なども含む)」
で計算することができます。これでは、絶対マイナスになってしまうと思われた方もいるのではないでしょうか。
もちろん太陽光発投資にかかったコストをいっぺんに計算式に組み込んでしまうと、かなりのマイナスがでてしまいますが、太陽光発電の場合にはコストを分割して上の式に当てはめる必要があります。
コストの分割には「減価償却」という方法を使います。減価償却とは「使用や経年劣化で価値が減少していく資産を取得する際にかかった費用を国が定めた法定耐用年数で割り、分割して費用として計上する」方法です。
国税庁が定めている太陽光発電の法定耐用年数は17年です。つまり、太陽光発電にかかった費用を17等分したものを売電金額から差し引くことで、初めて雑所得を算出することができます。
具体的な計算例
具体的に雑所得の出し方をシミュレーションしてみましょう。ここではわかりやすく、300万円で太陽光発電設備を導入、10年のローンで購入して返済期間中、金利は2パーセントと仮定します。
毎月の売電収益が3万円、年間の売電収益は36万円、メンテナンス費用に5000円かかったものとして計算を行います。
360,000(売電収益)-170,000(減価償却費)-60,000(年利)-5,000(メンテナンス費用)
=12.5万円
※小数点以下切り捨て
この場合、雑所得は20万円を超えていないため確定申告の必要はありません。
余計な税金を発生させないために
雑所得の概念もそうですが、太陽光発電に関わる税金について詳しく知っておかないと、想定していなかった税金を支払うことになりかねません。続いては、太陽光発電にかかる税金について詳しく解説します。
太陽光発電に関わる税金4種類
太陽光発電には、「固定資産税」「消費税」「住民税」「所得税」という4種類の税金が課せられています。固定資産税の対象となるのは、太陽光発電が10kW以上で、その資産の評定額が150万円以上の場合です。
税率は、評定額の1.4パーセントで、毎年評定額は下がっていきます。基本的に太陽光発電の法定耐用年数である17年間が対象期間ですが、評定額が150万円を下回った年から固定資産税の対象外となり支払う必要がなくなります。
消費税が課税対象となるのは税抜きの売電収入が1000万円を超えた場合です。支払金額は、売上額中の消費税分になります。
住民税に関しては、基本的に必ず支払わなければなりません。会社員の家庭でも、給与以外に収入がある場合は、申告が必要になっています。税率は一律10%です。
所得税が発生するのは、年間の雑所得、その他の所得の合計が20万円以上になった場合です。確定申告を行ったのち、それらが全体の所得に合計され、その5~40パーセントが課税されます。
所得税に関しては、購入にかかった費用を法定耐用年数で割った金額が毎年控除されます。
設置量6kWの例でシミュレーション
では、具体的に設置量6kWを想定してシミュレーションを行ってみましょう。ここでは、170万円で太陽光発電設備を購入、年間の雑所得は15万円とします。この場合で考えると、
・固定資産税 なし
・消費税 なし
・住民税 なし
・所得税 なし
となります。いずれの税金も支払いの義務がありません。太陽光発電が10kW以下なので、固定資産税は課税されませんし、年間の売電収益が1000万円以下なので消費税もありません。
雑所得が20万円以下ですから、確定申告の必要もなくなります。(厳密にいうと住民税に関しては金額に関わらず申告が必要ですが、確定申告をもとに課税がなされるのが通例です)確定申告を行わないこのパターンでは、住民税を支払う必要がありません。
しかし、同様の6kWの太陽光発電の場合でも税金が発生してしまう場合もあります。日当たりが良いなど太陽光発電のための好条件がそろっている場合、発電量が増え、年間の雑所得が20万円を超えることもあるのです。
例えば、上記と同条件で、雑所得のみ23万円に増えた場合、
・固定資産税 なし
・消費税 なし
・住民税 約23,000円
・所得税 約11,500円(第一区分税率:5%)
となります。もちろん実際には給与所得など、そのほかの金額も考慮して計算する必要がありますが、個人が導入する太陽光発電にも税金がかかってしまう場合があるということを覚えておきましょう。
無駄な税金を支払うことのないよう容量の選択や税金対策は慎重に行うことをおすすめします。
太陽光発電を導入するなら最低限の税金の知識を
いかがだったでしょうか。太陽光発電システム設置を希望しているが、税金のことが気になってなかなか導入へ踏み出せずにいたという方も少なからずいらっしゃったのではないでしょうか。
ここでお伝えしている通り、個人でソーラーパネルを導入する分には、ほとんど場合において税金はかかりません。ただし、10kW以上の太陽光発電を導入する場合は、どれくらいの税金が発生するか確認しておいて損はないでしょう。
まずは、税金に関する知識を最低限身に付け、思わぬ形で損をしないように心掛けることが大切なのです。
- 個人で太陽光発電を導入するのであれば、ほとんどのケースで税金はかからない
- 売電収入は単純に電力を売って得た金額ではなく「電気が売れて得た金額」-「太陽光投資にかかった必要経費(メンテナンス費用なども含む)」の計算式で求めることができる
- 減価償却費は、太陽光発電にかかった費用を法定耐用年数の17等分して求めることができる
- 太陽光発電に関わる税金は「固定資産税」「消費税」「住民税」「所得税」の4つ
- 税金に関する知識をつけておくことが重要