発電事業者が太陽光発電の導入を検討する際、やはり気になるのが太陽光発電の買取価格ではないでしょうか。ソーラーパネルの発電量は、太陽光電池の種類やメーカー、発電効率によって変わり、これが売電収入に影響を与えます。
売電収入は、年間発電量によって算出されるので、その点もしっかりシュミレーションしてソーラーパネルを選ぶことが大切です。今回は、太陽光発電の売買価格や売電価格についてご紹介します。
太陽光発電の買取価格
2009年から固定価格買取制度が施行され、10kW未満の住宅用太陽光発電が10年間、10kW以上の産業用太陽光発電が20年間、電力会社に太陽光発電の買取義務が課せられています。
この制度から、太陽光発電は安定収入事業として注目されていますが、買取価格が年々下がっていることに不安を覚える方もいることでしょう。そこで、今回の記事では最近の買取価格の推移に加え、ソーラーパネルをどうやって選べばよいのかもみていきましょう。
平成28年の買取価格
固定価格買取制度が導入されたのは2009年です。以降、売電の買取価格は年々変動を見せています。平成28年度の買取価格は、10kW未満の出力抑制なしで「31円」、出力抑制ありで「33円」となりました。一方で、10kW以上は「24円+消費税」です。
平成27年には、10kW未満(出力抑制なし)が「33円」、10kW未満(出力抑制あり)が「35円」とどちらも2円の引き下げです。そして、10kW以上は29円+消費税だったので5円の引き下げとなっています。
また、ダブル発電にすることでさらに単価は下がります。平成28年度で10kW未満(出力抑制なし)が「25円」、出力抑制ありで「27円」となっています。ダブル発電とはエネファームと呼ばれる設備を導入し、太陽光発電システムとともにガスのエネルギーも併用して発電するシステムのことです。
固定価格買取制度が導入された2009年当時は、10kW未満が42円、10kW以上が40円+消費税だったことを考えると、平成28年までの間に11~16円も降下している計算になります。
平成29年はどう変動する?
平成29年3月に発表された買取価格をみてみると、前年から3円ずつ引き下げられていて10kW未満(出力抑制なし)が「28円」、10kW未満(出力抑制あり)が「30円」、10kW以上が「21円」と確定しました。
制度の特性の問題で平成29年以降も引き下げが見込まれています。また、ダブル発電の場合は出力制御あり・なしともに平成28年と変わりありません。
平成30年は、今年から2円ダウンの10kW未満(出力抑制なし)が「26円」、10kW未満(出力抑制あり)が「28円」と予定されています。ダブル発電は平成29年度と変更はない模様です。
2019年に固定価格買取制度が廃止されるとの噂もあり、そうなった場合電気会社が電気を購入する義務がなくなります。
電力買取の保障もなくなってしまっては、太陽光発電に大きなメリットがなくなってしまうようにみえます。しかし、電気自由化により発電事業者も増えているため、買取自体がなくなることはありません。
それだけでなく、新電力を求める人や企業も増える可能性があります。太陽光発電の買取価格は下がる可能性はあるものの、安定した収入を得られるメリットは十分にあります。
また、電力小売り自由化により、今後は電気料の高騰化も予想されるため、「自家消費用」の電力としても有効です。
ソーラーパネルについて
売電収入を左右するのがソーラーパネル(発電パネル)の発電量です。当然ながらソーラーパネルの性能や特徴は各メーカーによって異なります。では、太陽光発電を導入する場合、どのメーカーのソーラーパネルが良いのでしょうか。
メーカーで発電量が違う
日本での太陽光発電量による発電量の平均は、1140kWhとされています。あくまでも全国平均ですから、メーカーのソーラーパネルの年間発電量はそれぞれ異なります。例えば、ソーラーフロンティアのCISパネル「SF150-K」は1kWあたりの年間発電量は1313kWhで、平均値の約1.06倍となる発電量です。
中国のサンテックパワーの多結晶シリコンパネル「STP280-24/Vd」の年間発電量は1253kWh、平均値との差は約1.01倍とソーラーフロンティアとの差はほとんどありません。シャープや京セラなどの多結晶シリコンパネルも約1.01倍と、発電量が多い結果となっています。
各メーカーは、それぞれ独自で開発や研究を重ねながら、太陽光電池を製造しています。太陽光電池にも結晶系シリコンや化合物系など様々あり、それぞれ発電効率も異なります。メーカーでも、使用する種類が違うので同じソーラーパネルでも発電量に違いが生じるのです。
パネルの価格をメーカーで比較
発電量も大切ですが、パネルの価格にも注目したいところです。ソーラーパネルは1kW単価で価格表示されます。では、メーカー比較でパネルの価格をご紹介します。
・ソーラーフロンティア/SF175-S(出力175W/効率14.2%):266,760円
・東芝/SPR-253NX-WHT-J(出力253W/20%):331,560円/1kW
・パナソニック/HIT247α(出力247W/19%):286,200/1kW
・京セラ/KJ200P-3CRCE(出力200W/15%):371,520円/1kW
・ハンファQセルズ/Q.PEAK-G4.1 300(出力300W・18%):287,280円/1kW
・サンテック/STP250S-20/Wdb:(出力250W/15%):334,800円/1kW
これは一例ですが、無駄をなくして太陽光発電を導入するには価格のチェックも大切です。パネルメーカー詳細情報をしっかり確認し、価格や性能を把握して導入するようにしましょう。
発電量と売電収入の関係性
売電収入を左右するのは発電量です。どれくらいの発電量かわかれば売電収入の予想ができます。では、その算出方法を詳しく見ていきましょう。
売電収入の計算式
売電収入は「売電量×売電価格」から算出が可能です。
10kW未満(出力抑制なし)が28円なので、売買収入を求めるには、年間の売電量に28円で算出されるわけです。
また、計算式で売電収入を求める際は、事前に年間予測発電量を調べる必要がありますし、余剰買取制度の場合には日中電気使用量の1年間分を求める必要があります。
kWとkWhとは?
太陽光発電では、「kW」と「kWh」の単位をよくみかけますが、違いを分からない方も多いでしょう。kWは「キロワット」と読み、kWhは「キロワット・アワー」と読みます。
電力の単位は、W(ワット)ですが、kWも電力の単位です。kは1000倍の意味で1kWをWで表すと1000Wになります。一方、kWhは設備からどれだけの電力が出たかをあらわす単位です。kWhの「h」は時間のことであり、1kWhは1000Wの設備を1時間運転した場合の消費・発電電力となります。
発電量の計算式
太陽発電の発電量は「H×K×P×365÷1」の計算式で求めることができます。
・H=設置面への1日あたりの年平均日射量(kWh/m²/日)
・K=損失係数・約73%
・P=システム容量(kW)
・365=年間日数
・1=標準状態の日射強度(kW/m²)
日射量は、平均値が実際と異なり、損失係数もパネルの種類や汚れ、設置環境によっても異なります。あくまでも予測の目安となる数値であることを認識しましょう。
太陽光発電のロス
夏場の日差しが強い時期ほど発電量は多いイメージですが、太陽光発電はパネルの温度の上昇によって発電能力が低下してしまう一面もあるのです。パネルの最大出力がどれだけ高くても、この「ロス」によって発電量が低くなる可能性は高いといえます。それをロスと呼びます。パネルの最大出力がどんなに高くても、ロスによりそれ以下になっている可能性は高いです。
メーカーによっては、夏場のロスが20%、年間平均が15%もロスしていますが、中には暑さに強いパネルを製造するメーカーもあります。こういったパネルでは、夏場のロスが7%程、年間平均でも4%程のロスに押さえることが可能です。せっかくの発電を無駄にしないためにも、ロスが少ないパネルの方が発電量も多く売電収入の増加にもつながることでしょう。
売電金額の一例
上記では、売電収入や発電量の求め方をご紹介しましたが、計算式だけでは具体的なイメージがわかないのも当然です。そこで、全国的にも標準な設置量5.0kWで売電金額の一例を紹介します。
一般的なモデルケース(設置量5.0kW)
・電気契約:40A
・日中平均電気使用量:80.5kWh
・地点:東京
・屋根方位:南
・屋根角度:30度
このケースから、年間予測発電量と年間電気使用量を計算していきます。
・年間予測発電量
3.88(kWh/m²/日)×355日×5kW×1kW/㎡
×(1-0.15)×(1-0.05)×(1-0.05)=5,432kWh
※この式の場合、「(1-0.15)×(1-0.05)×(1-0.05)」がK=損失係数に該当し、左から「配線」「パワコン」「温度上昇」のロス平均を表わしています。
・年間日中電気使用量
80.5kWh×12ヶ月=966kWh
計算式で求めたところ、年間予測発電量は「5,432kWh」、年間日中電気使用量が「966kWh」となりました。
一年間の予測売電収入
年間予想発電量と年間日中電気使用量が上記で割り出せたので、続いては年間予測売電収入を求めていきます。売電収入は「売電量×売電単価」で求めることが可能です。
・10kW未満出力抑制なしの場合(平成29年)
(5,432kWh-966kWh)×28円=125,048円
・10kW未満出力抑制ありの場合(平成29年)
(5,432kWh-966kWh)×30円=133,980円
太陽光発電の買取価格は、固定価格買取制度の性質により年々引き下げられているのが現状です。しかし、電気自由化に伴い、電力事業に新規参入する企業も増加傾向を見せ、新電力に発電事業者は必要な存在だといえます。
固定価格買取制度の終了後も買取は引き続き行われると考えられるため、安定収入として有効活用も可能です。売電収入アップには、発電量が関係するので、ロスやパネル費用にも配慮して適したシステムを導入することが重要となるでしょう。
自家用電力としても太陽光発電は期待
今回の記事では、太陽光発電について買取価格から各社のソーラーパネルを比較してみました。
再生可能エネルギーである太陽光発電の電力買取は、2009年から始まりましたが、どんどん価格は下がってきてはいます。しかし、今後は電気代の高騰も見込まれるため、自家用電力としても太陽光発電は期待できます。
太陽光発電の導入を検討されている方は、今回ご紹介した計算式をもとに、自分に合った活用方法を考えてみてください。
- 平成29年の買取価格は10kW未満が28円もしくは30円、10kW以上が21円
- 売電収入は発電量に応じて変動することに注意
- パネルの温度上昇・配線不良は発電能力の低下の原因
- ロスを抑えつつ発電量の多いソーラーパネルを選ぶべき
- 売電収入は「売電量×売電単価」で計算可能